ゲイ術手帖番外編其の六

「ゲイ術的お笑い鑑賞(かなり偏見)」

 『ナンバ壱番館』というテレビ番組をご存知でしょうか。毎週木曜日の深夜、吉本興業のお笑い芸人・タレントをフィーチャーし、ドラマ仕立てでその半生を紹介するという関西のローカル番組です。大ベテランから若手まで、幅広くゲストに出てくれるので(テントさんも出てました)、お笑い好きならば要チェキの番組です。ところで、それとこの「ゲイ術手帖」とどう関係があるのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかも知れません。しかし、大アリなのですねえ、これが。

 

 1月18日(木)つまり昨日の放送では、わたしが現在最も愛する男・漫才コンビハリガネロックのユウキロックこと松口祐樹、相方の大上邦博、そしてロックの元相方で現在はピン(一人)で活躍するケンドーコバヤシの御三方がゲスト出演していました。サブタイトルが「お笑いラブストーリー」。要は芸人コンビの結成と解散にまつわるドラマなのですが、これが実に、"ラブストーリー"とは云い得て妙。その辺のちゃらい恋愛ドラマなんかより100倍面白いのです。BGMも小田和正の『ラブストーリーは突然に』だ(笑)。

 

 よく知らない方のためにあらましを説明しますと、NSC(吉本総合芸能学院)11期生である4人の芸人、すなわちユウキロック(以下ロック)と大上氏、ケンドーコバヤシ(以下ケンコバ)、そして今回は出演していませんでしたがルート33(コンビ名)の堂土貴、元々はロックとケンコバが「松口VS小林」、大上と堂土が「あっぱれ団」というコンビを組んでいました。

 

 どうやらロックはNSC入学当時から芸達者で目立っていて、彼とコンビを組みたがっている生徒は多くいたようです。それをあっさりと口説いたのがケンコバでした。ケンコバは、ネタの発表会で漫談をするロックを見て一目惚れ(!)し、何とかコンビを組もうと、共通の趣味であるプロレス観戦に彼を誘います。それがきっかけで「松口VS小林」という、今思えばかなり濃い二人のコンビが結成されます。自分たちが一番面白いと自負していた二人でしたが、コンクールでは予選落ち。ケンコバ一人がテレビ出演する機会が増え、頭打ちしたロックは解散を決意、かくして3年の蜜月にピリオドが打たれ、傷心したケンコバもまた芸能界を去ります。

 

 一方の大上と堂土は、高校の同級生。内気だった大上にお笑いの楽しさを教えたのが堂土でした。二人は一緒にNSCに入学し、そのまま「あっぱれ団」というコンビを組みます。ある日、大上は、違うクラスのネタの発表会で漫談をするロックを見かけます。「めっちゃおもろいやんけ!」と大上もまたロックに一目惚れ(笑)。次第に堂土との仲は冷えていきました。

 

 ちょうどその頃ケンコバとの仲に悩んでいたロックの心を救ったのが大上でした。すでに二人は仲のよい友達になっていました。ロックは「こいつの前なら自分らしさを出せる」ということに気づき、コンビ結成を申し出ます。ロックに憧れていた大上はもちろん承諾。それが現在のハリガネロックです。二人は猛特訓を重ね(1本のネタに練習100回!)、ついに1997年、ABCお笑い新人コンクールのグランプリを受賞します。

 

 ロックと別れ、しばらく芸能界を去っていたケンコバは、村越というビッグシュールな相方を得て「モストデンジャラスコンビ」というリットン調査団にも通じる異能コンビを組みますが、実は舞台恐怖症だった村越から解散を申し出られ、このコンビも3年目で終止符を打ちます。そして現在はピンで活躍、レギュラー番組は何と7本(これは知らなかった)、昨年のオールザッツで見事優勝したのは記憶に新しいところです。

 

 ・・・・・・これって、何か、かなり、やおいの世界じゃないですか?(しかもノンフィクションだ)
 「松口と一緒やなかったら、お笑いやっていかれへん」(byケンコバ)なんて、グッと来ましたねえ(やおい的に)。

 

 以前、まだダウンタウンが若手と云われていた頃、『ダウン系』という、ダウンタウンネタのやおい本がシリーズで出ていました(古本屋に行けば100円くらいで手に入るでしょう)。ダウンタウンでやおいねえ・・・?と思っていたわたしでしたが、今ならワカル。ワカルとも。『ナンバ壱番館』のナレーションでも云っていたように、「芸人の相方選び=恋人選び」なのですよね。ある意味恋人よりもシビアに選び、付き合っていかねばならない相方という存在。相方は、芸能界、舞台でともに戦っていく戦友です。この"ともに戦う"という概念こそ、やおいの世界に不可欠な要素であり、キャプつばしかり、幽遊(白書)しかり、はたまた(北条)時宗しかり、戦う男たちというのはやおいの永遠のテーマなのです。

 

 考えてみれば相方というのは不思議な存在ですよね。普通に生きていれば得ることのない存在ですし、親友というのともまた少し違う。ダウンタウンでもそうですが、プライベートで遊ぶことなんてめったにないというコンビは意外と多いようですし、仲良しとかいう次元なんてとっくに越えているのでしょう。本当に「特別な」としか言い様のない関係なんだなーと思います。それがまた多分にやおい的なんですけど(笑)。やおいは常に「この人間しかありえない者同士の関係」を追求します。芸人コンビというのはまさに、お互いが唯一無比の存在でなければうまく行かない関係ですから、そこにやおい的妄想が入り込むのも無理はないわけです。というわけで、おそらく、いや絶対にコミケに行けば、芸人のやおい本が売られているはず。まあ大半は若手コンビのカップルでしょうが、意外と中田カウス・ボタン師匠なんてカップルもいけるかも(←何を考えているのだ)。

 

 それにしても、色んな人から一目惚れされてしまうロック氏って・・・・・・。ますます好きになってしまいました(笑)。

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