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++旅先恋愛その弐++
「旅先恋愛」のパート2だなんて、さてはわたしに何かロマンスでもあったか??と思ったら大間違いである。
わたしの旅にロマンはあっても、ロマンスはない(泣)。しかしまあ、旅に出て1年経ったということで、「その後の旅先恋愛」を書いてみようと、何故か思い至ったのである。ま、いつものグダなので、ヒマな方だけお付き合い下さい。

もはや本人の資質うんぬんよりも、運命的に呪われているとしか思えないのだが、未だこの旅においては恋愛のひとつもなく、しばらくの間特定の男性と旅をともにするという楽しい経験もなく、ゴルゴ13(※わたしが持っているコンドームの銘柄)も相変わらず使用されていない。
別にゴルゴが使いたいわけでも何でもない。ただ、このままでいいのかわたし??と何となく思うのだ…。
前にもどこかで書いたように、アフリカを旅している旅行者の半数以上、いや8割以上が男女のカップルという異常事態(?)が起こっており、独り身のわたしとしては実にフクザツな環境なのである。

エチオピアにいた頃が、ピークに辛かった。
旅先風信の方でも書いたけれど、エチオピアの宿は、シングルがない。すべてダブルベッドなのだ。何ゆえ、このよーな広いベッドに、カップルなら折半できる金額(つまり一人だと倍)の値段を払って寂しく眠らねばならんのだ!?とヒジョーに憤りを感じていたのである。ま、エチオピアが普通に旅しやすい国なら、そんなことも思わなかっただろうが、ご存知のようにストレスまみれの旅だったため、寂しさもひとしおだったのだ。ほんと、『ハッピーマニア』の重田カヨコじゃないけど、「何でわたしには恋人がいないのーー?!」と叫びたくもなるっての。

こんな広いアフリカ大陸を旅していれば、ロマンスのひとつやふたつ、その辺に転がっていてもおかしくないものだ。そうでなくとも、もう1年も旅していれば、ロマンスのひとつやふたつ、無い方がおかしい。
が、わたしの目が腐っているのか、はたまたわたしの顔が腐っているからか(悪かったな)、何も見つからない。何も起こらない。何にも、本当に何にもないのである(しつこい?)。
このテの話題を振られたときは、本当にあせってしまう。
○「そんなに長く旅してたら、何かロマンスがあったでしょう?」
私「いやー、別にないですよー」
通常、こういう会話の流れとしては、ないとか云っておきながら、実は叩けばホコリがいっぱい出てきて盛り上がる・・・というのが定石なのだが、わたしの場合本当に何もないので、後が続かない。実に恥ずかしいが、さりとて捏造するのも哀しいので、テキトーにお茶を濁してその場を切り抜けるしかない。

まあしかし、寂しいからと云って、誰でもいいってものでもなく、こんなに需要と供給のバランスが明らかに取れていない状態でも、人は(わたしは)あーでもないこーでもない、と注文をつけたくなるのである。
北村一輝みたいな旅人はいないのか?とか(笑)。何をゼータクな、と云われそうだが、これはあながち夢想だけでもない。だって、北村にーさんは、3年間世界放浪をしていたという、正真正銘のバックパッカーなのだ。うーん、あと5年早く生まれていれば(笑)。

まあでも、そんな男前でなくても全然いいのだ。
友人に云わせると、わたしは面食いらしいのだが、別に、どっから見ても男前な顔が好きなわけではない。それに、誰かを好きになるきっかけというのは、本当にささいなものだ。
たった二、三言言葉を交わしただけでも、その声色にくらっとなってしまうこともある。そういうささいなものが、妄想のネタとなって、一人でいるとどんどん膨れ上がっていき、いつの間にか運命の人としての地位を築いていたりする(笑)。
今、折りしもスタンダールの『恋愛論』を読んでいるのだが(こんなもん読んでいるヒマがあったら、本当の恋愛がしたいっつーの)、結局恋愛というのは、妄想の産物なのだなあ、とひしひしと思う。そして、ふとした瞬間に、その妄想から解き放たれ、「あれ?今までのは何だったの?」と不思議に思うのだ。突如として、相手の欠点などがあぶり出しのように浮かび上がってきて、今の今まで完全無欠だった王子様(笑)が、タダの人以下になるときの落差といったら…これを味わうのがイヤで、無意識的に恋愛を避けている部分も、無きにしも非ずなのである。

恋愛をしていなくても、やはり寂しいときには、誰か、恋愛対象に限りなく近いところにいる人のことを思い描く。
そういった”心のアイドル”というのは常に存在していて、実際のところ本気で好きなのかどうかは分からないのだけど、とりあえず暫定的に”好きな人”というのはいつもいる。もちろん全ては自己完結なのだが(笑)。精神的につらくなったときは、その人の名前を呪文のように繰り返したりして、自分を慰めるのだ。そういう象徴的な存在、心の支えはないとやってられない。
ま、キレイに云えばそういうことだけれど、つまりは男性でいうところの”オカズ”ってやつですね。これを読んでいるわたしと知り合いの男性群も、もしかすると対象になっているかも知れませんので、悪しからず(冗談よ、冗談)。

と、こんな風に、枯れた生活を嘆いているわりには、恋愛しようというバイタリティもモチベーションも実はあんまりなかったりする。
恋人がいたからって、それで根本的な寂しさが無くなるわけでもないし、寂しさを紛らわすための恋愛なんて、不毛すぎる。お互いそれで割り切っていればいいのかも知れないけれど。とりあえず、今のところ、そういう需要も供給もない。

…さて、ここまで書いておいて何だが、実は、中東(レバノン)ではちらっと、本当にちらっとだがロマンスがあった。ま、恋愛のレの字くらい、いや、レンア…くらいまでは云ってもいいかも知れない。
何と相手はガイジンである。白人、しかもわたしの好きな国ランキングの上位に位置するオーストリア人男子だ。英語も出来ないくせに(もちろんドイツ語もムリ)、よくもまあ…と未だに不思議でならない。ならないのだが、何故かわれわれはちょっとだけ恋に落ちてしまったのである(笑)。

始めはお互い、気にも留めていなかったと思う。
その頃わたしは例の彼女と一緒にいたのだが、英語のできる彼女の方がむしろその人とよく話していたし、わたしはハナから英会話をあきらめていた。そんなわたしに彼が注意を払うわけもない。
…と思っていたのになあ。たまたま同じドミトリーになって、たまたま二人で話す機会があって、次の日には一緒にお出かけ(デートですねデート。しかし場所は強制収容所だった;)することになっていたのだ。あのときの、磁石が働いたとしか思えないようなスムーズな展開は、一体何だったんだろう?

ミもフタもなく結論から云うと、わたしとその人に肉体関係はない。
ダマスカスの安宿の屋上で、マット(ベッドではありません)が隣同士なので、ちょっと(かなり?)くっついて寝たとこど止まりである。何せ、周りには彼女ほか、貧乏な旅人どもがうじゃうじゃ寝ているので、さすがにコトに及ぶわけには行かなかった(笑)。
あと2日、いや1日でも一緒にいれば、何事か起こったのかも知れない。わたしには一応、その選択権があった。
つまり、予定通り彼女と一緒にヨルダンに抜けてしまうか、あと1日だけ残っているシリアのビザをギリギリまで使って、彼と一緒にダマスカスに留まるか。
ここで前者を選んでしまうところが、わたしの可愛くないところなんだろうな。こういうせつな的なものに、身をゆだねられないのだ。1日一緒にいて、肉体関係を持ったら、ほのかな甘い思い出だけでは済まなくなる…それが怖かった。別に永続的な関係がほしかったわけじゃない。でも、どうせ1日しか一緒にいられないのなら、今のこの、キレイなところで留めておきたい、そんな風に思ったのかも知れない。

彼は最後に、身につけていたブレスレッドをくれた。
わたしは今もそれをずっと持っている。最初の方は右腕につけていたのだけど、サイズが大きくて手作業するときジャマなので(おいおい)、バックパックにお守り代わりに結んである。そのブレスレッドと一緒にくれた手紙には「これ(ブレスレッド)が君にいつも幸運をもたらすように」とかいうようなことが書いてあった。

何もなかった話は自分でも悲しいくらいに筆が進むのだが(笑)、実際にあった話つうのはどうにも照れるな…。
ま、そんなことはこれこっきり。あとは実に身ぎれいに、修道女よりも清く正しく旅をしておりますですよ。

2003年4月28日 ハラレ)


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