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++ラム島で『VOUGE』を読む話など++
ここ、ケニアはラム島、取材がてらお茶を飲みに入ったちょっとこじゃれたカフェで、置いてあった『VOUGE』を手に取ったらさー大変。物欲大爆発だっつーの!!
何だよ、世の中にはこんなキラキラしたもんがあふれてんのかよ!
キラキラした服、キラキラした靴、キラキラした化粧品、キラキラしたおしゃれピープル(笑)…ページをめくるたびにアドレナリンがどばどば出まくって、もう少しで発狂するとこだった(ウソ)。

何せ今、そのテのものから最も遠いところにいるわたし。洗濯しすぎてヨレヨレになったTシャツに、洗濯しなさすぎて異臭がしそうなズボン、日焼け止めはしょっちゅう塗り忘れるので顔も首も手も真っ黒け、さらには全身虫刺されで穴ぼこだらけ、そんなんだから化粧なんてもちろんナッシング、さすがにヤバいと思ったときだけ眉の形を整える…『VOUGE』どころか『nicola』(※中学生女子向けおしゃれ雑誌)の域にすら達していないありさまなのだ。
おまけに男もいないので、「おいおい、ホンマにわたし女子かいな」と、わが胸にじっと手を当てて考え直したくもなる。
せめても、と思って伸ばしている髪も、何だかただのボサボサ頭で、男子のロンゲよりひどい。髪切るお金ないのー?と云われても仕方ないような状態だ。あああ、書いててホント情けなくなってきた…。

それに引きかえ、『VOUGE』の中にあるものは、何てカッコよくて可愛くて、楽しげなのかしらー??どうして世の中には、すげー広くておしゃれなアパルトマンに住むデザイナー兼何とかコーディネーター兼何とかプロデューサー、みたいな人が存在するのかしら??
わたしも、アレキサンダー・マックイーンの服とか、ジョン・ガリアーノの服とか着て、風を切って歩いてみたいわよ!「好きな仕事だから、ストレスなんて全然たまらないわ」とかヨユーの笑みで語ってみたいわよ!

ま、そうでなくても、スティラの可愛い化粧品をドレッサー(持ってないけど)の前に陳列したい。いかにも男ウケしそうなジル・スチュアートなんかのワンピースを着て、中山美穂風ロングヘアで、街を、あくまでも軽やかに歩きたい。
…ん?何かそれは違うような気もするけど、まあほかには、ジェーン・マープルの服を買い漁りたいとか、頭がアホになりそうなラブコメ映画を立て続けに4.5本観たいとか、京都の古本屋で稀観本を捜し歩きたいとか、プレステ2を買って、好きな映画とドラマのDVDを片っ端から集めたいとか…『VOGUE』とカンケーないな。庶民的すぎて…。しかも、サンタクロースにものをねだるガキのような文章になってるし。

…こんなことを考えるのは(考えるってほどのもんかい)、何も今に始まったことではない。一人寂しく独房のような部屋で眠る前(笑)や、長距離バス移動のときなんか、いつもこのテの妄想っつーか単なる物欲を膨らませては、あとで空しくなるという、まさに精神的マスターベーションな行為を何度繰り返したことか。
着物のHPを作っている乙女仲間の影響で、帰ったらゼッタイ着物をやるわ!と決意し、就職活動のことはすっ飛ばして、キレイでエアコンのよく効いたオフィスで忙しいながらも楽しげに働いている自らの姿を想像し、さらには一人暮らしのことまで考え、部屋のレイアウトに真剣に悩む始末…ああ、何て不毛な。
こんな欲求、しょせん日本に帰ったら、泡のように消えてしまうもんなのに。

前に一時帰国したとき、やっぱりそうだった。あれが食べたい、あの本が読みたい、あの店に行きたい…とあれこれ夢を膨らませていたのに、ヒコーキに乗った瞬間、つまり、確実に日本に帰るのだと身体が認識したとたん、すべてどうでもよくなってしまったのだ。
我ながら、本当に不思議でならなかった。
あれほど懐かしく思っていた大阪の街を実際に歩いてみても、「ま、こんなもんか」としか思えず、むしろ、すれ違う女という女が全員化粧が濃く、どいつもこいつも服装がこじゃれていることに反発を覚えてしまったくらい。
さすがに、本屋に行ったら見事にアドレナリン爆発してたけど。

ただ、思うのは、わたしって、頭から足の先まで、どっぷり物質文明の子なんだなー、ってこと。
ナイロビで久々に巨大スーパーを見て感動・興奮し、つまらんものをこちょこちょと買ってしまったとき、顕著にそう感じたね(笑)。あの美しく陳列された棚を見ると、誰かによって作られた幸福でもいいや、なんて思ってしまう(何のこっちゃら)。
それにしても、女子って何でスーパーが好きなんだろ?少なくとも女子の旅行者でスーパー嫌いな人って見たことない。

物欲が少なければ、もう少しラクに生きられるのかも知れないなあ、と思うことがある。
だって、キリがなさすぎる。新しいものは次々登場して、欲しいものはいつまでたっても完全には手に入らない。あれと、アレと、××さえあれば十分、なんて思ってても、手に入った瞬間、また別の何かが欲しくなって、その気持ちが不満として沈殿していくわけで。
例えば、旅の間は、節約と荷物を増やさないためにも、みやげの類はゼッタイに買わない、と出発前には思っていたにもかかわらず、フタを開けたらどうだこのザマは(笑)。今やまた、身動き取れないほど荷物が重くなっているではないの。こないだナイロビで5キロの荷物を送ったはずなのに、今だこれほどバックパックが重く、しかもサブバッグが未だに使用されているというのはどういうワケなのよーーー!?って、答えはカンタン、何かしらごちゃごちゃと買っているからです。はい。
死ぬときは、何にも持って死ねないんだよわたし…そう思いながらも、ついかわいいものやレアなものを見つけたりすると、「ゼがヒでも手に入れなければならない」と脳から指令が発せられてしまうのさ…ビョーキだな。

ときどき、わたしは一体何を求めてこんなにあくせくし、何が足りなくてこんなに不満だらけなのだろう、といぶかしく思う。
夢にまでみた旅暮らしなのに、ふと気がつくと、日本でのありきたりな生活を懐かしんだり、あれが欲しいこれが欲しい、と今ここでは手に入らないものばかりを渇望している。
そして、きっと帰国したら、また旅の空が恋しくなって、旅のことばかり考えていつもぼんやりしていることだろう。
それって、何なんだろうな。何で、”今、ここ”ではダメなんだろうな。
まあ、この煩悩が、わたしを生かしているのだと、思わなくもないけれど。これがなくなったら、何で生きているのかよく分からなくなりそうだけど。

そんな感じで、今回はまさにむだ話でした。

(2003年3月)

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