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++シロートによる旅先音楽話〜後編〜++
”前編”からえらく間が空いてしまったが、今回は、アメリカ以降の旅先音楽遍歴(ちゅーほどでもないが)をば。
「音楽話」なんつっても、例によって専門的な話は何も出来ないので、音楽好きの方にはまったく物足りない内容となっております。悪しからず。

アメリカからトルコに飛ぶという、意味不明なルートを取ってアジア横断を開始し、最初の国トルコで聞いていたのは、トルコとは何の関係もない、いわゆるアンビエント系とかいうやつであった。
当時泊まっていた宿で、長期滞在していた男の子がよくかけていたのである。夜、宿泊客が集まってだらだら話しているときに、この気だるくタイハイ的な感じがよく合っていた。
彼によれば、何故かトルコの海賊版CDショップには、このジャンルのCDが充実していて、わたしも連れて行ってもらって、2枚くらい買った。

イランは飛ばして(すまん、イラン)、アフガニスタンがなかなか印象的だった。
せっまいハイエースの中だったか、とにかく”車内”でかかっていた曲が、あんまり聞いたことのない感じの曲調で、決してまったくカッコよくはないのだけれど、「これはアフガニポップスなのだろーか…だとしたらかなりレアだなー」なんて、えらく気にかかっていたのである。

それで、首都カブールのバザールで探したが、さすがに戦後間もない国だからか、ミュージックCDというものがない。ミュージックはすべてカセットテープ。しかも、明らかに人の手でダビングしたっぽく、ラベルなども手書きである(笑)。
その中から目当てのものを探し出すのは至難の業で、あきらめざるをえなかった。
その後、ペシャワールのババジイツアー中に、アフガンバザールに寄ったとき、それっぽいVCDを買ったのだけど、ビミョ〜に違うような…まあいいか。

パキスタンのフンザで忘れられないのが、地元歌手シャヒードくんの「TARAH TARAH」という歌だ。
幸運にも、目の前で弾き語りもしてもらったのだけど、そのとき一緒にいた旅行者の男性が、「知らず知らずのうちに涙が出てた」と云ったほどの名曲。
「タラータラー」とは、「ゆっくりゆっくり」という意味で、いかにもフンザらしいタイトルだと思う。そこはなとなく哀愁のあるメロディも、フンザのあの静謐な雰囲気に、とてもよく似合っている。

チベットで死ぬほど耳にしたのが、「草原魂」というチベタンソング。
ヒッチハイクのトラックでも、ラサの街中でも、とにかくいたるところで聴いていたので、何だか愛着が湧いてしまって、ラサを出る前の日に、CDを買ったのであった。「また店頭で口ずさむのイヤだなあ…」と思っていたら、偶然にもちょうどその店でかかってたんだよね(笑)。いや、偶然というか、それくらいどこやかしで流れてたってことか。
曲調は…何だろうな。土臭い感じ。中国歌謡の泥臭さともちょっと違う、もっと素朴でイケてない感じ。かの悪名高き(笑)エチオピア歌謡と、けっこうかぶる感じ。あれと同じで、な〜んか妙〜に耳に残るのである。
ちなみに、歌手名は”牧歌王子”と、かなり微笑を誘う名前である。

後日、インドで会った旅行者がやはりチベットを旅していて、この「草原魂」を知っていたのだが、わたしがCDを買ったと云うと、「ええええっ!?ホントに買ったの!?」と、ものすごーく驚かれてしまった。
何でも、チベットでのトラック移動中、運転手がこればっかかけていたらしくて―と云うよりも、テープだと3曲くらいしか入っていないので、何回も何回もリピートして、気が狂いそうだったとか…。まあ、確かに何時間もリピートに耐える音ではないけど(笑。エチオピア歌謡と同じね)、わたしは逆にそれで気になってCDまで買ったんだよね。
ちなみにこれ、CDじゃなくてVCDで、チベタンのおっちゃんが熱唱している姿や、民族衣装のみなさんのダンスなども見られてオトクでした(笑)。

当時ラサでは、この他にも何曲かヘビーローテーションで流れていた曲があった。
「チャーヨナーラ、チャーヨーナーラ」というサビのフレーズがやたら印象的な歌、あれは中国ポップスだろうか?この”チャーヨナーラ”は、日本の”サーヨナラ”なんだろうか?気になる歌である。

ネパール、カトマンズのタメルでは、ありとあらゆるコピーCDが揃っている。値段は、中南米に比べると若干高くて、200〜300円といったところだが、ラベルもきっちりプリントされていて、本物と殆ど変わらない(よーな気がする)。
わたしも何枚か買ったが、ぜひとも入手したかったのが、「Tibetan」というCDであった。
これを初めて聞いたのは、カイラスのふもと・タルチェンの宿だったと思う。しかし、本場チベットよりも、カトマンズでガンガンかかっていた(特にタメル)。バックパッカーでも知っている人、欲しがっている人が多かった。
これは音楽というか、マントラ(真言)で、「オンマニペメホム、オンマニペメホム」という真言が、えんえんと繰り返される、それだけのCDである。それだけなのに、やたら味がある。
タンカ(仏画)屋の前を通りかかって、これが聞こえてきたりすると、清少納言風に「いとをかし」と思う。

マントラと云えば、インドで買ったCDで一番気に入っているのも、「Gayatori Mantora」という、マントラCDである。マントラ好きなのか?(笑)
インド旅行のわりと最初から、ちょこちょこ耳にしていて、気にはなっていたのだ。それで、インド後半戦で、そろそろ真剣に探しとくか…と、けっこうあちこち探して、最後のコルカタで買ったもの。
これもマントラだから、えんえん同じフレーズを繰り返すだけなのだけど、女性の、小鳥のさえずりみたいなキレイな声なので和む。

あと、これまたいたるところでガンガンに、アホみたいにかかっていたのが、まったくジャンル違いだが、「Dhoom Dhoom」という、くねくねしたヒンディダンスナンバー(英語verとヒンディverがある)。何しろ、その辺のみやげ売りの少年が、商品の笛でイントロ部分を吹いているくらいなのである。
なもので、いいか悪いかなんて判断する前に、気がついたら刷り込まれていた(笑)。
当時はCDを買わずにいてしまったが、後に何故かラオスでVCDを発見し、即座に購入した。これ聴くと、コルカタのホーリーでインド人と一部のツーリストが踊りまくっていた光景を、反射的に思い出す。

ゴアでよく聞いていたCDが「Shiva Moon」…これは、正式名称かどうかは分からない。居候していたスペイン人の家でかかっていたCDで、中身はブッダバーとかその辺系の、チルアウトというやつになるのか?何にせよ、すごくいい感じなので、彼にコピーさせてもらったのだ。ゴアの太陽とまぶしい緑とゆるやかなビーチの時間に合った、すこぶる心地よい音である。

音楽じゃないけど、最後のコルカタでは、映画をよく観に行っていて、インド最終日に、現代インド映画の傑作と云われる作品の、豪華DVDセットを買った。カレン・ジョハールという、気鋭の若手監督の代表三作品が収められたもので、インドの織田裕二ことシャールク・カーンがすべてに主演している。
まあ豪華っても、日本円にしたら2000円くらいだが、ちゃんとしたケースに入っていて、3枚組(3作品)+メイキングDVDもついていて、さらにはその店のキャンペーンで、この監督の最新映画「KAAL」のサントラ盤までタダでついてきたのである。ラッキー。
当時コルカタで会ったヒンディ映画マニアの人に、「あれはゼッタイお得だから!」とオススメされて買ったのである。しかし、DVDレコーダー持ってないので、未だ見られず。早く見てーな…。

ちなみに、「KAAL」サントラ盤は、いかにもヒンディポップス(思わず踊りたくなる感じ)なんだけど、かなりカッコよくて、気に入って聴いている。

アラビアでは特に音楽は聞かなかったが、ドバイを出る日、ディナール通貨が中途半端に余ったので、CDを買って帰ることにした。
中近東はどうやら、独自のアラビアン・ポップスが盛んらしく、ショッピングセンター内のヴァージン・メガストアには、それまで見たこともないような歌手のCDがズラリ(笑)。エジプトで好きだった「ハキム」なんかもあった。
”エジプシャンポップス”から”レバニーズ””イラニアン”などと、国別でコーナーが出来ていて、目移りするのだが、何ぶん全っ然分からんので選びようがない。店員のオススメを聞くのもアリだけど、ハズレだったら困るし…。

それで、とりあえず無難なのを1枚と、わたしが選んだのはアラビアンテクノ…って、どこが無難なんだ;その時、新譜で売り出し中だった「ハーレム」というアラビアンテクノCDを視聴して、「ふむ、新鮮かも」と思ったので、しかし何故か「ハーレム」は買わずに(笑)、別の「The renaissance of arabic classics for clubbers」というコンピ盤を買った。
レバノンでちらっと聞いた話だけど、レバノンや湾岸諸国あたりの中近東金持ち区域では、どうやらこっち方面の音楽も発達しているもよう。で、音楽は…一応テクノだと思うのだけど、メロディがいかにもアラビア!だ。ベリーダンステクノ盤みたいな、今にも壷からヘビが出て来そうな曲調(どんなんや)。「♪ムスタファ〜ムスタ〜ファ〜」とか云うてるしさ(笑)。カッコいいんだか何なんだかよく分かりません。

バングラデシュは、何と云ってもミルプール聖者廟で聞いた、バウル音楽!
バングラ独自の宗教&民族音楽だが、めっちゃめちゃカッコいい。これ、夜に生で聞きに行って、マジで身体が震えた。こういうのを聞くと、音楽には魔力があるなあと、しみじみ思う。
それで、CDが欲しくて、首都ダッカのバザールで「バウル、バウル」云いながら探し回ったのである。この時は、自分で口ずさめないので、デジカメで撮った動画を音声付で見せるという、画期的な方法(笑)を用いたのだが、どうも、「これは?」「これか?」と出されるCDが、ことごとく違う感じなんだよな(苦笑)。でも、彼らに云わせれば「これがバウルだ」ということだし…。結局100パーセント納得のいくものは見つけられず、残念。まあ自分で撮った映像を見ればいいか…。

バングラではもう1枚、これは完全に偶然発見した、「RAAGA」というCDが、わりと掘り出し物だった。
チッタゴンのマーケットをブラブラしていたとき、たまたま耳にして、瞬間的に「あ、これいい」と思って、CDを流していた屋台で即買いした。
バングラらしからぬ(かどうか分かんないけど)、繊細で透明感のある、スウェーディッシュ・ポップスを思わせるような曲調が、あの雑多なマーケットの中で、清涼剤みたいに響いて来たのであった。実は全曲スウェーディッシュ・ポップスのカバーだったとか云ったら笑うけど。違うか。

ミャンマーでやたらと耳にしたのが、昔のディスコ(マハラジャとか)でかかっていそうなダンス曲。ミャンマーとディスコって…なんかしっくり来ないのだが、素朴なわらぶきの食堂なんかで実際に流れていると、それはそれでアリなのかと思ったりもするのが、音楽の不思議なところだ。
その中でも好きな曲が1つあって、それはバングラのミャンマー村の結婚式でもかかっていて、CD欲しいなあって、密かに心にメモって置いたのである。
多分、元はアメリカあたりの有名なやつだと思うが、未だにタイトルもアーティスト名も分からん。まあそれで、ヤンゴンのCDショップで、恥ずかしながらメロディを口ずさんで聞いてみたが、そのとき買ったCDには入ってなかった…くそっ。

ちなみにミャンマーは軍事政権下ながら、独自の芸能界&音楽界が発達している。何故かヒップホップが人気で、saisaiとexsamplesという二大ヒップホップスターが存在する。遅ればせながら、欧米(主にアメリカ)文化を取り入れるというアジアの潮流に、ミャンマーも乗っているということか。

東南アジアは、土地の音楽はあんまり聞かなかったけど、コピーCDはとりあえず安いので、何枚か買った。ラオスが安かったな。
まあ、タイには独自の音楽世界がちゃんとあって、大型CD店とか行くと、ちゃんと邦楽のコーナーが存在していて、ジャケットなんかもけっこうお洒落だ。
まあそれで、わたしも記念に1枚、タイの邦楽を何か買おうと、あくまでもコピーCD屋であれこれ物色。
それで、ちょっとかわいい絵本調のイラストの、お洒落なカフェとかでかかってそうな、小粋な(笑)CDを一枚選んだ。

旅の最終地点・深センは、さすがはコピー大国チャイナということで、CD&DVDめちゃ安っ!もう少しお金があれば、もっと買いあさっていたのだが、あいにく残り資金がすずめの涙くらいしかなかったため、絞りに絞ってCD3枚、DVD1枚を購入(DVD持ってねーのに…)。
3枚のCDは、カイリー・ミノーグのベスト「ultimate」、台湾のトップアイドルであるジェイ・チョウの「英雄」、そして当時ロングランヒット中の、ウイグルの歌手・刀郎の「喀什葛○胡楊」。いずれも2枚組で15元であった。
DVDは、同じくジェイ君のライブDVD。こちらは10元。
本当はこれに加えて、フェイ・ウォンの豪華ケース付きライブDVDも欲しかったんだけど…今思えば、たったの30元。それすら持ってなかったのかと思うと、悲しい。

それはともかく、何でジェイ・チョウなのかというと、当時香港では、映画「頭文字D」のDVDが発売されたばかりで、主演のジェイ・チョウの顔がサブリミナル効果的に頭に刷り込まれ、気がついたら気になっていたというわけ。
やはり1回目の中国で、カシュガルのスーパーなどで、お菓子のパッケージに印刷されている彼の写真をよく見かけていたときは、「なーんでこんな地味顔のにいちゃんがアイドル?!」とか思っていた。でも、CD聞いたら、けっこうカッコいいのである。他にも、当時のヒットチャートを視聴してみたが、中国語の歌で、民族歌謡的という意味でなく純粋にカッコいい…と思ったのは、フェイ・ウォンとこのジェイくんくらいである。
それに伴って、ジェイくんの容姿についても、「顔立ちは地味だけど、雰囲気が何ともセクシーだよな」と見解を新たにしたのであった(笑)。それにしても、映画「頭文字D」の出来はどんなものなのか、気になる。

刀郎(ダオランと読む)は、何曲かが町でよくかかっていたのと、居候先の主人Mさんに薦められて買った。
中国ポップスなんだけど、カシュガルの人というだけあって、メロディがちょっと独特で、どうやらあちらの民族楽器(弦楽器)を取り入れているようで、その一風毛色の変わったところが、中国全土でウケているとか。日本で云うと、沖縄民謡調ポップスが大ブレイクしているような感じだろか。

………

今思えば、もっと色んな音楽を聴けばよかったなという反省も多少あるが、わたしのようなシロートは、自ら音を探しに行くのではなくて、かなり受動的に「あ、今流れてる曲ってなんだろう」というくらいの姿勢がちょうどいいんだと思う。
いずれにしても、旅先で耳が覚えた音楽には特別な響きがあって、そのときの気分によっては、聞いているとあまりにも切なくなりすぎて、つらいこともある。

(2005年)


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