IKUMOP.GIF - 1,393BYTES旅先むだ話IKUMOP.GIF - 1,393BYTES


++誰にでもできる旅@―旅の理由―++
旅先むだ話、このコーナーはその名のとおり、何の役にも立たないむだな話のコーナーなのであるが、今回は、いつもよりはちょこっと、真面目な話である。

2005年になり、旅の終わりがハッキリと見えてきた。
だから、今、旅人である間に、旅への思いを自分なりに整理したい。そう思って、これを書いている。
その前に、たまった旅行記を書け!というご意見もあろうが、まあ、それはちょっと待って下さい(笑)。

なぜ旅をするのか?
という、きわめてストレートな命題について、多くの旅人は、明確な答えを持っているだろうか?
わたしは”否”だと考えるし、わたし自身もまた”否”である。
特に長い旅をする旅人にとって、この質問はかなり痛いと思う。長旅もの同士で、たまにこんな話になると、「時々聞かれるんだけど・・・答えに困るよねえ」と云ってお互いうなづくばかりである。

わたしも例外なく、この質問には常にお茶を濁してきた。
まあ、最近は、こんな愚かな(笑)質問をする無邪気な旅人に会うこともほとんどないので(ああ、しかしバンコクあたりに行くと、パッカーデビューしたばかりの学生なんかに云われそうだなー・・・)答える機会もないのだが、そして、別に答えを出す必要なんてないのだろうが、頭を悩ますことが大好きなわたしは(笑)頼まれもしないのに考えてしまう。

旅をする理由や目的(特に長旅)は、千差万別・・・と云いたいところだが、「楽しいから」「刺激があるから」「世界を広げたいから」「色んなものを見てみたいから」「色んな人に会ってみたいから」・・・大方は、この辺に帰納するのではないだろうか。「自分を見つめ直す」「自分を変える」なんていう、ちょっと恥ずかしい理由も、実はわりと主流だと思う(笑)。
しかし、それらは本当でありながら、どこか上滑りしてしまうのは何故だろう?
これらの答えを実際に云った旅人たちもいる。でも、わたしにはピンと来なかった。間違いではないと思いながらも、納得できないものを感じた。たとえば、「楽しいから」と云われた場合、それ以上はつっこめないし、つっこみようもないのだが(笑)、説得力に欠ける感は否めない。どころか、「それって理由なのか?」と訝しんでしまう(笑)。
多分、これらの答えは、どれもが真実の一面をしか語っていないのだ。しいて云うならば、”これらすべて”が答えなのだが、それでもやはり、何かが足りないような気がする。

いや、旅において、目的や理由を考えることが無意味なのであり、「旅には目的も理由もない。」そう断言する人も少なくない。
旅は旅でしかない、とか、旅なんて楽しければいい、とかいった意見は、とても潔いとは思うのだが、わたしには違和感がある。少なくとも、わたしはそういう風に断言はできないし、納得もできない。

わたしの旅には、目的も理由も、あるなしで答えるならば、間違いなく”ある”。
ただ、それが、確固たる言葉にならないだけなのだ。
はっきりと答えられない、他人に説明できない、言葉にならない・・・だが、それは、理由がないということにはならない。
少なくともわたしは、旅を通して常に、”何か”を求めてきたように思う。
それは、上記のように、人との出会いであったり、美しい自然や街であったりするのだが、それらはあくまで形として出てきた結果であり、人と出会うことで、美しい自然と出会うことで得られる”何か”こそが、本当の答えなのだ。

では、その”何か”とは何であろうか?
わたしが欲しかったものは何なのか?
世界各国のおみやげか?(笑)、いや、そんなはずはない。

わたしはずっと、自分は何と空っぽな人間であろうか、と思ってきたし、今も思っている。
何か特殊技術があるわけでもない、語れるものを持っているわけでもない、ごく平凡な家庭に育ち、平凡な子供時代と青春を送ってきたし、旅に出るまで、実家を出たこともない。きわめて狭い世界の中でものを考え行動してきた人間である。

大学4年の就職活動のとき、わたしは、大手マスコミ会社を片っ端から受け、片っ端から落とされていた(笑)。
志望書に必ず書かされる、「大学時代に何をやってきたか?」という項目に、わたしはいつも頭を悩ませていた。無理やり「バイト」とか「旅行」とか書いていたけれど、だから何?と自分でも情けなく思っていた。だってそれって、誰でもやってることじゃん?
就職活動時は、自己PRってものを、しつこいくらいやらされてきて、そのたびに「あー、わたしって、何にもPRするもんがないなー」と悲しい思いに打ちのめされてきた。まあ、今思えば、大部分の人間―しかも甘ちゃん大学生なんかに、声高にPRするようなものなどあるはずもなく、あのとき必要だったのは、根拠のない自信とハッタリであった、ということに思い至るのであるが。あの頃はホント、何も知らない子羊ちゃんだったからなあ(笑)。

わたしのやっている旅は、決して特殊なものではない。
旅の中でやっていることを挙げてみれば、食べる、寝る、観光する、移動する、日記を書く、買い物をする・・・これくらいしかない。今書いてみて、「何だそりゃ?!」と思ったくらい、シンプルである(笑)。
また、”世界一周”というと、何やらすごいことのように響くけれども、金と時間と健康な身体と、ほんの少し人生を捨てる覚悟(笑)があれば、誰にだってできると思う。今の世の中、ガイドブックを始めとしたお役立ち情報は、巷にあふれているのだし。
まして、わたしの旅は、陸路をつらぬくとか、無銭で旅するとか(@けいの無銭旅行記)、世界中の雑貨を見て回るとか、五大陸最高峰を制覇する・・・といった”こだわり”があるわけでもなく、特にオリジナリティのある旅とは云い難い。
何ら見るべきところのない旅であり、ハッキリ云ってしまえば、「フラフラ遊んでるだけじゃねーか!」ということである(笑)。いや、まったくそのとおり。とても人様から賞賛されるようなシロモノではない。

わたしはそれでも、この3年に及ぼうとしている旅を通して、自分の中の”空っぽ”を、多少なりとも埋められたのではないか、という思いがある。
誰にでもできる旅。でも、この旅は、まぎれもなく自分が紡いできた物語だし、そのことをひそかに誇りに思ってもいる。人様には、自慢になるどころか、人によっては軽蔑の対象にすらなりかねないけれど、わたしは自分のやってきたことに価値を見出している。人から見たら路傍の石ころに過ぎなくても、わたしにとっては宝石なのだ。世界のどんな名作よりも、価値のある物語なのだ。
旅とは、自分オリジナルの「ドラクエ」を作る、そんな行為ではないだろうか。あるいは、人生の中にもうひとつの人生を作るような行為。

そうなんだ。多分、わたしが欲しかったのは、自分の物語なのだ。
恥ずかしいけれど、わたしは、自分にしか出来ない何かをやりたかった。自分にしか得られない宝物(あるいは、ドラクエにおける”ロトの紋章”と云ってもいい)が欲しかった。誰もが”自分の個性”を求めアピールすることをはばからない今の世の中で、わたしも例外なく、人と違う自分、自分のオリジナリティというものを求めているのだ。それはとてつもなくカッコ悪いと知りながらも・・・。

そして、それは自己満足に過ぎない。少なくとも、今の段階では。
でも、いつか何かの形で、世の中に還元できるものと信じたいし、そのようにしたいと思っている。
そのひとつが、些細ではあるがこのHPだし、帰国したらもっとよりよい形で、社会なり自分の人生なりに生かしていけたらいいなと思う。
今は、味噌もくそも一緒になった、カオスのような状態だけれど、例えば人生のある場面で悩んだり迷ったときに、旅の中で得てきた形にならない何かが、指針になることがあるんじゃないかと思うのだ。
それは、どのような形で出てくるのかは分からないけれども。

たとえば、”世界平和”と云ったときに、わたしには、具体的な実感がある。
世界はバーチャルでもなく他人事でもなく、ちゃんと存在しているもので、そこには、わたしたちと違うけれども同じ人たちが、泣いたり笑ったり怒ったりしながら、人生を生きているのだという実感がある。旅先で会った、あの国のあの人たち、あの子供たち・・・というリアリティが、わたしの中にある。
世界平和とは、そういうすべての人たちが幸福に、少なくとも理不尽な不幸に見舞われないで生きられること、だと思っている。
わたしは、想像力の乏しい方であるから、旅に出ていなければそういうことが分からなかっただろうと思う。
世界をリアルなものとして考えられるようになった・・・と、胸はって云えるほどではないけれど、それは、今後何かをやっていく上で、重要な指針になりうるのではないか。

旅の理由や動機が明確ではなくても、得られる果実があった、そのことは紛れもない事実である。
それでよしとすればいいのかも知れない。でも・・・。
「ああ、俺。俺はなぜ放浪をつづけるのだろう。」
7年もの放浪を続けてきた金子光晴の言葉である。
多分、いつまで旅を続けても、どれほど頭をひねっても、”何故旅をするのか”という問題への正解は出ない。まして、誰かを納得させることなど、不可能に近いだろう。
でも、それでも旅を続けながらそれを考え続けることは、無意味なことではないと思う。答えの出ないことを考え続けるのは、贅沢なことだ。考えること自体に価値があるし、その欲求が、原動力にもなる。
同じように、何故生きているのかを自問自答し続けながら人生を続けていくこともまた然り、ではないだろうか。

(2005年1月 インド)


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