そこで、一体何が入っているのか？という話になる。
しかし…何が入ってるんだろうか？？？重い原因のひとつは、パソコンだろう。当たり前だがこいつは重い。本体だけで3キロはあるから、周辺機器を入れると5キロくらいだろうか。いや、もっと？しかし、問題なのは、パソコンの重さを引いても余裕で20キロを越えていることである。ということは、わたしは常に、25キロ以上の荷物を背負って歩いているというわけだ。25キロっていうと…自分の体重の約半分くらいじゃねーか！そら重いわ！！

ほかに重い原因として考えられるものは何だろう…砂か。チュニジアでせっせと掬ったサハラ砂漠の砂である。500mlのペットボトルに満タン入っている。自分と友人知人への土産のつもりで持って帰ってきたはいいが、こいつが結構重いのだ。2キロのバーベルくらいはあるだろうか……。それに、”砂漠の薔薇”という石もオマケで付いているので、さらに重さがアップしている。
あとは、本、紙類。これは、バカにならない。本と云っても普通の文庫本ではない（それもあるが）。立派な紙で出来た写真集などである。あまりに重いのでハンガリーで荷物を送ろうとしたところ、写真集一冊だけですでに2キロを越えていた…。小包は通常、2キロまでならそこそこ安いのだが、これではどうしようもない（書籍扱いにしてくれと云ったが、全然通じなかった）。
絵葉書やパンフレット、チケットの類がまた多い。わたしはこういうものを後生大事に取っておくタイプなので始末が悪い。紙は1枚なら軽いが、累積されると半端な重さでは済まなくなるのだ…と、頭では分かっているのだが、もうこれは性分なので、性懲りもなくフライヤーや乗り物の切符を大事に大事に仕舞っているのである。

こんな荷物を背負って、宿を探す時のつらさと云ったら地獄である。
10分歩いたら猛烈な発汗、20分歩いたら呼吸困難、それ以上歩くと冗談じゃなく身体のどこかがイカレそうだ。宿がなかなか見つからない時など、もはや”心頭滅却すれば火もまた涼し”の世界。”心頭滅却すればバックパックもまた羽の如し”…なわけないって！いくらなんでも自分をごまかせないぜ。そりゃー宿がなかなか見つからないと、街中でも平気で泣くわけである。

時々、ものすごく荷物の少ない旅人に会うと、心の底から感心する。ああ、こういう人こそ旅の達人なんだわ、旅人のあるべき姿だわと思う。
普通は女子ならば10キロで充分すぎるくらいなのだそうで、ある女子旅行者などは、「わたしなんか5キロ以上は持てないわ〜」とのたまっていた（悪かったな、25キロも持ててよ）。その女の発言はともかくとしても、わたしは通常の2倍以上も背負っているというわけ！それって、普通の人間の2倍以上の物欲があるということを体現しているんじゃないのか！？
旅人、放浪者、風来坊…これらの言葉の持つ”軽さ”に全くふさわしからぬ荷物の重さ＝物欲の深さよ。恥ずかしいぜ全く。

帰国が近づくにつれ、徐々に土産の類も増えてきたため、刻一刻と荷物が重くなっている。もはや25キロでは済まないかも知れない。
父への土産がてらギリシャで購入したEASTPAKのリュックも、もっか運搬用に使用されている（父よすまぬ）。そんなわたしの出で立ちは、前にリュック、背中にバックパック（寝袋付）、肩からショルダーバッグを下げ、時には両手にビニール袋という、凄まじい状態である。ある旅行者がこの姿を表して「罪人みたいですよ」と云っていたが、まさに云いえて妙。あまりにうまいこと云うものだから、自分でも自虐ギャグの如く頻繁に使うようになった。

…そして、この荷物は、ついにわたしに怪我を負わせやがって下さいました。
カッパドキアからコンヤに出発する日、チケットを買うためにバス会社の玄関をくぐった瞬間、小さな段差に足を引っ掛けた。普通、それくらいなら何てことはない。だが、わたしは、バックパックの重みで、その段差で転倒した上、思いっきり足をくじいてしまったのである。あまりの激痛に、一瞬何が起こったのか分からず、放心と痛みのあまりしばらく立ち上がれなかった。バス会社のオッサンもさすがに慌てて、「大丈夫か？水を飲んで落ち着け」と、へたりこんでいるわたしに、どこからか紙コップに入れた水を持ってきてくれた。
この衝撃のせいか、何故かこの後、急に身体が冷え、頭がくらくらし、ついでに（？）下痢まで催して大変だった。つまり、身体に危険を及ぼすほどわたしの荷物は重いということなのだ、すごいだろー（って、自慢してどうするんだ）。ちなみにこのくじいた足は、2日後再びくじくことになる。おかげさまで今も痛いぞ。

とにかく、一時帰国したらまず、荷物の総点検から始めなくてはならないだろう。。。

（2002年10月）