IKUMOP.GIF - 1,393BYTES旅先むだ話IKUMOP.GIF - 1,393BYTES


++頭文字(イニシャル)”D”++
・・・っていうマンガありましたね。読んだことないけど。
これを書くと、バックパッカー界から除名されそうな気がしつつ(笑)、今回は、Dで始まる”あれ”の話。

旅を始めてから1年以上になるが、その間、じわじわとわたしを脅かしている悩みがある。
それは、いわゆるハッパとかガンジャとかボンとかドラッグとかマリファナとか、どれかに統一しろよ!と云いたくなるほど色んな名前で呼ばれているやつのことである。いや、それだけではない。コカインとかヘロインとかスピードとかLSDとか、どれがどれなんだかさっぱり分からないけれど、いわゆるクスリというやつである。
ここでは一応、タイトルをイニシャルDとしたので、ドラッグと表記を統一することにしよう。

この際断言してしまおう。バックパッカー(でも旅人でも、これまた呼び方は何でもいいのだが、一応これで統一)はみんなドラッグが大好きだ。
これは、バックパッカーというものが、60年代のヒッピー文化に根ざすものだからであろう・・・ともっともらしいことを云ってみたが、本当のところは知らない。
ただ、バックパッカーにドラッグがつきものであることだけは、はっきりと云える。

ところで、旅に出てもう長い、しかもヨーロッパ(北アフリカ)、中東、アフリカ、そして南米と、それなりに場数をこなしてきたわたしは、れっきとしたバックパッカーのはずである。
もし、バックパッカーに検定があるとしたら(そんなもん絶対ありえないけど)、少なくとも2級くらいはもらえる資格があるように思う。実際、ある男性の旅人から、「××ちゃんは、オレの会った中で一番すごい女バックパッカーだ」という誉め言葉(なのか?)を頂戴したこともある。

しかし・・・わたしはここではたと気づくのだ。
”ドラッグ好きという、バックパッカーの必須条件を、わたしは満たしていないぞ・・・”
冒頭に書いた悩みというのは、実はこれである。つまらない悩みで大変もうしわけないが、本当に悩んでいるのだから仕方ない。

旅で知り合った知人友人の多くは、しかるべきところでドラッグ(主にマリファナ)をやっている。
本人の口から聞くこともあるし、聞かなくても「多分やってるだろうな・・・」という人が大半だ。
また、意外な人がやっているケースもけっこうあって、そのたびに「ブルータス、お前もか!」と軽いショックを受ける。
最近は、旅人のドラッグ喫煙率があまりにも高すぎるため、いちいち確かめるのがコワくなってきた。別に、やってたからといって「まあ、何て不潔なの!」などとは思わないが、無意識的に深い溝を感じてしまうのは確かだ。
そしてわたしはこう思うのだ。「旅人の世界では、ドラッグをやらない方がヘンタイなのではないか・・・」と。

そういうわけで、もしドラッグ批判なんかやった日には、旅で知り合った友人のほとんどを無くしかねないので、批判はしない。そもそも批判をしたくてこんなものを書いているわけではないのだ。
むしろ、「わたしも素直にドラッグを楽しみ、”きまる”ことができればいいのに・・・」とうらやましく思っている方なのである(ホントか?)。
きまって食べるプリングルスは美味い、とか聞くと、プリングルスは普通に食っても充分美味いけどなあ・・・と思いつつも、ただでさえ美味いプリングルスが、ドラッグによって一体どこまで美味しくなってしまうのか、とっても気になる。
また、よく云われている「違う世界を見る」という感覚は、どのようなものなのか。信じがたいような、めくるめく快感が待っているのだろうか。そのわりには、マリファナを吸っている最中は、みんなしてダルそうなのだが、その辺は如何なものなのか・・・ああ、気になる。

「そんなに気になるなら、とりあえず1回やってみりゃいいじゃん」と云われてしまいそうだが、自分でもそう思ったので、昨年5月、アムステルダムでためしてみた。
しかし、何の感動も起こらなかった。吸い方に問題があったのか、警戒していたせいなのか、いずれにせよ、ダメだった。つまり、”きまった”状態を体験できなかったのである。それ以来、一度もやってない。
とか云いつつ、ペルーで高山病に悩まされていたわたしは、「コカの葉を噛むと頭がスッキリする」と聞いてコカの葉を大量に買い込み、またコカの葉キャンディーも買って、繰り返し噛んだり舐めたりして、さながらコカ(イン)中毒者のようであった(笑)。実は、これできまっちゃう人もいるようなので、もしかすると頭がスッキリするどころか、どこか遠くの世界に行ってしまうのでは・・・と心配半分、好奇心半分だったのだが、まったくそんなことはなかった(そして高山病も治らなかった)。

ちなみに、この”きまった”という用語にも、初めて聞いたときは大いに疑問と云うか違和感を感じた。
きまった、というとどうも、キザな勘違い男がカッコつけて「ふっ、きまったぜ・・・」と云っている様子(今時そんなことを云うやつがいるとは思えないけど・・・)を思い浮かべてしまうのだ。実際、ドラッグの”きまった”は、「ふっ、きまったぜ・・・」の”きまった”と根元は同じであるはずなので、ああ、何て恥ずかしい言葉なのだろう・・・と困惑させられる。
しかしそれも、今まで100回以上耳にしたせいか、もうどうでもよくなった。

ドラッグは通常、何人かで回し飲みするのが一般的なやり方である、ようだ
安宿の一室に集まり、輪になって吸う(アムスのコーヒーショップの場合はテーブルを囲んで)。
わたしはこの風習も今ひとつピンと来ない。先述したように、みんなダルそうだし、少なくとも見た目には何が楽しいのか分からない。別に一人で細々と吸っていてもよさそうなものだが、みんなで吸うと、祭り的な一体感でもあるのだろうか。
この辺のことを、やはりガンジャ愛好者の某くんに尋ねると「人がいた方が安心して吸える」とのことだった。ふーん、そういうものなのね、とそのときは納得しつつも、やはり?はぬぐえない。

わたしは多分、ドラッグというものを、必要以上に大げさに考えているのだと思う。
”法律で禁止されているから、やってはいけない”という概念を、頭から信じているわけではないのだが、どうしても軽い拒否反応を起こしてしまう。身体が受けつけないとか、そういう話ではなくてだ。
ダウンタウンの松ちゃんが「ドラッグが悪いとは云わないけれど、ドラッグをやってるやつの作品は認めない。たとえ作品を作っていたときにやってなかったとしても」みたいなことを『遺書』の中で書いていた。
わたしの感じる違和感も、多分そういうものだと思う。
それにわたしは、ドラッグはやらない代わりに、毎日見る夢がどうにも奇妙で、しかもときどき夢の方がリアルな現実世界に思えたりするので、別に必要もないかなという気はする。河合隼雄いうところの”個人的な祝祭”を夢の中で行っているので、わざわざドラッグで幻覚を見なくてもいいわけだ。

と云いながらも、やはり未知なるものへの好奇心を、完全に放棄することはできない。
旅が常にそうであるように、何か新しいもの、新しい世界を見てみたいという気持ちは、ドラッグに対しても例外ではなく持っている。
例えば、このHPにも登場するある男性は、筋金入りのドラッグ好きだ。
ドラッグ好きというのは、文字通り、ドラッグ全般である。多分、ソフト・ハードに関わらず全般的に試しているはずだ。覚せい剤もやったことがあるのではないだろうか。
彼の話を聞いていると、違和感を通り越して、宇宙世界の話ではなかろうかと思うほどなので、かえって素直に聞けてしまう。だからと云って、じゃオレも一丁・・・というわけにはいかないが。

まあとにかく云えるのは、ドラッグをやってないというのがコンプレックスにすらなりかねないほど、バックパッカーの間では蔓延しているということで、たまたま宿のメンバーがボン好きだったりすると、わたしは疎外感を覚えてしょうがない。こんなことで疎外感などと、まったくバカバカしいのだが、タガを外して楽しめない自分というのが、ダメな存在のような気がしてならないのだ。
しかし、そんなとき、わたしはふとある出来事を思い出す。

それはジンバブエでの一コマだ。
日本人宿というのは、えてしてドラッグが蔓延していることが多い(もちろん、バックパッカーズなども同様)。ハラレの「パームロックヴィラ」も例外ではなかった。
隣の宿に泊っていたわたしやI さん、Uくんたちは、ときどきパームロックに遊びに行っていたのだが、ある日のこと、宿の一室で、宿泊者たちはおそらくいつものようにガンジャを回していた。その内、Uくんのところに回って来たのだが、Uくんは、珍しく吸わない人である。それもかなり強固に。彼はきっぱりすぎるほどきっぱりと云った。
「あ、僕はやらないです。」
あまりにはっきり云うので、一瞬場が白けた(ような気がした)。しかし、とっくにきまっちゃっている(?)周りは、
「そんなこと云わずにいっぺんやってみなよー、本といいからさー」と面白半分に吸わせようとするのだが、Uくんはなおも頑なに、
「いや、僕本っ当にやらないんで。タバコも吸わないし、本とこういうの一切ダメなんですよ」と断りを重ねる。
まあまあそんなこと云わずにさー、いや本と勘弁して下さい、あそう?でもオレもタバコはやんないけどこれはいいよー・・・といったやり取りが5分くらい続いたあと、見事にUくんは己の態度を貫き通したのである。

はっきり云って、Uくんの態度は、かなりカッコ悪かった。周りは明らかにおもしろがっていたし、ドラッグをやらないわたしからしてみれば、バカにされているとすら思えた。
でも、そのダサさをあくまで貫き通す姿に、ちょっと感動したのも事実である。

わたしのところにもこの後回ってきたが、Uくんの回でひとしきり盛り上がったので、いえわたしは、と軽く云っただけで流してもらえた。もしわたしが、強固にすすめられた場合、一体どんな態度をとっていただろう?わたしも同じように、ダサく断っていただろうか。それとも・・・。

いっそのこと、わが国でも解禁にしてくれれば、わたしもこんなくだらない悩みを抱くこともなく、マリファナ好きのみなさんも大喜びすること請け合いなのだが、と思う。
法律で禁止されているとは云え、アンダーグラウンドではとっくに出回りまくっているのだし、アンダーグラウンドではびこらせるからこそ、余計にいかがわしくなってしまうのだ。タバコより身体に害がない、というマリファナ愛好家の意見はさておき、白日のもとにさらしてしまえば、案外どうということもないものかも知れない。

しかしそうなると、楽しくないのかもな・・・。
”やってはいけない”ことをやるのが、楽しいんだもんなきっと・・・。

わたしにとってはとにかく罪深く、謎に満ちた、頭文字”D”なのである。

(2003年7月)


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