(※これは、高校時代の友人に宛てて書いたものです。と云っても、彼女に出したのはこれをかなり省略した絵葉書ですけど…。何か、最後の気分というものをダイレクトに表すには、手紙形式がよいのではないかと思って、あえてこのようなかたちに残しました。いずれ、旅行記でちゃんとしたかたちにまとめるつもりですが、とりあえず、これをアップさせて下さいな。)


○○、お元気ですか?
こうやって、旅先から手紙を書くのも、これが最後です。

いやいや、長かった(笑)。3年と5ヶ月の旅!信じられるか?
20代後半ってのは、人生の大切な時期―多分普通は、結婚したり出産したり、仕事にしてもそうやど、将来への礎を築くための時期だと思うねんな。
それを、わたしは完全に遊び暮らしてしまったワケやね。やるね、われながら(笑)。
「アリとキリギリス」のキリギリスも、ドラクエの遊び人も真っ青やね。○○と机を並べて受験勉強していたあの頃には(勉強してたか?)、1ミリ足りとも予想しなかった未来やね。
片やあんたの方は、大学時代からつきあってる男とめでたくゴールインして、子供も産んで、着実に堅実に人生を歩んでおるというのに…。
わたしもせめて、家庭は持っていなくとも、バリバリ働いているハズやってんけどなあ(苦笑)。

さて…帰ったら、厳しくせちがらく多分つまらない現実というものが待っているワケですな。
まあ、遊び暮らしたツケは払わなアカンのやろうけど。。。ああ、イヤや。働きたくない(笑)。
あまりにも日本社会に馴染めなくて、引きこもりに…なるくらいならまだいいけど、思い余って自殺したりしたらどうしよう…自殺しそうになったら、一応止めてな(笑)。
ああー、怖いなー。普通の日本人って、どんな人たちやったっけ?普通の日本人女子って、みんな色が白そうやね…。ちなみにわたしは今、誰からもアフリカ人と間違われる。ウソやけど、とりあえず間違いなく黒い。
バレー部のみんなにも久々に会いたいけど、白い目で見られそう…「何やってたん?」とか云われそう…話、合うんやろか…。

しかしだね、こうやって世界中を、あてもなくさまよい歩いて、カメラ片手に観光していたこと自体は、全然後悔してないのよ。
そりゃあ、トラブルも色々とあったし、何か語学とか技術を身に付けたワケでもないし、ウルルンでもないし、やり残したこともいっぱいあるし、まあ優秀な旅(ってどんな旅やろ)とは云い難いけども、とりあえず、今この終わりのときに思うのは、何やかんやでけっこう楽しかったな、ってこと。
普段は、「楽しかったら何でもいい」っていう考え方には疑問を感じるねんけど、でもやっぱ、楽しいってことは大事やね。楽しいってことは、生きててよかったと思うことと、ほぼ同義語やと思うし。
いや、”楽しかったらいい”と云うよりは、”後悔してなかったらいい”というのが正しいかな。

まあな、結果的には何ーーーーーんにも残ってないけどな(苦笑)。
強いて云えば、ホームページが一応、目に見えるものとして残ってはいるけれども、まあこんなもん、ただの自己満足やからなあ…。一銭にもなってへんし(笑)。むしろ、ホームページのせいで金かかっとるんとちゃうか。パソコン代とか、ネット代とか。

でも…ホームページを残してしまったというのは、ある意味で”逃げ”かなと思ったりもするよ。
本当は、完全に無目的で無生産なことをやりたかった。
ただ観光する。ただ食べる。ただ歩く。ただ話す。ただの放浪がしたかった。
その理由は…何やろね。常に目的に向かって前進するということがよしとされている社会で育って、自分もそう思って今まで生きてきた。その流れに反したことをやってみたかったのかもな。
でも結局は、その社会にまた戻っていくワケや。戻れるかどうかは知らんけど。

旅の理由は、今でもよう分からん。あるにはあるけど、他人に分かってもらえるような明確なものは、何もない。
でも、それをやりたいという衝動だけは確実なもので、今でもまだ持ってる。また旅に出てもいいとさえ思ってる。これはもう、理由の問題ではなく、性なのかも知れん。

残ってないと云えば、金も、あと5000円くらいしかないで(笑)。
みやげ買うどころやあらへんわ。最後せっかく、買い物天国の香港やのになあ。しかもバーゲン中やのになあ。ほんま残念や。プラダのバッグとか欲しかったわ(ウソ)。
香港は何でもアリで、楽しいね。街にパワーがあるし、色んなものがミックスされてて楽しいよ。人のエネルギーが渦巻いているところが好きやから(疲れるけどな)、最後をここに選んでよかったと思う。ダイヤモンドをちりばめたように光る夜の高層ビル群を見たとき、涙が出そうになったよ。
とか云って、大半は隣の深センで人の世話になってて、あんまり香港にはおらんかったけど…。

ほんまは、これまでの旅を総括すべく、あれこれとものを思わんとアカンのやろうけど、今はあんまり、大したこと考えられへんわ。困ったな。
だいたい、総括ったってなあ…何やろ?何を総括すればええのやろ?
何となく全部が幻のような気もするし。
日本に帰ったら、もっとそういう思いが強くなりそうやな。
「何やあたし、夢でも見てたんとちゃうか?」って。

3年も旅してるって云ったら、当たり前やけどほとんどの人は驚いて「長いですねー」って云うよ。そらそーか。アカン、麻痺しとるなー…。
確かに…客観的に見たら長い(長すぎる)ねんけど、自分では長かった感じがせえへんのよ、これが…不思議なことに。
でも、日本を出たのがつい昨日のことみたい、とも思わんけど。あのとき自分が25歳やったなんて、信じられへんもん。あと1ヶ月で29歳やで!(あんたはすでに29歳か)何それ?どういうこと?(笑)
”長かったような短かったような”って、エラい陳腐な云い方やけど、そんな感じ。時間軸がねじくれているような、どっかからどっかまでを飛ばしてるような…。旅の時間って、あんまり直線的な感じがせえへんの。ヘンな感じやで、ほんま。

今こうやってパソコンを叩いていると、もうすぐ日本に帰るなんて、想像もつかんよ。
明日も明後日も明々後日も、ここにいて、キーボードを打っているような気がする。明日も明後日も明々後日も、旅が続いていくような気がする。そんで、キリのいいところでここを出て、またどっかでぶらぶらとさまよい歩いているような気がする。

でも、あと3日後には、確実に日本。自分の家におるんやね。
こんだけ長いこと外に出てても、やっぱり25年暮らしてきたというのはデカイと思う。だって、ありありと自分の家とその周辺の光景が浮かんでくるもん。世界のどの町、わたしが今までに訪れたどの場所よりも鮮明にな。

たとえば自分の部屋を思い出す。
白木の勉強机。でかい本棚。ピンクのカバーの布団。壁には昔の旅行で買ったエジプトのパピルスが貼ってあって、UFOキャッチャーで取りまくった競走馬のぬいぐるみがいっぱい置いてあって、いまだに就職活動の名残の資料が山積みになってて(何でやねん)・・・。
そして、そこにいる自分というのも、鮮明に見えてくる。しばらくは、マンガを読み漁ったり、パソコンを叩いたり、旅のみやげ物を眺めたりしているであろう自分が。
ああ、何だそりゃ…。今からゲンナリ。何やったんやろう、今までのこの3年5ヶ月ってのは。

いや、それでもまだ、今は、今だけは海外にいるんやな…何てありがたい、今の一瞬一瞬。
たとえ部屋でパソコンを叩いていようとも、今は海外におるわけ。海外の空気を吸ってるわけ。外の喧騒からはまだ中国語が聞こえてくるわけ。
ああ、ええね、海外。ステキな響きやね。今さら何を云うてんの。
何か、死にゆく人の気分やね…と思ったら、そうか、旅人としてはもう死んでしまうんやなあ…。

ま、とりあえず、帰ります。27日の便で。香港から。
帰りたくないのはやまやまやけど、ヒコーキが落ちてあの世に行ってしまうのはかなわんからのー。あの世に行くよりは、日本に帰った方が楽しいはずや。寿司も食えるし、マンガも読めるし。

ほなまた、近々に息子の顔でも見に行くわな。

2005年8月24日、中国・深センにて

 

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