ゲイ術手帖其の九

「キャプテン翼」(前編)(『キャプテン翼』全37巻 『新キャプテン翼』全18巻 高橋陽一、集英社刊)


 久しぶりに更新したと思ったら、何故「キャプつば」? と不審に思われる方もいらっしゃるでしょう(しかも前後編だ)。一体あの健全さをまさに絵に描いたような熱血サッカー漫画のどこが"ゲイ術"なのか?……ごもっともでございます。しかし、別にネタ切れで苦しまぎれに選んだわけではないのです。

 この作品を選んだ背景を話すと実にややこしいのですが、その昔、10年以上前でしょうか、『キャプテン翼(以下C翼)』や『聖闘士星矢(以下S星矢)』といった少年漫画をパロった、アニパロ(アニメパロディ)ブームが巻き起こりました。そのパロディというのも、単なるパロディではなく、例えば翼くんと岬くんの淡いラブストーリーであったり、星矢と紫龍のハードなエッチものであったりと、登場人物(すべて男)同士のカップルを軸に展開される物語だったのです。
 実は"やおい"というのはこの時期のアニパロから始まったようでして、自分たちの作品は所詮パロディである、という卑下の気持ちから自身の漫画や小説を「ヤマなし、オチなし、イミなし」であると位置づけたことが発端でした。それが徐々に意味の変遷をたどり、「(美)男同士のラブストーリー作品」がすなわち"やおい"となった模様です。このページのリード文の「やおい少女であるわたくし……」という下りが理解できなかった方、今頃の説明になって大変恐縮ですが、やおいとはそのような意味であり、やおい少女とはやおい作品を愛好したり、作ったりする女性のことを表しているのでした。

 さて、C翼です。そもそもやおいの歴史はこの作品から始まったと云っても過言ではないでしょう。当時やおいをやっていた人たちのほとんどが、C翼(もしくはS星矢)を通過しているのではないでしょうか。『源氏』『アーシアン』の高河ゆんや、「ゲイ術手帖其の伍」で紹介した『絶愛』の尾崎南などはその代表的な存在と云えます。アニパロ界におけるC翼ブームの頃、わたしはまだ小学生だったので、やおいの存在など知る由もありませんでしたが、何故だかC翼にはハマっておりました(S星矢にもハマっていた)。幼少のみぎりからこういう世界が好きだったのですねえ。困ったもんです。次回はいよいよ、C翼におけるやおいの実態に迫りたいと思います(何のこっちゃ)。


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