ゲイ術手帖其の七

「モーリス」(映画鑑賞編)(1987年イギリス/監督=ジェームズ・アイヴォリー、出演=ジェームズ・ウィルビー、ヒュー・グラント、ルパート・グレイヴス)


 以上のことを踏まえた上で、やおい的・耽美的視点からこの作品(映画の方)を鑑賞することにはやぶさかではない。かく云うわたしだって、モーリスとアレックのベッドシーンは100回くらいテープを巻戻して見たクチである(やっぱヘンタイなのか?)。今見ると結構赤面 してしまうけど、初めの頃はものすごいエロスを感じた。いや、そんなにハードではないのだが、何しろ二人とも美形なのでゾクゾクするほど色っぽいのだ。

 わたしはアレック役のルパート・グレイヴス君が好きで、一時期は本気でハマっていた。彼のチ○チンを見たいがために(失礼)、友達を引き連れて無修正版の『モーリス』を観に行ったこともある(結局日にちを間違えて見られなかったのだが)。小犬のように無邪気で、なのに色っぽい茶色の目! 背が低いのが難点と云えば難点だけど、そこがいつまでも少年らしくて素敵。彼を知っている人は少ないと思うので説明すると、『眺めのいい部屋』で主人公ヘレナ・ボナム・カーターのかわいい弟や、『ダメージ』で、親父のジェレミー・アイアンズに恋人であるジュリエット・ビノシュを奪われた上事故死するというかわいそうな青年を演じていた人である。
 モーリス役のジェームズ・ウィルビーは眉毛まで金髪というプラチナブロンドの美男子で、クライブ役のヒュー・グラントに比べると地味だが、まさに英国紳士そのものといった風貌の持主だ。背が高くて顔が小さいのでスーツがめちゃくちゃ似合う。クリケット用のクリーム色の服を着た時なんて、もはや絵本から出てきた白馬の王子様である。そして今や世界的スターとなったヒュー様。何であんなにしわしわになってからブレイクしたのだろーか!? 『モーリス』の頃は美青年の頭に”ザ”を入れたいくらいの、ギリシャ彫刻のような美形だったのに。最も、タレ目の嫌いなわたしはそれほど魅力は感じなかった。しかしまあ、主役3人をぱっと見て誰が美青年かと問えば、ほとんどの人が彼を選ぶであろう。

 とこのよーに、「モーリス」は美青年の宝庫でもある。こんなキャスティングでやおい少女たちが騒がないわけはない。しかし、いかにもゲイ好きの女が好みそうな映画、なんていう批評はつくづく的が外れていると云わざるをえない。そのような人は、単に映画鑑賞能力が乏しいだけである。これから観る人には暖かい目で、より深く鑑賞してほしい。原作を読むと感動倍増間違いない。
 ところで、『モーリス』に命を捧げていたわたしは友人たちに熱心なる布教活動を行ったが、彼らは目が腐っているのか、良いと云ってくれた人はごくごくわずかだった。みんな友達じゃない、と思った(向こうからお断り?)。


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