旅先風信92「メキシコ」


先風信 vol.92

 


 

**死者の日**

 

11月1日は何の日?
それは、前に勤めていた会社の後輩Kくんの誕生日であり、メキシコシティのペンション・アミーゴで知り合ったKくんの誕生日でもあり…しかしその正体は、「死者の日」

前々から少しずつ書いてあるように、わたしはこの「死者の日」の祭りを見たい!というかねてからの願望を叶えるべく、南米旅行を切り上げて、わざわざメキシコまで飛んで来たのです。
簡単に説明しますと、「死者の日」とは、日本で云うところの”お盆”のこと。つまり、死者がこの世に帰って来る日というわけですね。メキシコでは、ガイコツのフィギュアを墓前に飾り、魔女や死神などの仮装をして死者をお迎えする慣わしになっており、メキシコシティの市場では、死者の日グッズが山盛り売られていました(前回の風信を参照してね)。
骸骨、魔女、死神、仮装…嗚呼、なんて素敵な(いや、不気味な)響きなのでしょう!別にわたし、死体マニアとかオカルトおたくではないけれど、この辺のキーワードって、妙に乙女心をくすぐるんですよねー。どうですか、全国250万乙女(@『りぼん』)のみなさん?
ハロウィーンと日が近いためか、一緒くたに考えられている様子で、かぼちゃグッズもたくさん置いてありました。一応関係あるんだろうか…?

店頭に並ぶガイコツさん。ギタリストになってます(笑)。

死者の日の祭りは、メキシコ全土で行われるようですが、元・ドイツ留学生で乙女仲間のKさん情報によると「オアハカが一番盛り上がる」とのこと、11月1日はぜひオアハカで仮装行列を見ようというのがわたしの壮大な計画です。
そこに、ちょうどメキシコ入りしていた「世界一周デート」の吉田夫婦、そして「三十路夫婦の世界放浪」の野村夫婦が合流することになり、どうやらにぎやかになりそうな気配です。

ひと足先にオアハカ入りしていた吉田夫婦とは、ケニア以来、実に8ヶ月ぶりの再会です。
2人の動向はHPでチェックしていたし、メールもやり取りしていたけれど、じかに会うというのは、何とも云えない感慨があります。
2人の元気そうな、そしてあんまり変わっていない(笑)姿を見て、何だかとってもうれしくなってしまいました。ああ、旅友っていいもんだなあ。だって、初めて来る外国の地で、友達に会えるなんてことは、普通はないワケです。日本からわざわざ会いに来てくれるような友情に厚い&ヒマな友人もいないしさ。でも、旅友ならこれが意外と実現してしまうのです。見知らぬ街で、見知った人に会えるこの心強さ。持つべきものは旅友達。

一方、三十路夫婦こと野村夫婦とは、初対面です(正確には、シティのもう1つの日本人宿「サンフェルナンド」で旦那さんとは少しだけお会いしているのですが)。
旅に出てからは、友人知人以外の旅サイトを見たことがなかったので、実は野村夫婦のサイトも知りませんでした。
しかし、吉田夫婦から、「オアハカでは、
野村夫婦っていう、HP持っているご夫婦も合流するよん」と聞いていたので、オアハカ入りする前に、勉強がてら覗いてみました。
…したらさあ、すんげー完成度の高いHPでやんの!!!
吉田夫婦んとこがすごいのは知ってたけど…世の中には他にも優秀な旅サイトがあるのだな…。自分のHPをまた閉鎖したくなっちまった(涙)。

というわけで、夫婦2組+独身女1名という、何となくバランスの悪いっつうか、独身女さみしっ!という(苦笑)メンバー構成で、お祭りの日を迎えることになりました。

死者の日を控えたオアハカの街では、色んなところでガイコツに出くわします。
お店の2階の窓からガイコツがこんにちは!していたり、路上の絵画売りがガイコツの絵を売っていたり、民家の軒先にはガイコツの切り絵が暖簾のように吊られていたり…。
一般家庭の玄関を覗けば、チープでデコラティブなお飾り満載の祭壇がででーん!と置かれていて、これまた可愛いったらありゃしないのよ。だって、お供えのパンとか果物の中にガイコツフィギュアがぽこぽこ居たりするんだもんね(笑)。

鼻血ものの可愛さ!な祭壇。

さて、話は少々さかのぼり、わたしは、メキシコシティのソノーラ市場にて、仮装行列のために死神の衣装なるものを、しっかりちゃっかり、購入していました。
しかも何故か、ルチャ・リブレ(プロレス)を観に行った帰り、浮かれてレスラーマスクを購入しているので(50ペソ)、これもぜひとも死者の日に活用させたいところです。
お祭り人間な妻・エリさんにわたしの仮装セットをやや自慢げに披露すると、「わたしたちも仮装するっ!」と俄然張り切り、早速夫の友和さんと3人で、オアハカで一番大きなメルカド、アバストス市場に行くことに。

市場では、ガイコツの砂糖菓子や、墓前に飾るためのガイコツの置物(紙粘土製)が、大小さまざま、実にバラエティ豊富に売られています。
もうね、ガイコツのバリエーションが凄すぎてテンション上がりまくりです。ギター弾いているやつとか、診療台で治療を受けているやつとか、結婚式挙げているカップルとか、お葬式に参列しているやつとか(あんたが死んでるだろっ!)……ガイコツ、何か普通に生活していますが(笑)。

OAXACA40.JPG - 61,929BYTES あああううう、可愛すぎる…。

ガイコツにいちいちトキめいている(というか、物欲をそそられている)わたしをよそに、吉田夫婦は、仮装用グッズを真剣に物色。しかし、ソノーラ市場に比べると、品数も少なく、値段も高いようです。わたしの衣装は、死神のワンピース(って云うのかこれ?ドラクエの呪いのアイテムみたいだな)+付属のマスクと手袋で、しめて90ペソだったのですが、同じようなものが、ここでは2倍近くしています。
「ちょっと高いよねえ…それに、これ!っていうのもないし…」と悩む吉田夫婦。確かにまあ、1回こっきりしか着ない、しかもナイロンで作られたぺらぺらの衣装に、1000円以上は出せないか…。そりゃ、日本にいれば激安だけど(「LOFT」だったら、軽く3000〜5000円はするよね?)、旅の間の1000円は大金だからねえ。
でも、わたしだけ仮装ってのも何かさみしーな…と思っていたら、エリさんは急にこう云い出しました。
「そうだ!黒いゴミ袋を使って、死神っぽい衣装にできないかな?とりあえず骸骨のお面だけは買って、衣装はゴミ袋でごまかす!(笑)」

OAXACA30.JPG - 57,415BYTES 山盛り売られている仮装のお面。

そこからのエリさんの行動は早く、さくっとゴミ袋とお面を買った後、部屋にこもって衣装を作り始めました。そして、野村夫婦たちともども夕食を食べに行く前になって、
「どう?けっこうイケてない?」
と、2人してガイコツマスク+ゴミ袋衣装で登場。野村夫婦もわたしも「おおっ!」と唸るくらい、それはそれはよく出来ていました。いやはや、器用なもんですね〜。
わたしなんて、全部で140ペソ(1400円)もかかっているのに、多分マスク代を入れても50ペソ’(500円)くらい?しかかかっていない吉田夫婦の方が、全然イケているのはどういうことなのかしら〜?(泣)

死者の日前夜は、ホホコトランというオアハカ近郊の村へ、吉田夫婦+野村夫婦+わたしの5人で出かけて行きました。
ここに何があるのかというと、お墓です(笑)。お墓と云ってもただのお墓ではなく…いや、やっぱりただの共同墓地なんですが、死者の日のために、地元民たちがそれぞれの先祖の墓参りに来ているのです。
…と書くと、実に地味なイベントだと思うでしょ?しかも、それをわざわざバスに乗って見に来たわたしたちって一体…って思うでしょ?でも、ホホコトランは、数ある共同墓地の中でも、とりわけ美しい”死者の夜”が見られるという話なのです。

共同墓地は、祭りらしくにぎわっていました。墓地がにぎわっているっていうのがいいよねえ(笑)。
暗闇の中、オレンジ色のキャンドルの光が夢のように浮かび上がり、それぞれのお墓の周りに、親類縁者たちが集まって祈りを捧げています。幻想的で、心がしんとなるような光景です。でも、暗い感じはあまりしません。ただ素朴な美しさだけがあるのみです。
もともと、カトリックのお墓ってのは乙女チックなテイストなのですが、今晩は何とその上に、美しく配置されたお花とキャンドル、市場に並んでいたガイコツのフィギュアたちが飾られていて、んもう乙女テイストてんこもり!号泣ものの可愛さなのよ!可愛さは爆発だ!(意味不明)

お墓の飾りつけは、家ごとにさまざまで、本と見ていて飽きません。花飾りがメインだったり、色んなガイコツが並んでいたり、提灯のようなものが飾られていたり…まるで”墓デコレーション作品展”な様相を呈しています。観光客とは云え、お墓の写真を撮るのには若干ためらいもありますが、お墓の持ち主たちは、全員ではないにしろ、「どうぞどうぞ!」と、まるで自慢の一品を見せるような感じで撮らせてくれました。いやはや、明るい!
日本のお盆&お墓も、こんなだったらいいのにな…。そしたらわたしも、張り切って朝からお墓の飾りつけに励むけどなあ。

力作!のデコレーション。

翌朝、つまり死者の日の朝がやって来ました。
エリさんとわたしは、それぞれの衣装を着用し、まるでとってもはりきっている人たちのように(笑)、午前中から街に繰り出しました。
いうのも、死者の日のスケジュールというのが、今日の今になっても、よく分からないのです。昨日も、一応死者の日に含まれていると云えばそうみたいだし…。
でも、メインイベントの仮装行列が、今日であることは間違いなさそうなのです。しかし、いったい何時から?もしかしたらもう始まっているかも?…それを確認する意味で、外に出てみたのですが…。
「あれ…何か、普通の朝だよね…」
もちろん、街の飾りつけなどは死者の日だけど…いや、それは昨日と同じやん!
旅行者らしく、インフォメーションに行って尋ねるも、「うーん…夕方くらいだね」と、実にはっきりしない答えが。さすが、ラテンの国はいい加減です。
この後、オアハカで一番大きな共同墓地にもわざわざ足を運んだのですが、特に何も起こっていませんでした。どうやら、昼間は大したイベントはなさそうです。というわけで、それぞれ午後は思い思いに過ごし、夕方のパレードで再集合ということになりました。

OAXACA69.JPG - 54,470BYTES エリさん(左)とわたし。白日の元で見ると実に怪しすぎる…。

日が暮れた6時頃、ようやく仮装行列の一団がソカロ周辺を埋め始めました。
竹馬に乗った長身のガイコツ集団が、人込みの中心でひときわ目を引きます。紫のサテンのドレスに身を包んだガイコツや、ウエディング用のベールをかぶったガイコツ、デスメタル&ゴス系コスプレの人々…etcが、メランコリックでどこか怪しげな音楽に合わせて、竹馬の上で器用にステップを踏みます。いよいよお祭りの始まり! 吉田夫婦・野村夫婦・わたしも、パレードに混じって歩きます。
サント・ドミンゴ教会の裏手に行くと、特設会場が設けられ、踊りだか演劇だかのパフォーマンスが行われていました。 びっしり埋め尽くされた観客の3分の1くらいは、ガイコツの仮装に身を包んでいます。そしてわたしは、素敵なガイコツコスプレを、目を皿にして探すのです。

パレードの喧騒のさ中、ふと、どちらかの夫婦の誰かが、
「野ぎくちゃん、写真撮ってくれない?」
と云って、わたしは夫婦2組の写真を撮りました。この何でもない行為に、わたしは急に、心の底の方に針穴のような小さな穴が空いて、そこからすうっとすきま風が吹き込むような思いに囚われてしまったのです。
”わたしは半端ものだなあ…。”
おそろいのゴミ袋の衣装で、手を取り合って踊る吉田夫婦。 三十路っぽく(?)、控えめに手をつないでゆっくりと歩く野村夫婦。 ジグゾーパズルのようにぴったりと合った2組の夫婦に比べて、わたしの身は、何と頼りないのだろう。わたしは、家具か何かの下に入り込んで見つけられなくなった、パズルの1ピースのようじゃないか?

旅の間、何度も何度も何度も何度も…カップルとか夫婦がうらやましかった。
つらいときはもちろん、素敵なものを見て感動するときも、「自分の大事な人がそばにいてくれたらどんなにいいだろう」と思うことが、何度もあった。
そんなもの、1人旅に出た時点であきらめるべきものだし、欲張りなので感動は自分1人占めにしておきたいことも多いし、別に、基本的には1人で楽しいのだけど…。
わたしは、いつまで1人でい(られ)るのだろう。もしかしたら一生、誰かと何かを分かち合うことなく、生きていくのかも知れないな…。

パレードの一団。

…はっ、またそんな辛気臭いことを…。 しかもこの、楽しい祭りの真っ最中に…。
いや、孤独というのは、こういう雑踏や喧騒の中で不意にに襲ってくるものかも知れないが…って、ええい、んなこたあどうでもいいだろーが!
こういうことに囚われて、せっかくの時間を台無しにしてしまうのは、わたしのよくないクセだ。今は祭りのことだけを考えて、楽しもうではないか。

妖しげなメロディは続き、仮装行列は前進します。
ソカロから出たときはまばらだったパレードも、街の人を巻き込んで、どんどん増殖していきます。
周りをぐるっと見渡せば、フォトジェニックな仮装に身を包んだ地元民たちが、軽やかなステップを踏んでいます。いやー、壮観ですね。仮装って素敵だわあ。やっぱこういう祭りは、仮装してナンボです。同じアホなら仮装せにゃ損損。仮装していない人を見ると、「こら!ちゃんとガイコツになりなさい!」と説教したくなる(笑)。
わたしの中のベスト仮装は、三つ編み+ガイコツマスク+オアハカの民族衣装(花柄)、という組み合わせのおねえさん(いや、もしかするとおにいさんかも…)2人組。この、気合入っているんだろうけど、ヨユーな遊び心を感じる仮装に悩殺されました。

OAXACA85.JPG - 43,501BYTES 民族衣装とガイコツのお面という、絶妙にキュートなコーディネートの2人。

それに対して、気合が空回りしまくっている、わたしの仮装…。
何でこんな中途半端な仮装にしたんだ…一体何を表現したいんだ…ガイコツでもないし…。
レスラーマスクなんかやめて、大人しく付属のガイコツの被り物にしておけばよかった…もしくは、思い切って身体ごとレスラーにすべきだった…(いや、それはワイセツか…)。
いつ何時でも、服装が決まらないと何となく憂鬱な気分になっちまうものです。仮装も然り。
わたしも、カンペキな扮装を心がけるべきだった…吉田夫婦なんて、あの低コストで見事な扮装で、地元人にも「ステキ!」とか云われてたもんな…。
ていうか、このマスクも、もっとオーソドックスなマスクにすればよかったのに、何か微妙なんだよな…変に口元が開いていて、素顔が中途半端に見えてるしさあ…。

…っと、またネガティブな方向に思考が…いかんいかん(苦笑)。

パレードの終着は、サンミゲル共同墓地です。うん、いいねえ、お墓に向かって歩くパレード。ゴールは墓参りなんですよねえ(笑)。
墓地は、昨日のホホコトランのそれよりも人でごったがえし、墓地の外周には、当てもの屋台や小さな移動遊園地が立て込んでいます。ああ、この、妖しい童話の世界のような雰囲気…くらくら…。
墓地内では、死者の日アートとも云うべき、花びらを敷き詰めて作られたとりどりのガイコツの絵が地面に並べられています。これがまた、けっこうな力作なのよね。
壁面には、壁をくりぬいて作られたお墓がまるでマンションの部屋のように並び、そのひとつひとつにキャンドルが点っています。その小さなオレンジの灯は、人でごった返す墓地を優しく控えめに照らしています。

キャンドル幻想。

日本だと、お盆=お祭り、ではないですよね。お盆はもっと厳かで静かなイベントじゃないですか。まあ、地域によって違いはあるでしょうけど…。
でも、メキシコのお盆こと死者の日は、何ていうのかな、死んだ人も一緒に楽しもう!っていうノリ。死んだ人と生きている人の間の境界線が薄い感じがするんですよね。

ガイコツの大胆なデフォルメや、キラキラしたお墓のデコレーションなどを見ていると、メキシコの人々は、死をあまりネガティブに捉えていないのかも?と思います。
だって、普通ガイコツやらお墓やらって、不気味なもんよ?それがここでは、ファンシーなフィギュアになって、歌ったり踊ったり遊園地で遊んだり(笑)しているのよ!
大体、死者の日とは云え、街じゅうがガイコツで埋め尽くされるなんて、痛快すぎます。ドクロをこれだけ好き好んでモチーフにする人たちって、メキシコ人(とその周辺の文化圏の人々)か、デスメタル系のバンドか、ゴスっ子くらいしかいないのでは?(笑)

大事な人の死は重くて悲しいものです。だけど、もっと悲しいのは、死んで忘れられていくことではないかしら?忘れられることもそうだし、忘れていくこともまた…。
だから、こんな風に、死んだ者と生きている者が一緒になって楽しめるお祭り(そりゃ、死者が何と思っているかは知らないけど…)は、とてもとても素敵だと思うのです。
この、ややもすればフザけたガイコツフィギュア(笑)などに、メキシコ人の死に対するポジティブさ(?)、死者に対する暖かい気持ちが表れているように、わたしは思えてなりません。

いやー、それにしても、ガイコツ祭りの名にたがわず、ガイコツ満載なお祭りでした。
そして、メキシコのガイコツたちを見ていると、”ガイコツは可愛い”という、やや間違った確信がますます深められてしまいました(笑)。今後もきっと、ガイコツ好きはやめられないだろうなあ。
VIVA!DIA DE MUERTOS!!!(死者の日万歳!)

(死者の日の写真は、写真館にも載せていますので、ご興味のある方は見てみて下さいまし)

(2003年11月2日 オアハカ)

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