旅先風信79「ブラジル」


先風信 vol.79

 


 

**イライライグアス観光**

 

ザンビアの悪夢再び。前回、入国スタンプなしでブラジルに入国してしまったわたしは、あろうことか警察にしょっ引かれ、尋問に次ぐ尋問の末、何と日本へ強制送還になってしまいました。というわけで、この旅先風信は、今回で終わりです。長らくのご愛顧、ありがとうございました(嗚咽)。

…てなことになってたら笑いますね。いきなり打ち切り(笑)。
実際はそんなことはなく、あの後、バスの切符売りのお姉ちゃんに泣きついて、国境までもう一度バスに乗せてもらい、ちゃんと入国スタンプを押してもらって事なきをえました。そもそも、こんないい加減な国境ってどうかと思うけどな…。
その後、セントロに舞い戻ってユースホステルを探すも、「ユースホステル」という単語が現地人に通じません。スペルなども書いて見せ、さらには勝手にポルトガル語風に(?)ジョウスオスタル、とか云ってみるのですがやはりダメ。何だよ、ジョウスオスタルって…我ながら恥ずかしいわっ!
かくして、セントロ内をさまよい歩くこと30分(もちろんあのクソ重い荷物持ってだよ)、手当たり次第現地人に聞きまくって、ようやくユースが見つかりました。荷物を下ろしたらすぐ腹ごしらえとでも行きたいところでしたが、ブラジルで夜歩きは恐ろしいので(あれこれ強盗話など聞いており、かなりビビっているのです)、大人しくユースのキッチンでラーメン作って食べました。

翌日は早速、イグアスの滝観光です。これをやんなきゃここに来た意味がありません。
世界三大瀑布のひとつ、イグアスの滝は、ブラジルとアルゼンチンの両側から見学できます(パラグアイも一応国境はかぶっているのに滝は見られないそう。可哀想なパラグアイ)。前評判ではアルゼンチン側だけ見ればOKなんて聞いていましたが、まあせっかくなので両側から見ることにしました。
この日はブラジル側からの観光。フォズの町からバスで30分くらいのところに、巨大なビジターセンターが建っています。昨年の情報によると9ヘアルだった入場料が、何と18.9ヘアルと倍以上の値段になっているのには、脱臼しそうになりました。インフレになってるワケでもないのに、この値段の上げ方はちょっとヒドくないか?!
ブツブツ云いながらも大人しくお金を払って、滝見ポイントまでの豪華(?)バスに揺られること20分。下りたすぐ先には、何本もの滝が連なるパノラミックな光景が広がっていました。

ついに来た。イグアスの滝。ビクトリアの滝の写真を全部強盗に持っていかれたわたしは、ここでリベンジを果たす気まんまんだったのです…って、何のリベンジか分かりませんけど、とりあえず写真は撮りまくるぞ!と意気込んで、最初っから飛ばしに飛ばして撮影すること25枚。明日もアルゼンチン側で見るというのに、やりすぎです。

ブラジル側の最大のビューポイントは、「悪魔の喉笛」の全景。悪魔の喉笛とは、数多くの滝から成るイグアスの中で最も激流になっている滝のことです。実は遊歩道を歩きつつ滝を見ながら「うーん、さすがのイグアスの滝も、ビクトリアフォールズにはやや見劣りするかも…」とやや意気消沈気味でしたが(何せあそこは、合羽を着てもびしょぬれになるほどの水量だったのです)、さすがにこのポイントは見応えありました。それにしても、ついつい昔見た何処かと比較してしまうのは、長期旅行者の悪癖ですね。。。

IGUAZ9.JPG - 10,588BYTES 「悪魔の喉笛」にかかる虹。

翌日はアルゼンチン側の観光です。これを済ませたあとは、夜行バスでサンパウロへ向かう予定。我ながら頑張ってますな。
しかし、この観光が思わぬ苦労だったのです。昨日のブラジル側ののんびりかつスムースな観光がウソのように、何事も上手く運ばない。ブラジル側とアルゼンチン側では規模が違う(ブラジル<アルゼンチン)なので仕方ないのですが、それにしても疲れた…。

そもそも入場料が9ペソと聞いていたのが30ペソ(約11ドル)もした時点で終わっていました。
チリに抜ける前、いつになるか分からないイグアス観光のために残しておいた少額のアルゼンチンペソでは全然足りません。しかも、ブラジル通貨は受け付けないとのこと(国境をまたぐ観光地のクセにナメとんのか!)で、仕方なく、虎の子のドル現金で支払うハメに…。ヘアルはダメでドルはOK…ワケ分からん。

いや、終わっていたと云えば、プエルトイグアス(アルゼンチン側の滝観光の拠点の町)→イグアスの滝までのバスが全っ然来なかったことからしてそうだったのです。
もともとバスの本数が少ないのか、しっかりタクシーが待ち構えているのですが、貧乏人はタクシーなんて乗るわけにはいきません。さらっとタクっていくフツーの観光客を尻目に、辛抱強くバスを待ってみるものの…来ない。仮にも世界的な観光地であるイグアスの滝行きのバスが、こんなに少なくていいのでしょうか?わたしと一緒にバスを待っていた数人の旅行者たちも、我慢できずにタクる始末。わたし1人が取り残され、待つこと30分少々…我ながらよくキレずに待ってたもんだ。
その結果、ようやくやって来たバスが、2.8ペソと聞いて膝から崩れそうになりましたよ。だって、タクっても4ペソだったんだもの!(人数頭割りでね)タクシーで4ペソだったらバスは1ペソくらいだろ、と勝手に踏んでいたのですが…バカみたいだ、全く。

そして、いざ滝公園に着いたのはいいのですが、ゲートから滝そのものまでの距離が、また長い。ムダに長い。
観光列車みたいなものが走っていて、それにちんたら揺られながら、最大の見どころである「悪魔の喉笛」まで行くわけですが、こいつが本当にのろい。徒歩の1.2倍のスピードしか出ない。観光列車だから仕方ないとは云っても、あまりにも遅い。でも、大半の観光客は、この30分に1本くらいしか来ない列車をえんえん待って(しかも満員になる)、とろとろと移動するわけです。今日のわたしは、サンパウロ行きの夜行バスに間に合わなくてはいけないという使命を背負っており、ただでさえココロに余裕がないため、はしゃぐ観光客たちを尻目に、列車に揺られている間じゅう般若のような形相を浮かべていました。もう少しで車体にケリを入れるところでした(観光ポリスに逮捕されそうだな)。
こんなシロモノは1回乗れば充分なので、帰りは「悪魔〜」から30分かけて歩いて戻りました。その間、驚くべきことに、列車はわたしを追い越していくどころか、ついにカゲもカタチも姿を現しませんでした。もうちょっと本数増やせ。

まあしかし、イライラしながらもたどり着いた悪魔の喉笛は、ものすごい迫力でした。ブラジル側で喜んでいた自分が恥ずかしくなるほどでした(笑)。
これまたビク滝のように、全身濡れ濡れにはなりませんが、ビク滝と違って、上から下まで見えるので(とは云え下の方は水煙がすごくてぼやけているけど)壮大な眺めです。ビク滝は、ザ・怒涛!てな感じで目の前で滝がゴウゴウ唸っていましたが、こちらの方は引き(広角)で見て迫力を味わう感じでしょうか。
滝壷に落ちていく手前までは、さらさらさら…と静かな小川風に流れていた水が、滝になった途端あの怒涛に変わるというのは本当に驚きますね。アンタら本当に同じ水かよ?!(笑)

A-IGUAZ12.JPG この小川が、数十秒後…↓

A-IGUAZ5.JPG …こうなる。

ここを見たらもう帰ってもよさそうなものですが、30ペソも払ったからには、すべてのビューポイントを押さえなければならないのがわたしの性分(或いは宿命)。
その後も続々と現れるトレイルコースを軒並み歩き倒し、サン・マルティン島にも行き、滝という滝をほぼ手中に収めました。ついでに、滝の近くまで乗り込むボートトリップにも参加しようと思いましたが、これはお金がかかるので却下。
で、全部制覇と思ったら、「上トレイル 35分」の看板が目に飛び込んで来て、「ウソー、まだあったんかよ!」と、帰りのバスに間に合わなくなると思いながらもつい歩き出してしまい、35分のところを何と10分で切り上げ(ほとんど競歩)、なおかつゲートまで走ってプエルトイグアスまでのバスをキャッチという、「もうやめとけよ」と自分で云いたくなるような、終始マゾっぽい観光でした。

結論としては、イグアスの滝は、ビクトリアの滝に迫力の点で負け、パノラマの点で勝ち、と云ったところでしょうかね。

パノラマ勝ち。

公園からプエルトイグアス、そしてフォズ・ド・イグアスまでは実に順調に戻ることが出来、夕方6時と聞いていたサンパウロ行きのバスにも余裕で間に合いそうでした。一時は「もう1泊ここでせなアカンかも…」とあきらめかけていましたが、フォズに5時過ぎに着いた時点で、勝利を確信しました…が、甘かった。

ことは今朝、宿代の支払いの際「釣りがない」と云われ、40ヘアルの釣りの内20ヘアル分を20アルゼンチンペソで渡されたことから始まります。「今からアルゼンチンに行くなら必要だろう」と云われて、まあレートも大体1:1くらいだしいいか、とそのときは納得して受け取りました。が、前述のようにイグアスの滝の入場料は30ペソ、元々持っていた少額のペソと合わせても足りないので、ドル払いした結果、20ペソはまるまる不要になってしまいました。
で、宿のオバサンにその旨話し、レアルで戻してほしいと頼むと、相変わらず20レアルがないと云うのです。ちょっと隣の薬局にでも云って崩してくればよさそうなものですが、何とオバサンはわたしに「近くにカンビオ(両替屋)があるからそこでチェンジして来ればいい」とヌカすではありませんか!一瞬納得しそうになりましたが、すぐに我に返りました。何ゆえわたしがわざわざ両替屋に走らなくてはいけないのでしょうか?釣りがないのはわたしのせいではないのです!

しかし、時間もあまりないので、大人しくカンビオに走ったところ、20アルペソに対しわたしが受け取れるのは19ヘアル!そんなバカな!たかが1ヘアル(50円くらい)と思われるかも知れませんが、釣りがないという宿側の怠慢のせいで、自らカンビオに出向いたあげく1ヘアル損したのではアホらしいにもほどがあるってものです。
すぐさま宿に飛んで帰り、「…というわけなので20ヘアル下さい」と告げると、オバサンは実に渋い顔をしてどこか奥の方から10ヘアル札2枚を出して来ました。…ちゃんとあるやんけ。

そんなことがありつつも、後は長距離バスターミナル行きの市バスを拾うだけになりました。
時刻は5時20分。まだまだ全然余裕…のハズが、待てど暮らせどバスが来ません。ちゃんと何人もの人に確認しているので、バス停が間違っているワケではなさそうなのですが、気がつくとバスに乗れないまま時刻は5時40分を回っていました。隣にいた女性が、明らかにイラ立っているわたしを見て「市バスのターミナルに行った方がバスも多いから」と忠告してくれ、大変ありがたく思いつつも、「もう少し早めに云ってほしかった…」とがっくり。

そのバス停からバスターミナルまでは徒歩10分少々の距離ですが、例の如く重たい荷物を背負っており、尚且つ時間もないというのですっかりブチ切れ、「何でいっつもこうなるのよーーー!」とか「ブラジルムカつくんだよーーー!」とかわめきながらターミナルまで走りました(バカだ)。そしてここでもしばしバスを待つハメになり、さらにバスに乗ってからも、”赤ちゃんが乗ってます”マークの車かよ?!と思うようなのろくさいスピードで3分おきくらいに人を拾いまくるので、悶死寸前までイライラ。…ああっ、もう6時回っちゃったじゃねーかよ!このボケバスめ!

…そのような思いをして、やっとのことでバスターミナルに着き、現在こうして無事にバスに揺られています。
ついでに云えば、サンパウロ行きの夜行バスは6時発ではなく6時45分発で、尚且つ実際の出発は7時30分という、今までのイライラ+ブチギレは何だったのか…と空しくなるような結果と相なりました。
しかし、イライラする1日というのは、最後まで何かあるようです。わたしの隣および前の席に座っているブラジル人4人組が、盛大に喋りまくってたまらんくらいうるさい。ティッシュで耳栓をしても全く効果がないほどうるさい。夜行バスでこんだけ騒ぎまくるアホどもは初めて見ました。さすがブラジル(?)。4人組の紅一点の女の子がやたら香水くさいのも我慢ならない。

必要以上にキレてはいけないとは思うのです。いつも。イライラするだけ損だとも思います。
わたしのように我慢のきかない人間は、強制的に「今月は”キレない月間”にしよう」とか決めて、鷹揚に構える心がけに務めるべきなのかも知れません。1日で反故になりそうですが(苦笑)。
田口ランディじゃないですが、「できればムカつかずに生きたい」(※本のタイトル)ですよホント。しかも、こんな旅に出てまでさ…。でも、でも、とりあえずはこの4人組の口をガムテープでふさぎたい。頼むから静かにしてほしい。

…さすがに1時間我慢して限界が来たので「すみません、眠りたいので静かにして下さい」と頼んだところ、「10時半になったらやめるよ」とかワケ分からん答え。そして、約束の(?)10時半を過ぎてもまだ騒いでおります、この人たちは…。何だか幸先のよくないブラジル旅、これからどうなることやら。

(2003年8月19日 フォズ・ド・イグアス)

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