旅先風信69「チリ」


先風信 vol.69

 


 

**海鮮とワインと読書と怠惰と**

 

はー…今日もいちにちが終わってしまったなあ…(欠伸2回)。

というわけで、この旅43カ国目のチリにやって来ました。43カ国、って書くと何だかすごい数のような気もしますが、大したことないような気もします(どないやねん)。でも、『あいのり』の関ちゃんよりはすごいです。

涙ながらにブエノスアイレスを去り、メンドーサという、ワイナリーで有名なアルゼンチンの町に立ち寄りました。
お酒が弱いかつ味もよく分からないわたしに、ワイナリーなんてほとんどカンケーないのですが、いっちょかみな性格なので、「とりあえず行っとこか」。
で、最大手のロペスというワイナリーに1人で出かけて行きました。
工場に入った瞬間、酒独特の発酵したにおいが鼻をつくと、何だか妙に幸せな気分になり、見学の間、終始犬のように鼻をくんくんしていました。実は酒飲みの素質があるのかしら…お酒は弱いんですけど。
テイスティングもしっかり2杯いただき、さらに見学で一緒になったオーストリア人と次のワイナリーに行きまた1杯。すっかり気分がよくなって、調子に乗って「じゃ、もう1軒行きますか」と云っていたのですが、町に帰るバスが来たので大人しく帰ることにしました。

ところが、このバスの中で、坂を転げ落ちるように気分が悪くなってきました。
さっきまでのハイテンションはどこへやら、今にも口からゲロが飛び出しそうな勢いで、とてもじゃないけど立てそうにありません。顔を前に向けていることすら辛くて、前の座席にイカのようにもたれかかったまま、半分気絶していました。
オーストリア人の彼が「着いたよ」と肩を叩くのも無視して、ずっと座席でうなだれていると…いつの間にかさっきのワイナリーに帰って来とるやんけ!結局2時間くらいバスに乗りっぱなしで、2周くらいしてから町にたどり着きました。
まったく…何故いつも物事が、幸せなままで終わらないのかと哀しくなってしまうわー…。

その晩激しく頭痛に悩まされつつも、翌朝はしっかりチリ行きのバスに乗りました。
このルートでのアルゼンチン⇔チリ国境は、アンデス山脈を越えて行きます。ちょっと早いか?と思いつつも、頭の中では『コンドルが飛んでいく』が流れておりました。
アコンカグアという南米最高峰の山も見られるらしいのですが、山が多すぎてどれだか分かりませんでした。
バスの中でふと目が覚めると、景色が一面の銀世界だったのには驚きました。

すっかり冬景色のアンデス山脈。

チリと云えば、懐かしのフランシスコ君を思い出すのですが、まあそれは置いておくとします。

首都サンチアゴには寄らず、目指すはその先のビーニャ・デル・マールです。
聞きなれない名前ですが、ここは海産物が美味しいことで有名な海岸沿いの町。そして、「汐見荘」という日本人宿があります。

わたしのここでの目的は、まず、イースター島行きのチケットを手配することでした。
偶然にも、汐見荘の宿泊者のほとんどがイースター島に行くというので、情報もあっさり集まり、翌日早速チケットを買いました。往復523ドル。いやー、昔なら「清水の舞台から飛び降りる覚悟で」払っていた金額でしたが、旅も折り返し地点に来て、これくらいではあまり驚かなくなりました。旅の初めに比べてお金は間違いなく減少しているはずなのに…一種の開き直りというやつですね。イラクツアー500ドルでうなだれていた自分が懐かしいわー(笑)。

さて、このチケット、あっさり取れたのはいいのですが、実はなかなかややこしい代物でして、「フライトの1週間前までに予約すると523ドル、1週間を切ると640ドル」という制限のほか、「チリ→イースター島のフライトは水・日のみ」「イースター島→チリのフライトは月・木」「島には5泊以上しなければこの値段は適用されない」などとまあ、算数の問題みたいなチケットなのです。

つまり。水曜日に発てば月曜日のフライトで帰って来ることは可。
しかし、日曜日に発って木曜日のフライトで帰って来ることは不可(理由:4泊しかしていない)。
さらに、わたしの場合、金曜日の晩にビーニャに着いたので、翌日土曜日に手配しなければ1週間を切るので、523ドルは適用されない。
この結果、翌週の日曜日に発ち、島で8泊9日して翌々週の木曜日に帰ってくるという、無意味にロングランな日程を組むハメになってしまいました。モアイと一緒の9日間…何だかシュールだな。

こうなったら、やることはひとつ。…沈没しかないでしょう(笑)。
しかも、今回の場合、フライト待ちという立派な大義名分があるので、沈没しそうな時にそこはかとなく感じる「これでいいのかわたし?」という疑問も解消され、思う存分ぐうたらできるというわけです。
で、とりあえず『沈黙の艦隊』全32巻を読破することにしました。結果、まる2日間が見事に潰れました。でも日本の未来を考えながら読んだので、これはれっきとした勉強なのです(ウソ)。
その後は司馬遼太郎の『竜馬がゆく』全8巻に取り組もうと思ったのですが、出発に間に合いそうにないので却下。替わりに『最後の将軍』を読みました。
さらに、林真理子の『不機嫌な果実』、上温湯隆の『サハラに死す』、ベストセラーになった『金持ち父さん貧乏父さん』、『ドラえもん のび太の創世日記』なども読みました。
…ん?これって旅行記だったような気がしますが、ま、細かいことは置いておくとしましょう。

そうゆうわけで、「これだけ時間があればHPもどんどん更新できるわ!」という初日の目論見はあっさり破れ、出発2日前の今日まで一度もパソコンを開かないというぐうたらぶりでした。ま、どーせこんなページ、いつ更新しようが、誰の財布にも心にも影響なんてしないのさ。相変わらずしょーもないページなのさ(←※今ワイン飲んでるんで、ちょっとヤケ)。

ビーニャではもうひとつ、目的というかお楽しみがありました。
それは、海の町ならではの”海鮮三昧の日々”です。色んな旅行記や人からの口伝えで、”ビーニャに行けば美味い海鮮が山盛り食える”という情報がインプットされており、観光とはちょっと違いますが、わたしの中では外せないポイントでした。何しろこの世で一番好きな食べ物は、ウニ、カキ、イクラ。のみならず、海産物はたいてい好きなもので。
汐見荘から徒歩20分くらいの場所で、月曜を除く毎日、魚市場が開かれていて、旅行者たちはここで買出しして、海鮮たっぷりの夕食を作るのです。チリは南米諸国の中でも物価が高いのですが、さすがに海産物は安く、日本で食ったらいくらかかるんだ???というような豪勢な食事が実現できてしまうわけです。

到着した日は夕方だったので、1人寂しく(でもないけど)レトルトの明太子スパを作って食べましたが、翌日みんなでシェア飯することになり、いきなりの海鮮三昧フルコースです。
運のよいことに、宿泊者の中に、以前居酒屋をやっていたという板さんがおり、彼、Sさんの指揮のもとでシェア飯すると、まるでドラえもんの「グルメテーブルかけ」(※食べたいものを云うとそれが即座に出て来る魔法の道具(笑))みたいに、素晴らしい食卓が出来上がるのです。
材料があれよあれよという間に、美味しそうな料理に変化していくさまは、本当に魔法のようです。わたしも、魚のさばき方とか教えてもらいましたが、1人でもう1回やれって云われたらムリですね。

ちなみに今、宿にいる女性は、わたしと、カップルで来ているI さんの2人しかいなのですが、料理のレベルはわれわれが最下位争いと云っていいでしょう(笑←って笑ってる場合か?)。男性は、板さんはともかくとしても、みんな料理が上手い。手さばきもいい。
1年以上旅してきて思ったのは、男性の旅行者はたいがい料理が上手です。少なくとも、「料理は女の仕事」なんて思っているたわけ者は皆無、と云ってもいいでしょう。これには本当に感心。だからって、女性は料理ができなくていい、という理由にはならんのですが…。
唯一、米炊きには自信のあったわたしですが、ついうっかり芯の残った飯を炊いて、男性諸君に笑われておりました。情けないっす。。。

下の写真をご参照いただきつつ、この日の献立を説明しますと、
・サーモンのタルタルソース和え
・ホタテと巻貝のお刺身
・ムール貝のワイン蒸し
・ほやのレモンしょうゆ合え
・蒸したカニ
・蒸したフジツボ
・白飯

となっております。

VINA2.JPG 恐ろしいほど贅沢な海鮮テーブル(それでも1人5ドル弱)。

VINA3.JPG - 31,870BYTES さらに拡大。貝貝貝、蟹蟹蟹、魚魚魚…んー最高っす。

…いやー、今自分で写真アップしてみただけでもよだれが出そうだわ(笑)。実は今日も海鮮夕食なんだけど、ここまで酒池肉林な(?)食事はもう出来ない。まず魚がさばけないし。
ちなみにこの翌日はあなご丼とカレイのお刺身、1日空けて次の日は、さらにボリュームのあるあなご丼(笑)にあさりのお吸い物、ほや、ゆでたイカ(レモンを絞る)という献立。一人で作るときも、さりげなくウニスパゲッティなどを作って、まさに海鮮三昧というか海鮮中毒というか(笑)。

はまったのは「ほや」ですね。
26年生きてきて、見たことも食ったこともなかったけれど(その存在すら知らなかったけれど)、これは素・晴・ら・し・く美味しい!わざとらしく区切りましたが、もうね、何て表現したらいいか分からんのです。とにかく美味としか云いようがない。
あと、フジツボが蟹と同じ味だったのには驚きました。その前にまず、フジツボが食べものである、ということに驚きましたが(笑)。こんなもんが食べられるのも、板さんのおかげです。職人というのはつくづくすごいねえ。

美味しい食べ物、とくれば美味しいお酒がほしいところ。
チリはワインが有名だということで、メンドーサで1日苦しんだことも忘れて、毎晩安ワインをちびちびやり、果ては昼間っから飲むようになってしまいました(今も飲んでる)。
わたしは安いワインと高いワインの区別なんてつかないので、1ドルくらいの安酒で充分。ちなみに飲んだ銘柄は「コンチャイトロ」「ガトー」「サンタカロリーナ」(全て白)。どれもなかなかの味です。日本でも売っているらしいですが、1000円くらいはするのかな?

食事のあとは、ワイン片手に、夜中までだらだらとおしゃべりに興じる。全く、ぐうたらの見本のような生活態度ですね(笑)。
最初の海鮮三昧の日は、宿泊者も多く、朝の5時ごろまでくだらない話を続けていました。
中でウケたのが、学生時代の制服の話題になって、大阪は箕面の出身という天文学者のタマゴ(ややこしい説明)Hくんがした、「オレらのときは、乳首くらいまでしかない短ランとかあったで。で、ズボンは裾をめっちゃ絞ってて、裾にチャックがついてて」という話。
「ちょっと待って。絞ってたのは分かるけど、裾にチャックって、何?」とツッコむと、「だって、裾小さすぎて脱がれへんやん。で、あんまり見えへんように、めっちゃ小っちゃいチャックやねん」。
…ここでわたし、大爆笑。夜中のいい時間(疲れを越してハイになる辺り)になっていたこともあり、しばらく1人で笑いっぱなしでした。
Hくんとわたしは同い年なので、「えー大阪やのに、何で知らんのー?」「いや、大阪って、そんなん自分のとこだけちゃうの?」などとまー、バカ丸出しのどーでもいい会話が繰り広げられていました。何だかテレサの日々をうっすらと思い出すわ。

というわけで、美味しいものをたらふく食って、ワインをしこたま飲んで、マンガをむさぼり読んで、旅人たちと喋りたおして、とやっているうちに、あれほど立ち去りがたかったブエノスアイレスのこともすっかり忘れてしまいました(笑)。人間とは実にゲンキンなものです。
ここの宿は、特に設備や部屋が優れているわけではないけれど、何となく居心地がいいですね。旅行記HP『のぶこのドキドキ世界一周』で、のぶこさんが”宿と云うより書生として居候している感じ”って書いていましたが、まさにその通りです。
オーナーが日本人で、奥さんがチリ人。2人の子供がいて、犬が1匹、猫が2匹います。旅行者のドミトリーは別棟になっているので、ホームステイというよりは下宿チックです。

そう広くはない共同スペースには、文庫本や週刊誌やマンガがあり、実は将棋も麻雀もトランプも、何故か卓球道具もあり(笑)、テレビもある。しかし、そんな娯楽道具を差し引いても、この共同スペースには、昔のボロアパート(失礼)みたいな雰囲気があって、懐かしくも心地よい空間なのです。ただ、木造のせいか、寒い…今こちらは真冬なので、夜なんて毛布を4枚くらいかけないと眠れません。ま、このひなびた感じがまた書生っぽくていいんですけど(笑)。
最初に食卓を囲んだメンバーのほとんどは、もう移動しており、今はわたしを入れて4人の泊り客しかいません。まだ夜の10時半だというのに、共同スペースの電気は消えており、数日前のバカ騒ぎを思うと何やら寂しいです。

明後日はいよいよイースター島。さすがに8日間も観光はしないので、頑張ってHP制作に励むとします。

VINA4.JPG - 26,791BYTES 夕暮れのビーニャ・デル・マール。

(2003年6月27日 ビーニャ・デル・マール)

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