旅先風信67「アルゼンチン」


先風信 vol.67

 


 

**異国情緒**

 

ずいぶん遠くまで来てしまったな…と。
そんなベタなことを、久々に、心から思いました。

何とまあ、この旅もついに南米突入です。ここは、アルゼンチンの首都、ブエノスアイレス(の安宿)。
ケープタウンから飛行機で約10時間。感傷と期待にたっぷりひたるつもりが、すっかり「テトリス・アタック」(ファミコン)にはまっておりました…。
とは云え、久々の長期フライトということもあり、かなり緊張もしていたのです。それを紛らすために、テトリスに逃げていたと云うのが本当のところでして。これまで、いくつもの国境を越えて来ましたが、いずれも陸路だったせいか、それほど大きく緊張したことはありませんでした。しかし、飛行機でいきなりポンッ、と未知の土地(しかも、アフリカから南米)に降り立つというのは…旅の最初のドイツ以来かも。
ちゃんと入国できるんだろうか。無事に宿に辿り着けるんだろうか。いつもならさほど気にならないことが、いちいち心配で仕方ありませんでした。

入国が心配だった、というのにはワケがあって、昔から、アルゼンチンの空路入国には出国のチケットが必要だと云われていたためです。ケープの旅行会社の兄ちゃん(オカマ)は「大丈夫だ。出国するのに充分なお金を見せれば問題ない」と云っていたものの、もし、空港でチケットを買わされたりしたら、どどどうしよう…。
結果的には、アルゼンチンでは全く問題なし。ほとんど素通りみたいなイミグレーションでした。むしろ、ケープタウンからの出国の方が厳しく、クレジットカードやらT/Cやらを提示させられ、ちょっと冷やり…。

それにしても、アルゼンチンって本と、色んな意味で遠い国ですよねえ。
わたしの知っているアルゼンチンについての知識。
タンゴ、エヴァ・ペロン(エビータ)、マラドーナ、映画『ブエノスアイレス』、イグアスの滝、世界最南端の町ウシュワイヤ、香港の真裏側の街、スペイン語圏、以上。
…こんなんで大丈夫なんでしょうか???

さて、ブエノスアイレスの街は、想像以上に都会です。
都会と云っても、超近代的な高層ビルが乱立、みたいなのではなく、ヨーロッパの都会に近い。歩いていて、何となくパリを思い出したりします。
計画的に作られた街なのか、びっちりと碁盤の目になっていて、どこまでもどこまでも都会が広がっている感じ。ケープタウンも都会だったけれど、規模が違いますね。雰囲気も全然違う。もっと重厚です。いやはや、ケープがヨーロッパなんて云っていた自分が浅はかだったわ(笑)。

BUENOS4.JPG 街角 DE タンゴ(※文法間違ってます)。

パリもそうだったけれど、やたら歩いてしまう街というのがあって、ここもどうやらそうらしい。
3日間、朝から晩まで歩き倒しで、足がぱんぱんです。
地下鉄もバスもあるので、利用すればいいんですが、乗り方がよく分からないせいもあり、ついついどこまでも徒歩で行ってしまうのです。とにかくでかい都市なので、限界はありますが…。
それに、今はバリバリの真冬ということで、歩きでもしなければ寒くてしょうがない。何しろ、朝の7時半でも空が暗いという状況です。起きる気もしないっつーの。ケープタウンも同じくらいの緯度なので、夜が明けるのが遅かったけれど、ここはそれ以上です。夜もめちゃくちゃさぶい。。。

ここで特筆すべきは、1ドル=1ペソという固定レートが一昨年に崩壊し、物価高で旅行者を悩ませていたこの国もぐっと旅行しやすくなったということです。
というと、かのジンバブエを、苦々しく思い出すわけですが、そして、前回のように「豪遊だわ♪」なんて浮かれて来たら痛い目に遭うに違いないと思っていたわけですが、あにはからんや、今回は経済崩壊の恩恵に預かれているようです。
2003年3月の時点で1ドル=3.3ペソと聞いていたのが2.8ペソに落ちているのにはがっくし、でしたが、それでも色んなものが安い。そして、ジンバブエと決定的に違うのは、物が豊富でレベルも高い!

例えばこんな感じです。
洋楽のCD(新譜)24〜28ペソ、(旧譜)10〜20ペソ。わたしは思わず、エアロスミスの昔のアルバムを買ってしまいました…。
ハイソックス5ペソ。パンツ5〜10ペソ。ピアス2〜3ペソ。メイベリンのマスカラと口紅が11ペソ。
インターネット(日本語読み書き可)1時間1ペソ!これは世界でもトップレベルの安さかも。
厚さ2センチのでっかいステーキを、レストランで食べて7.5ペソ。赤い血がしたたっていました(笑)。
創業130年以上の由緒あるカフェで、カフェ・コンレチェ(ミルク入りコーヒー)を飲んで3ペソ。
ちなみに、今泊っている宿は、セントロ(中心地)にも近い立地で、シングル(電源・タオル・石鹸つき、シャワートイレ共同)10ペソです。

まあ、さすがに豪遊できるというレベルではありませんが、レストランにもがしがし入って行けるのは素晴らしいですね。

今までとは違う文化圏に突入したせいか、色んなことが新鮮に見えます。
一見、どう見てもヨーロッパなんだけど、南米という特殊な(わたしにとってはですが)土地柄もあってか、何かが微妙に違う感じがするのです。まあ、ただの思い込みのような気もしますが。
例えば、その辺を歩いている一般人の、美男美女率が高い!とか(笑)。
ラテンの本家・スペインに行ったときはそれほど感じなかったんだけど・・・。本と、びっくりするような美男子が、フツーに歩いてるんだもん(笑)。それこそ、なつかしのフランシスコ君(※モロッコ編を参照)みたいなのが、ゴロゴロしているわけです。カンビオ兄ちゃん(※街角で♪カンビオカンビオと歌う個人両替商)ですらも男前、オッサンもなかなか味のある人が多い。
女子も迫力系美人が多いなあ。化粧もせずに小汚い格好で歩いている自分を、久々に恥じたね(笑)。ケープタウンにいたときですら、そこまで思わなかったのに…。

しかしまあ、少なくともケープタウンとは全然違いますね。もちろんアフリカとも。
ここまでガラっと変わると、異国情緒なんてものを、久々に満喫できてしまいますね。
ひとつ困っているのは、予想通り、全くもって英語が通じないこと…。わたしのスペイン語のレベルは、英語どころの騒ぎではないので、まるっきし赤ちゃんです。数も数えられず、初日の宿でチェックインする際、相当な時間を喰いました。レストランに入っても「あわわわ」とかどもってんの…情けねー(涙)。今のところ、まともに云えるのは「グラシアス(ありがとう)」くらいですね。もうちょっと勉強しないと、この先の旅路が思いやられます。

そんな感じで、毎日歩いて観光するのが楽しくてしょうがないわけですが、その中でもひとつ、おすすめの見どころを。
その名は…レコレータ墓地。すみません、何せ墓マニアなもので…。でも、墓に興味の無い人でも(それがほとんどか…)、ここは充分面白いです。だって、ちゃんとガイドブックにもでっかく紹介されているしね。
ここは、かのエヴァ・ペロンも眠っている由緒ある墓地なんですが…墓、デカいです!
いや、デカいなんてもんじゃありません。家でしょこれ。家と云うか、教会の礼拝堂みたいな感じ。立派なステンドグラスはあるわ、馬鹿デカい彫刻はあるわ、ガラス張りだわ…。何だか知りませんが、エジプトのファラオ風(?)なのもあったりして。墓博物館だなこりゃ。資金が乏しい人向けには(?)、マンション形式のものまでありますからね。
いやはや、ここまでやれば、立派な芸術でしょう。

RECO16.JPG 住宅地かここは…。 RECO8.JPG 立派すぎる墓の一例。

これくらい立派だと、参りがい(ってのもヘンだが)もあるってもんですねえ。うちの母ちゃんの墓もこんなんだったら素敵なのに…。日本の墓はダサいわね。
しかし、中にはさびれきった廃墟のような墓もかなりありました。入り口のガラスが割れていて、献花はすっかりドライフラワーと化し、中にペットボトルとか捨ててあんのよ!ひどい…。先祖は大切にしろよな、全く。

最大の見どころであるエヴァ・ペロンのお墓は、想像よりも普通のお墓でした(※あくまでこの墓地では普通というだけで、充分立派な墓ではある)。扉にカーネーションがいくつも飾られており、他のお墓より可愛らしい印象です。
エビータことエヴァ・ペロンについて少し説明しますと、アルゼンチンの聖母と謳われている女性で、数年前、かのマドンナが映画でエビータを演じたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
わたしは映画は未見なんですが、昔、簡単な伝記を読んで興味を持ってはいました。
わたし、こういうの好きなんだよねー。伝説になっちゃった人の話。何だかぞくぞくするんです。しかも、エビータは、貧しい家庭の私生児という生まれから、一国のファーストレディになったという、日本人の大好きな”豊臣秀吉系”ですから。
貧しい人の味方だとか云いながら自分は毛皮と宝石で着飾っていたとか、数々の男性遍歴を経てのし上がってきたとか、悪評もいろいろありますが、まあ、権力の座に上りつめた人間に、黒い噂はつき物だよね。

伝記の中で印象に残っているエピソードがあって、豪華な洋服をまとったエビータが、労働者たちに向かって「皆さん!この毛皮と宝石を見て下さい!あなたたちも働けば必ず手に入れることが出来るようになるのです!」と演説したという話。
その伝記には、ただ着飾るだけだったフィリピンのイメルダ・マルコスとは器が違う、みたいなことを書いてありましたっけ。何だかうろ覚えの知識で申し訳ないんですが。

さて、今日は何をしようかな。
本当は、街をぶらぶらほっつき歩いてばかりいてはいけないのですが(今後のルートも決めなきゃいけないし)、ま、今日はとりあえずまたブエノスウォーカー(byのりさん)の1日になりそう。のんびりカフェのはしごとでも行きますかね。
タンゴショーも見に行きたいし、骨董市にも行きたいし、韓国焼肉ビュッフェも…んー、当分はここにいそうな気配です。

(2003年6月12日 ブエノスアイレス)

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