旅先風信65「南アフリカ」


先風信 vol.65

 


 

**喜望峰とアフリカの終わり(前編)**

 

ナミブ砂漠観光という一大懸案事項も解消し、ふふふ、いよいよ今日から買い物三昧の日々だわ、と鼻息も荒くケープタウンに帰って来ました。
お前のどこに買い物三昧する余裕があるんじゃい!と、冷静な自分が一応ツッコミを入れてはみるものの、ロングストリート(メインストリート)の素敵なお店たちを見てしまっては、もはや馬の耳に念仏状態…。ふん、いざとなったらクレジットカードを切るわ!だってあたしはショッピングの女王様…と、すっかり中村うさぎ化しています。

わたしは、タバコもお酒もやらない(お酒は多少飲むけど)、ドラッグもやらないという超優秀つーか、ただの面白くない人なんですけど、その分、買い物と甘い物に対する執着は人並み以上。タバコやドラッグで解消しないストレスのはけ口が、全部そっちに行っているんでしょう。
てなわけで、ケープに帰って来てからのわたしは、頭の中がほとんど買い物リストで埋まっておりました。ホテルに荷物を下ろした途端、砂まみれの身体にシャワーも浴びずに、ロングストリートのお店を片っ端から物色です。早速、前に目をつけていたワンピースの値段を確認しに行ったところ…「1000ランド(=16000円)です」。買えるかーーーっ!!!しかし、それでもめげずに次の店に入る、あっぱれな買い物魂(ではなくて、ただのバカなんですが)。

ガイドブックの編集部に用意してもらっているカメラの受け取り待ち、ということで、ケープには少なくとも1週間はいなければならない計算です。その間にケーブルマウンテンや喜望峰の観光をさくっと済ませたいところですが、どうせならカメラが来てからの方が観光のしがいもあるというもの。
もうひとつの大仕事・南米行きのチケットの手配も、カメラが到着しないことには、話になりません。
んー、では一体何をして過ごせば?…買い物しかねーじゃねーか(そうなの?)。

というわけで、カメラ到着までの1週間、わたしが何をしていたかと云うと、ひたすらロングストリート沿いのお店をのぞきまわり、巨大ショッピングセンターがあるウォーターフロントに足を運び、ヒマさえあればスーパーに行き…という、全くもってどうしょーもない物欲まみれの生活でした。
ロングストリートのお店なんて、もう、地元民のごとく通っちゃったもんね…って、全く自慢にならないんですけど。
だって、本とに本とに可愛いのよ!『世界一周デート』妻・エリさんが「ちょっと代官山チックだよー」と事前にメールをくれていたのですが、そしてわたしは代官山には3回くらいしか行ったことがありませんが、妙に納得です。
どのお店も小さいし、数もそんなに多くないんだけど、”山椒は小粒でもピリリと辛い”の如く、素晴らしいラインナップ。ロンドンやパリのお洒落区域に匹敵する、と敢えて断言しましょう。うわさには聞いていたものの、これほどレベルが高いとは…これで買い物するな、って方が間違ってます(?)。ま、実際は、大して何も買えないんですけどね…。
お店が閉まってるときは、外の檻につかまって、未練がましく中をじろじろのぞく始末…動物園のサル以下だな全く。

CAPE7.JPG - 21,184BYTES 好きなお店のひとつ「milk」。

各々のお店については、ここで詳しく説明するのも何なので、何故か、巻末にお気に入りのお店リストを付録しておきました。誰がそれを求めとんねん、って感じですけど、ま、ヒマな方だけ読んで下さい。

ウォーターフロントは、エリさん曰く「お台場チック」ということで、わたしはお台場には2回くらいしか行ったことがないんですけど、これまた納得。
て云うか、ここはアフリカですか??一応バックにテーブルマウンテンなんか見えてるんですけど、一体自分が何処にいるのか分からなくなりそうです。

しかし、基本的にお金がないため、買い物に行っても必ず欲求不満のまま帰って来ることになります。
それでも、ちょろちょろと何かしら買ってしまうので(全くしまりの悪い女だ)、「いかん、もう少し建設的かつストイックな過ごし方をせねば!」と反省して、わたしがやったことと云えば、領事館で大量に本(日本語)を借りて読書にふける。…どこが建設的なんでしょうか。しかも読んでいる本が、室井滋のエッセイとか、林真理子のエッセイとか、「たかじんのばあ」の番組収録本とか、郷ひろみ『ダディ』とか…。でも『ダディ』は意外と面白かったな。郷ひろみが三枚目だということがよく分かった(だから何?)。

そんな感じで、日を追うごとに引きこもりのような生活になっていました。
ケープタウンには、「キャット&ムース」という、日本人旅行者にも評判のいいバックパッカーズがあるのですが、どうせ1週間身動き取れないのなら、1人でゆっくり過ごしたいと思い、別のバックパッカーズに泊ることにしました。
ここは、一番最初にケープに着いたとき、町中で偶然遭った強盗仲間(?)のKさんという女性に教えてもらったところで、そのとき「ドミなんだけど、今ほとんどシングル状態で使ってるよ」と云っていたのを思い出したのです。

確かにこのバックパッカーズは、のんびりするにはいいところでした。
各ドミトリーはアパートの一室みたいになっていて、部屋の玄関を入るとキッチンとバスルームがあり、その奥にドミトリーがある。満員だと最悪ですが、1人2人だと、本当にアパート暮らしみたいで、かなり快適です。
1週間で泊っていたのは、わたしとKさん(※彼女はT/Cの再発行待ちなどでここに2週間くらい滞在していた。つくづく強盗というのは罪が深いね。オレもカメラ待ちだしよ)、あとはちらほら白人ツーリストが来たものの1泊とかで出て行ったので、本当にシングル(ツイン?)状態でした。

2人とも、特にやることがないので、昼間はぷらっと出かけて、5時前にはもう帰宅という生活。今どきの小学生よりも健全です。
物価の高いケープタウンで1週間もいるとなれば、当然食事は自炊。実は、『HIT THE ROAD』ののりさんから、アフリカ縦断祝いに日本食を送っていただいていたので、毎日白米炊いて、みそ汁飲んで、とすっかり日本の食卓です。ふりかけの「味道楽」があまりにも美味しく、ちょっと中毒になりそうでした(笑)。
で、夜になると、Kさんもわたしも、一心不乱に本を読んでるの(笑)。わたしはパソコン叩いたりもしてるけど。
一度、同室になったフィンランド人の女の子が、そんなわれわれを見て「貴方たちは夜は遊びに行かないの?」と不思議そうに質問してましたっけ。「わたしたち、1ヶ月前ジンバブエで強盗に襲われて以来、夜は出歩かないことにしてるんです」と説明してあげると、「ガードマンがいるから大丈夫よー」と云って、夜10時過ぎから1人で外出して、夜中の2時頃帰って来てましたね。白人はまあ、地元民だと見なされるので襲われにくいんでしょう。うらやましいことで。

まあでも、夜出歩かないのは、われわれだけではないようです。
キャット&ムースには現在、大量の日本人がいますが、泊っているI さん夫婦によると「んー、誰も出歩いてないねー。だってオレらは(強盗の)標的だからね」とのこと。確かに。
ケープタウンも、ヨハネスブルグに比べれば安全とは云え、夜は、ロングストリートですら人気が無くなり、うろついている人間もどうにも胡散臭い雰囲気なのです。昼間でも、ロングストリートを端から端まで歩くと、最低でも3回は、ストリートチルドレンに「金くれ。お菓子くれ」と寄って来られるのですから。決して治安がいい、とは云えません。

またここでは、ATM泥棒というのが流行って(?)いて、ATMでお金を下ろしていて、どうも機械の調子がヘンだったりする。と、後ろにいた親切な人間が「違うよ。ピンコードを押すんだよ」とか何とか云ってきて、うじゃうじゃやっている間にカードが吸い込まれて出てこなくなる。実はカードは吸い込まれたのではなく、その親切な人間がうまいこと抜き取った、というわけです。わたしがいた間だけでも、2人被害に遭っていました。

この快適だった宿でも、思わぬハプニングが起こりました。
KさんはT/Cを受け取った後、日本に帰ることになっていました。チケットも買って、いよいよ明日出発というときに、何と、レセプションのセイフティBOXに預けていた貴重品袋から、現金600ドルが抜かれていたのです。
部屋にほったらかしてあったならともかく、セイフティBOXです。“セイフティ”なんて、全く笑わせてくれますが、となるとやったのは明らかにレセプションの人間。
明日帰国するから、どうせ何も身動き出来ない、と分かっていてやったのでしょう。今これを読んで、「なるほど、うまいなあ」と思った人は、しばらく滝にでも打たれて頭を冷やして下さいね。強盗事件以来、こういう”第三者の冷静な目”というものには、嫌悪すら覚えます。

姐御のように怒り狂うまでは行かずとも、やはり、強盗に遭った仲間としては(てのもヘンだけど…)、気が気ではありませんでした。でも、スーパーで買ってきたミルクタルトを「食べませんか」と云って差し出すくらいしか、何にも出来なかったけど…。ふがいないです。全く。
レセプションの男はまったくそ知らぬ顔で、Kさんが抗議に行っても「今メシ食ってんだよ。出て行けコラ」などと、もう最低としか云いようのない態度。万一そいつが盗ってなかったとしても、レセプションとしての責任はどうなんだよ。その男の妻だか何だかもレセプション担当なのですが、「セイフティBOXのカギを、誰かが盗んで合鍵を作ったのよ、きっと」とか云って、本っ当にどうしょうもありません。それが大の大人の云うことか!
さらに、オーナー曰く「最初に預けておくときに、レセプションにサインをさせなかったお前の責任だ」…・全く、開いた口がふさがらないとはこのことです。どこがこっちの責任やねん!何のためのセイフティBOXやねん!人をナメるのにも程があるだろ!つーか、それが客に対して云う言葉か?

こんなに犯罪の多い国では、警察も動かないかも知れない…と思っていたけれど、一応来てくれました。ま、それが当然の、彼らの仕事なんだけどさー。
詳しくは分からないけれど、ここでやっても埒があかないから、裁判をすればいい、裁判費用はタダだ、とかいう話になったらしく、とりあえずKさんは、可能であれば明日のフライトを延期して、もう少しケープにいるということになりました。
しかし、わたしもこんな事件を目の当たりにして、これ以上ここにいる気はしないので、I さんたちもいる「キャット&ムース」に移ることにしました。続きは次回。

ちなみに、宿の名前は「SIMPLY THE BEST」と云います。これから行かれる方はご参考に。

CAPE5.JPG - 22,712BYTES ロングストリートの建物はこんなんばっか。毒々しいお菓子のようだ(笑)。可愛いけどさ。

【付録】ロングストリートお店番付(☆はおすすめ)

「キャット&ムース」から駅に向かって歩いていくと仮定して説明しますと、こんな感じです。

☆「PINK A」・・・名前のとおり、ピンクを貴重にした内装の、こじんまりしたブティック。ロマンチック+ちょい大人テイスト。値段は高め。

☆「mememe」・・・工房っぽい、簡素なつくりのお店。オリーブ系の一点ものが多い。店員さんも可愛い。

☆「milk」・・・ここもオリーブ系だけど、ちょっとだけ色っぽい感じ。お店の雰囲気が可愛くてたまらん。日本のブランド「ミルク」もそうだけど、ミルクという名前は例外なく可愛いものと結びつくような気がするな。

「STILL LIFE」・・・ピンク・紫を貴重にしたインテリア雑貨屋。ここの手提げカバンがめちゃくちゃ可愛い。

☆「misfit」・・・渋めのパンク系。ユニセックスな感じでカッコいい。でもここでパンツを試着したら、足の長さが全然足りなかった…久々に恥かいたわー。

「journey」・・・大人カジュアル+ちょいアジアンテイストなお洋服。

☆「SCAR」・・・パンク系。「misfit」と比べて、もっとポップな感じ。ここには一番よく通った。このレベルにしては値段は安いし、小物も可愛い。

「FUNKADELIC STRAWBERRY」・・・アフリカだか南米っぽい民族衣装テイストの入ったお洋服。

「LIFE ON LONG」・・・お洒落なアンティーク屋。内装が70年代調。

「A・S・P・E・N」・・・見るからに可愛らしい花屋さん。

「ALTERNATIVE DESIGN」・・・何だか不思議なお店。いや、店ではなく、主人(?)が不思議。白髪の白人(少々カマっぽい)なんだけど、お店に入るなり、めちゃくちゃフレンドリーに出迎えられ、手までさすさすされた…。

「Glam」・・・1930年代っぽい(?)、ちょっと高価でマダムテイストな古着屋。オーストリッチのハンドバッグが250R(約4000円)で売られていたので、思わず買いそうになった…。

「(ジャージ屋)」・・・名前をチェックしそびれた…。ぱきぱきした色の組み合わせの、カッコいいジャージの専門店。白地に赤いラインのぴっと効いたジャージを買おうかと思ったけど、次のアルゼンチンではケチャップ泥棒が多いと聞いて止めた。

これらのお店の間に、アンティーク屋がちょこちょこ挟まっていて、これまた素敵なんですが、さすがにそこまでチェックできなかった…。さらに、テーブルマウンテンに向かう道筋にも、いろいろあるんだよなー…。

檻越しに商品を撮影するのみ…。まるで可哀相な子供のようだ…。

(2003年6月2日 ケープタウン) 

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