旅先風信6「エストニア」


先風信 vol.6

 


 

**受難・マグロ漁船の恐怖**

 

ついに、こんなところまで来てしまいました。
ここはバルトの果て、エストニアの首都タリンです。

TALINMACHI.JPG - 152,962BYTES タリン旧市街。バルト海はすぐそこ。

リーガから夜行バスでたったの5時間。全く眠れないバスでした。
隣の席のアホそうなアメリカ人(と勝手に決めつけ)が嬉しそうに大音量でDVD見てやがるし(しかもアクション映画だ!)、夜中の2時に国境のパスポートチェックで起こされるし…。

さて、世界遺産に登録されているタリンの旧市街は、これまで見てきた旧市街の中でもかなり上ランク。
相変わらずプラハが不動の1位なのですけど、タリンはプラハとは違ったよさがあります。
プラハが豪華な宝石箱だとしたら、タリンはおもちゃ箱のよう(おっ、われながら上手い喩え…とか云ってみたりして)。
円錐型の屋根がついた城壁、ロシア式の教会、三角屋根の家屋…と、建物にあまり統一感がないのですが、それがかえっていい感じなのです。店先の看板も、何気にTシャツの形だったり、ポットの形だったりと可愛いし(写真参照)。

また、リーガと同じように、タリンにも「タリン・This Week」というフリーのガイドブックがインフォメーションでもれなくもらえる上、色々と地図や資料も手に入るので、観光しやすいです。
旧市街はそんなに規模は大きくないので、歩いて見て回れますが、道がかなり複雑なのでテキトーに歩くととんでもないところに出て来たりします。でも時間のある時はそうやってわざと迷子になったりするのが楽しいですよね(ない時はキレる)。

TALINKANBAN.JPG TALINKANBAN2.JPG TALINKANBAN3.JPG タリン看板三連発。

……と、ここまで誉めておいてなんですが、わたしはどうもタリンとの相性がよろしくないようなのですねえ。

そもそもタリン到着時からして悲惨でした。
何とまだ夜も明け切らない朝の5時前にバスステーションに着きまして、外は真っ暗、人もいないし、めちゃくちゃさぶい…そしてサイアクなことにバスステーションの建物が開くのは6時半!
インフォメーションも両替もこの中にあるというのに……てか、何より暖房が!
情報の乏しいガイドブックによると、バスステーションは街の中心から離れており(これがそもそもいかんだろ)、トラムに乗って行かなくてはいけないとのこと。しかし当然ながらエストニアのお金を持っていないので、トラムには乗れません。

それがまた、このガイドブックが曲者でして(※『歩き方』ではないです念のため)、地図を見るとどうもそんなに離れていないような気がする。
じっとしていてもしょうがないので、地図を頼りにしばしウロウロしてみましたが……どう考えても間違ってるやろこの地図は!
おかげで無駄な体力を思いっきり消耗してしまいました。
これまでの旅で最も厳しい寒さと不安に耐えながら、バスステの開くのをひたすら待つしかありませんでした。
先日のヴィリニュスどころの騒ぎではありません。実に、実に孤独なひとときでした……。

バスステが開いてからも、両替は9時にならないと開かないわ、仕方ないのでビビリながらトラムに無賃乗車したところ反対方向に行っちまうわ…やっとのことでホテルにたどり着いた頃には8時半を回っていました。もちろん、そのままベッドに倒れこんでしまいました。

TALINKYOUKAI.JPG - 149,889BYTES ロシア正教のアレクサンドル・ネフスキー教会。

しょっぱなからこのような目に遭ってしまったわたしは、その後も細細とした困難と失敗にぶち当たることに。
主だったものを箇条書きにしますと、
@謎の声楽コンサート事件(事件なのか?)
A荷物置き場を訪ねて三千里事件
Bヨーグルト大爆発事件
Cマグロ漁船の恐怖事件

てな具合です。

@…「タリン This week」に、ちょうど今がエストニアン・ミュージック・フェスティバル週間と書いてあったので、急に思い立ってコンサートを見に行った(安かった。700円くらい)。本場のクラッシック音楽を期待して行ったのだが、地味〜な声楽のアンサンブルだった。しかもかなり不気味な旋律でうなされそうになった。

A…スウェーデン行きの夜行船に乗るため、それまで荷物を駅に預けて観光しようと思ったら、駅にはコインロッカーはおろか、荷物預かり所もなく、インフォメーションに行くとバスターミナルにしかないと云われ(だから、バスターミナルは市街地からはずれとるっちゅーねん!)、途方に暮れて旧市街を歩き回った(結局旧市街の中にあるユースが預かってくれた。泊り客でもないのに…感謝)。

B…スウェーデンは物価高なので、物価の安いエストニアで食糧を調達すべくスーパーであれこれ買い物した。袋がもらえないので、いつも下げているショルダーバッグの中に品物をつめこんで歩き回っていたら、いつの間にか、ヨーグルトのふたが破けてカバンの中でビッグバンを起こしていた。カバンはもちろん、地図、手帳、ハンカチ、計算機、友達に出すつもりだったビルケナウの絵葉書…中に入っていたものすべてヨーグルトまみれに。しかし最もショックだったのは英語の辞書がヨーグルトでしなしなになっていたことだ…。これからイギリスで学校に行くというのに…これは、勉強するなってことだろーか?(違うか)お気に入りの道を歩いてゴキゲンだったときに発覚したため、ショック3倍増。

C…今日の真打ち(長いです)。
今日はタリン港から出る船がないため、タリンから列車で1時間のところにあるパルディスキ港からスウェーデン行きの船に乗ることに。パルディスキ駅までは順調にたどり着いたのだが……何だここは。めっちゃさびれてるやんけ!!!
当然のように無人駅。港はあちら、とかいう看板も全く出ていない。
人の流れに付いていったせいで20分ほど迷子になったが、親切なおばちゃんに出会い、道を教えてもらう。云われた道をとりあえず歩いていく。途中で犬の激しい交尾を目撃しながらもひたすら歩く。誰もいない。人の影すらない。道も全く舗装されておらず、廃棄物が散乱し、建物は朽ち果てている。ここで襲われたら間違いなく死ぬぜ?…などとロクでもないことを本気で考えるほどにさびれている。どんどん陽が沈んでいく。突然、借金でクビが回らなくなった男性が最後に行き着くという北方マグロ漁船(女で云う温泉宿)を思い出し、本気で怖くなる。…わたしもしかして売られるのか?なんて。んなアホな…でもそれくらい不安な風景がえんえん続く。

30分近く歩いた後、ようやく港らしき場所が近づいてきた…と思ったら、何とどこもかしこも金網に覆われていて入れませんが!チェックインはどうやら目の前なのに…泣きたい。金網越しにいたアーミーの兄さんは「何でそんなとこに人が?」とでも云いたげだ。そんなのわたしが聞きたいくらいだよ。にしても、いつの間に間違ったのだろう?仕方ないので兄さんに断って金網をよじ上り中に入る。何でこんなとこまで来てアスレチックせにゃならんのさ!

それでも何とかチェックインも済ませ、あとは船に乗るだけ…という段になって、何故かパスポートチェックに時間がかかる。かかりすぎている。船が出るのは9時なのに、8時55分になってもパスポートが帰ってこない。目の前で船が出港していく様子を思い浮かべて背筋が凍り、涙がこぼれそうになる。アーミーの兄さんは「大丈夫」とか云ってなだめるのだが、何が大丈夫なのか全っ然分からない。パニック状態に陥ったわたしは、下手くそな英語でまくしたてて兄さんを困らせまくる。まるっきし幼児である。

……でも結局船が出たのって、10時過ぎだったんですよね(でも何で?)。バカみたいでした。
あと何回、旅先でこんなことがあるんでしょうか???
まあ、どんなことでもやがては終わっていくんですけど。終わってみれば別に大したことはないんですけど。

PALDISKI.JPG - 98,278BYTES パルディスキ港。写真では分かりにくいがとてつもなく寂れている。。。

(2002年4月10日 タリン)

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