旅先風信31「イタリア」


先風信 vol.31

 


 

**くだらなくてすみません**

 

お元気ですか。イタリアからスロベニアに向かう列車に乗っています。
実は(でも何でもないけど)、こうやって乗り物に揺られている時間が一番好きかも知れません。自ら何にもせずとも勝手に目的が果たされていくというのが、怠惰なわたしにぴったりなのでしょう。

イタリアには計12日間滞在しました。普通に考えれば充分な日数ですが、これでもかなりばたばたした方です。結果的には6都市しか回ってないんですけど。ツアーってつくづくすごいね。1週間で7都市とか8都市とか回るんだもの。
ローマの後は”花の都”フィレンツェと”水の都”ヴェネツィア、そして、斜塔で有名なピサを訪れました。ピサの斜塔はちゃんと傾いていました。

イタリアは北に行けば行くほど物価が高くなると云います。中でもフィレンツェ、ヴェネツィアの2都市は観光客に大人気なので、「は?」というような物価がしばしば適用されていたりする。
加えて今はばりばりの観光シーズン。フィレンツェでは山ほど日本人ツアーを見かけました。ま、おかげで、ボッティチェリの「春」「ヴィーナスの誕生」のあるウフィッツィ美術館ではタダで何度も説明が聞けましたけどね。ラファエロの「ひわの聖母」は修復中で見られなくて残念。
ウフィッツィは連日長蛇の列で、わたしも6時半に起きて8時前には並びましたが、すでに列が…。しかしそこまでして?という気もするのですよね。だって、値段や内容、規模などを総合評価するに、パリのルーブルやオルセーの方が上だと思うんです。イタリアの観光地すべてそうですが、学割が全くきかないし、写真撮影もほとんど禁止。ルーブルなんか、「モナリザ」と一緒に記念写真が撮れるもんね(笑)。値段ももうちょっと安いし。

FIRENZE20.JPG - 20,562BYTES 街の高台・ミケランジェロ広場から見るフィレンツェ。

そう、フィレンツェで特に感じたのは、とにかく見どころという見どころ全てに金がかかるということでした。
美術館はウフィッツィの他にもラファエロの絵が多いパラティーナ、ミケランジェロのダビデの本物がある(ちなみにコピーは街中に2つある)アカデミアなど、色々あるのですが、入場料がどこもかしこも8とか9ユーロするんですよ。
教会に入るのにも3ユーロくらい取られるしさあ…貧乏なわたしにはかなりきつかった。
さらに悪いのは、スーパーが全然ないこと。3日いて見つけたのは郊外の1軒だけ(しかも時間が遅くて閉まってた)。小腹がすいたなー、と思っても、食べるところといったらその辺にうじゃうじゃあるジェラート屋かBAR、(少なくともわたしには)高いレストランのみ。あとマクド(苦笑)。BARで飲み物を買ったら2ユーロ3ユーロ平気で取られるので、下手にペットボトルの水すら買えやしません。ちなみに、小袋のポテトチップス1.2ユーロ、ジェラート1.7〜2ユーロ、ボウルに入ったサラダ8ユーロ、といった具合です。フィレンツェの住民は一体何を食って生きているのであろうか…。

FIRENZE11.JPG - 50,380BYTESFIRENZE20.JPG - 20,562BYTES ダヴィデコピー2連発。 

そこを行くと、ヴェネツィアはまだしも過ごしやすかった。
ご存知のようにヴェネツィアは大小さまざまの島から成り立っている街ですが、各島に最低1軒は大きなスーパーがある!ローマですらほとんど見かけなかったスーパーが、この”イタリアで最もツーリスティックな街””島にいるほとんどの人間が観光客”と云われるヴェネツィアにおいて、これほどちゃんと存在するとは…って大げさですけど、貧乏旅行者にとっては死活問題ですからねえ。
ジェラートもフィレンツェより安いし(これは意外でした)、美術館などの見どころも、例えばウフィッツィのようにどうしても外せないような場所も特になく、ただ街を歩いているだけで充分に旅を楽しめます。
名物のゴンドラだって、乗れば金はかかるけれど、橋の上からアコーディオンの演奏を聞きつつ眺めるのはタダさ(笑)。

YHも本島でないとは云え、ヴァポレット(バスの代わりに走っているボート)の停留所のまん前で、夜は対岸の本島の景色も美しい。
ちなみにフィレンツェには3軒YHがありますが、駅に近い2軒は午前中にはあっと云う間に埋まってしまいます。昼過ぎに着いたわたしは(それもこれもイタリア国鉄が毎回遅れるからこうなる。これまでまともに到着したことは1度もない)、最後の1軒である、駅からバスで25分+徒歩10分のところにある超・不便なYHに泊るハメになり最悪でした。ポルトガルのシントラYHに次ぐ立地の悪さです。要注意。

話をヴェネツィアに戻しますと、街の雰囲気もわたしはフィレンツェより好きです。
映画『ヴェニスに死す』ではないけれど、こう、そこはかとなく暗い哀愁が漂っていると云いますかね。やはり、少しずつ水に侵されつつある街、いずれは沈んでいくやも知れない古い建物などを見ると、何とも退廃的な、滅びの美学のようなものを感じてしまうのですねえ。
もちろん、ここにも山ほど観光客はいるので、それは差し引きせねばなりませんが、それでも、中心地であるサン・マルコ広場を離れて小さな路地などを歩くとうそのように人気がなくなって、これまた『ヴェニスに死す』の、ペストが蔓延し観光客の誰もいなくなったヴェネツィアを彷彿とさせるのです。
YHのあるジューデッカ島の夜など、不気味なほど人の気配がなく(YH周辺はうるさいけど)、家の灯りもほとんど消えていて、ただ川べりの街灯が等間隔にぽっぽっと灯るさまは、さながらゴーストタウンのようです。

また、ヴェネツィアと云えばカーニヴァルの仮面。そしてヴェネツィアグラス。
ありがちな土産物とバカにしてはなりません。どちらも立派な芸術ですよこれは。特に仮面は、プラハのマリオネットと並んで(?)、如何にもヨーロピアンな、乙女的土産物という気がします。短期の旅行であればおそらく3つくらいは仮面を買っていたことでしょう(買いすぎ?)。妖しく、そしてどことなく哀しげな仮面たち。ひょっとこの面とはえらい違いです。
何にせよ、プラハと並ぶとまでは云えなくても、限りなく匹敵すると云える街です。

VENETIA33.JPG - 48,884BYTES 仮面は語る(何をだ)。

…スロヴェニアの国境はまだのようですね。まだまだお話する時間もありそうなので、このまま続けさせて下さいね。

このHPももう31回目。我ながらよく続いているなあと思います。
出発前は、PCは重いし、通信もちゃんとできるかどうか不安だしで、何度もやめようかと思っていたけれど、今のところ、盗難にも故障にも遭わず(スマートメディアは壊れましたが)何とかやっています。
欲を云えば、あちこちに宣伝したり検索エンジンに登録するなどして、もう少しアクセスを増やしたいんですけどね。
でもね、果たしてこのページが、多くの人に読んでもらえるような代物かどうか、という疑問も常にありまして・・・。

ついこないだも、旅先で知り合ったある人(男性)がアクセスしてくれたのですが、その感想が「何なんだこのくだらないHPは。もっとPCを有効に使いなさいよ」というものだったのですねえ(苦笑)。
はっきり云って凹みました。書いている内容について云々されたというなら反論の余地もあるものの、”くだらない”と云われては、もうどうしようもない。ああ、本当にくだらないんだなあ、とただ納得するしかありませんでした。

HPがくだらないだけなのか、その内容(全てではないにしろ)であるわたしの旅そのものがくだらないのか…そうなると、引いてはわたし自身がくだらない人間であるということになるわけで、ふと、旅に出る前に「そんなことして何になるわけ?」と鼻で笑ってくれた何人かの顔を思い出さざるを得ませんでした。

旅はともかく、一瞬ですが、HPをやめようかと思いました。あくまでも一瞬ですけどね。
PCのせいでさらに重たくなっているバックパック、バカにならないインターネットカフェ代、充電やセキュリティの心配…それらは全て、このHPをやめれば一気に解消する。逆に云えばそうまでしてアップしているHPが、くだらないものでしかないのなら、やめるべきではないのか…と。

でも、わたしのしつこい性格上、それはできない相談なんだよね(笑)。
ここでいきなり、話はモロッコにさかのぼるん
ですけど、フェスのメディナでわたしは1人の、土産売りの老人を見ました。
やせて如何にも貧しげな老人は、店も持たずに路上で道行く人に声をかけながら、それこそくだらない(笑)らくだのマスコットを、ビニール袋に入れて売り歩いていました。わたしはそのとき人と一緒にいたため、立ち止まることもなくほんの一瞬すれ違っただけでした。
なのに、その老人の姿は強烈にわたしの胸を突き刺したのです。
わたしは思いました。こんなに土産物屋のひしめくメディナで、あんなマスコットなんて誰も買わない。でも、それでも老人はああやって毎日マスコットを売り歩いて生きていくんだ。多分、人生の終わるその日まで、老人はマスコットを売り続け、そして生き続ける…。

時々、何もかもが嫌になって、うまくいかないことだらけの人生なんて、何にも出来ない自分なんて意味がない、もうやめてやる、という衝動に駆られます。
でも、辛くとも、誰にも愛されず必要とされなくとも、何も成せなくとも、どんなにつまらなくても、それでも、天命の尽きるその日までは生きよう、と、わたしは老人を見て思ったのです。
別に生を賛美するわけでも何でもありません。自殺する人を責める気も全くない。
ただ、わたしは、わたしの生き方において自殺はしないだろう、ということを強く感じただけです。

話が大げさになってしまいましたけど、HPも同じことです。
例えくだらなくとも、何の意味もなく、誰も読んでいなくとも、パソコンが壊れたり盗まれたりしない限りは、しつこく続ける(生きる)つもり。
もちろん旅もそうです。
わたしは人の意見や評価に、実はすこぶる弱い人間です。そんな自分がたまらなく嫌になります。もっと強い個でありたい。人から何を云われても云い返すことのできる強さと賢さが欲しい。
”くだらない”HPを続けようとする試みも、そのための1つの足がかりなのだと思っています。
ま、いいじゃないですか。くだらないからと云って、誰かにそんなに迷惑はかけてないでしょ?(アクセス代がもったいないって?それはさすがにお返しできませんねえ)

とは云え、少しでも読んでくれている人もいるわけなので、よりよく、より面白いものにする努力は惜しまないつもりです。
ここはこうした方が面白いのでは?というアドバイスはもちろん、「くだらない」という意見も正直に送って下さい。できれば「どうくだらないか」を書き添えていただけると助かります。もちろん凹みます。でも大丈夫ですので。

それではまた。

追伸:また腹痛に悩まされています。今度は胃です。原因は…何だろう?水飲み場の水を飲んでいるからか?加えて、手がめちゃめちゃかゆい。じんましんか蚊に噛まれたか…いずれにしても気持ち悪いです。

VENETIA13.JPG - 46,748BYTES カサノヴァが脱獄したという逸話で有名な「ためいきの橋」(ヴェネツィア)。

(2002年8月4日 ヴェネツィア→リュブヤーナ)

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