旅先風信30「イタリア」


先風信 vol.30

 


 

**フツーにイタリア旅行記を書いてみる**

 

イタリアです。ローマ。ローマで本当に休日(日曜日)です。

チュニジア去ってもう1週間になるのか。早いものですね。毎日忙しく観光しているせいでしょうか。
とりあえずチュニスから船でシチリア島にわたって、そこから北上、北上。パレルモ→ナポリ→現在ローマ。さらに北上してフィレンツェ、ヴェネツィアと回ろうかという予定。田舎も回りたかったけど、何しろイタリア、全っ然物価が安くないもので、さっさと見るもの見て一刻も早く立ち去りたいのです。

金さえあれば多分イタリアはとても楽しいところ。だと思う。
南の方(パレルモ・ナポリ)は街がごちゃごちゃしている。スペインの旧市街地区とよく似ている。アラブ系の商店とかが建ち並んで、下町情緒たっぷりというのはよい云い方。悪く云えば小汚い。アラブの猥雑はもうしばらくいいのである。
ローマまで来るとさすがに街がキレイ。ここはすごい遺跡がフツーに街なかにあるってのがすごい。見るものはいっぱいあるようでないようで。
以下、イタリアでの足取りをかけ足で。

パレルモ…ここはあまり見るべきものはない。シチリアという響きに惹かれてやって来たものの、やはりパレルモのみではその魅力を半分も味わえないと思われた。それなりに都会で車がガンガン走っている。そんなものはどうでもいい。もっと島っぽい何かが欲しい(わがままだけど)。
シチリアを満喫するなら『グラン・ブルー』の舞台になったタオルミーナや海岸の美しいシラクーサなどで、それなりのホテルに泊ってゆっくり過ごすのが最もよいのだろうな…。
パレルモに2日もいたのは誤算であった。チュニスからの船で一緒になった日本人の女性とパレルモまで行動をともにしていたが、こっちはホテルが取れるかどうか心配で一刻も早く動きたいのに「のんびり行こうよー」などと云われそのペースに巻き込まれてしまった。そりゃあんたはホテルも決まってて彼氏も待ってるらしいけどさ(そうなのだ)。下手に人と動くとこうなる。そんなこんなで少しずつ時間が押して、またアメックスのオフィスが空くのを待ったりしているうちにさらに時間が押して気がつくと日が暮れ…というありさまである。

しかし、そんな中にもひとつ、これは来てよかったと思える場所があった。
それは、かの荒俣宏が著書『ヨーロッパ・ホラー紀行ガイド』の中で取り上げていたカプチン修道会のカタコンベである。
カタコンベと云えばパリの回で少し書いたのを覚えている方もいるだろうか…いないだろうな。カタコンベとは(キリスト教の)共同墓地のことだ。
このパレルモのカタコンベの何が特殊かと云うと、約8000体のミイラが服を着て飾られているという点である。
とにかく、どう説明していいか分からないほどすごい。何しろ、ろう人形館のごとく本物のミイラが壁中を埋め尽くしているのだから。パリのカタコンベの無機質さにもたいがい驚いたが、ここは全く毛色が違う。だがやっぱりすごい。
ミイラの保存状態はきわめてよいらしく、髪の毛や皮膚がけっこう残っている。頭がいこつにボンネットのレースが貼り付いていたりするのが何ともリアル…。そんな中で最も有名なのが「幼女ロザリアのミイラ」で、このミイラはまさにろう人形の如しである。本当に、ただ眠っているだけのように見える。
こんな不気味なところにもかかわらず、観光客だけはちゃんとやって来るのが可笑しい。

CAPPUCIN14.JPG - 30,481BYTES 洋服を着たガイコツたち。間近で見るとやっぱりコワイ。

ここではちょっとした思い出がある。
好奇心と、何故か不思議な安心感を覚えてわたしはカタコンベの中をえんえんとうろついていた。
最大の理由は写真を収めたかったから。ちなみにここはNO PHOTOである。わたしは写真禁止の場所でいまだかつて写真を撮ったことはない。しかしここの写真はどうしても欲しかった。それに、撮って撮れないことはなさそうだったからだ。
カタコンベをえんえんとうろついている人物がもう1人いた。顔だけ見るとイタリア人らしい、背の高い男子だった。ちなみに結構男前で(笑)、服の趣味もよかった。その人はスケッチブックを持って歩いていたのだが、時々地面にしゃがみ込んで何やら作業をしている。見ると、地面に埋め込まれた墓碑を紙にトレースしているらしい。ヘンなことをする人だな、と思いつつ、でもしばらく目が離せなかった。
決して広くはないカタコンベである。われわれは何度も出くわした。しかし声を掛け合うわけでもない。わたしはよっぽど「何をしているのですか?」と尋ねようかと思ったが、その後英語で会話する自信がなく、ただ目で追うだけだった。
そろそろ閉館という頃になって、彼は突然わたしの方にやって来た。メールアドレスを渡された。何だろう、と思っていると、どうやらわたしがこっそり写真を撮りまくっていたのを見ていたらしく、よかったら写真を送ってくれないか、ということだった。アドレスを見ると末尾がUKで、イギリス人ということにここで初めて気がついた。
わたしは「何をしていたのですか?」と尋ねた。答えは見たまんまであった(笑)が、何だ、お互い気にしていたのかと思うと可笑しく、そして何となく嬉しかった。ガイコツの導きによる一瞬の邂逅話。以上。

ナポリ…および、ポンペイの遺跡とカプリ島。ナポリ自体は必ずしも見どころが多いわけではない。ただピザの発祥地だけにピザはもちろん食べ物は美味しく、それなりに安い。ひと口目のマルガリータは感動的とも云える美味で、トマトとチーズだけでここまで美味いなんて…と驚いた。ただし冷めるとマズい。
ナポリの街はごみごみしていて最初は失望したが、旧市街にあたるスパッカ・ナポリはちょっといい雰囲気であった。というのもこの辺りは人形屋だかジオラマ屋だかがたくさんあって、「人形の病院」なんてものまである!素敵だ!乙女の好奇心をくすぐるもの満載である。ここで初めて、イタリア、実は乙女の国?(チェコに続いて)と思ったりした。

ポンペイの遺跡は10ユーロも払わなくてはいけないのだが、それでも見る価値はあった。火山灰の下に眠っていたとは云え、ここまでしっかり街の形が残っているというのは単純にすごいことである。浮浪者ならここで充分いい生活ができそうだ。
壁画なんかも、もちろん修復はしているのだろうが、かなりいい状態で残っている。中でも赤色は”ポンペイの赤”と云われ現代の技術を以ってしても再現できない色なのだとか。しかし…真夏に遺跡をめぐるのは止めた方がいいな。焼け死ぬ。どこでもタンクトップ+半ズボンでうろつく欧米人旅行者も、さすがにここでは日傘を差していた。

PONPEI9.JPG 居酒屋(?)の遺跡。

翌日はカプリ島へ。もちろん目的は”青の洞窟”である。
YHで朝食を取っていたときは晴れていたのに、船に乗る直前くらいからみるみるうちに曇り始め、島ではご丁寧に雨まで降る始末。よっぽど行いが悪いらしい。当然ながら洞窟内には入れず、カプリ島一周クルーズで我慢。一応洞窟の入り口までは行ったのだが、その写真はスマートメディアが壊れたため公開できない(涙)。海はさすがにキレイだった。まるでぷるぷるのゼリーみたいで、全部ではないが、水が本当に水色をしているのである。
カプリ島自体はバリバリのリゾート地。スパゲッティは余裕で1000円くらいする。ここは本当に、ゼニがないとまったく面白くない場所である。

ローマ…首都。遺跡がゴロゴロ転がっている。街並みは美しく、現代的な建物はほとんど見かけなかった。それだけでもすごい街だと思う。
見どころは確かに満載だが、どうしても見なければいけないのはトレビの泉とスペイン階段、真実の口、そしてコロッセオ(外観)くらいか。YH(女子修道院)のツインで同室だったクロアチア人の女の子は1週間かけると云っていた。わたしは2日半…。それでもちょっと郊外のカタコンベ(またかい)に行ったりして、それなりに観光名所は周ったのだが。
それよりも、今セール期間なので、服を見ている時間の方が長かった(苦笑)。ちなみに、芸術とファッションの国イタリアの首都と云えども、買い物は東京の方が面白い。多分。あと、宗教グッズがかなり充実しているのも楽しかった。マリア様シールとか(笑)、これまた乙女心をくすぐられる。

ROMA6.JPG - 41,065BYTES ローマにもありました。ガイコツの教会(写真ボケてますね)。

ヴァティカン市国…カトリックの総本山。だけあって、さすがにさすがに…。朝8時過ぎに行ったらすでに長蛇の列。
サン・ピエトロ寺院、そしてミケランジェロの「最後の審判」のあるシスティーナ礼拝堂は圧巻。「最後の審判」は写真を撮ってはいけないのだが、これだけ人が多いと無視してみんな撮りまくっていた。5秒に一回くらいはフラッシュが焚かれていた(笑)。
何だかんだでわたしも1時間くらい礼拝堂であんぐり口を開けながら「最後の審判」と礼拝堂を埋め尽くしている見事な壁画(これも大半はミケランジェロの手による)に見入っていた。洗浄・修復作業が終わった後なので色も実に鮮やかだった。
サン・ピエトロ寺院はとにかく巨大。そして豪華。しかしベルサイユ宮殿の豪華さとは違う。もっと重々しく、しかしもっと豪華である。素晴らしい彫刻が、ありがたみが失せるほどゴロゴロある。ミケランジェロの「ピエタ」だけはガラス張りになっていたが…。やっぱカトリック、しかもイタリアってやることが派手だなと思った。

VATICAN11.JPG - 43,074BYTES 教会というより宮殿のような。観光客も山のようにいて空気が淀んでいた。

てな具合で、いつもとはちょっと趣向を変えてみよう…と思ったわけでもないんですけど、何となくこんな風に淡々とした書き味(?)になってしまいました。
今回は個人的な苦悩とかないですね(笑)。いいことだ。
でも、せっかくなので(何がせっかくだか)その類のこともちょっと書いておこう。

カプリ島では、ナポリのYHで出会った年輩の日本人女性(数学教師。でも素性を尋ねると「何で根掘り葉掘り聞くのよ」とイヤな顔をされたのであとは不明。名前も知らない)と何となく行動をともにしていました。
まあ一日もいればそれなりに話はするんですけど、彼女は過去に40回くらい海外旅行をしていて、若い頃はかなり…その、何と云うか、お盛んだったらしいのですねえ。例えば「ノイシュバーンシュタイン城で出会った日本人のカップルの男を略奪したのよね」とか、そんな感じ(どんな感じだ)。外人の男の人にもかなりちやほやされていたようで、「日本人の男の子とご飯食べに行くのイヤなのよねえ。だってケチなんだもの」なんて云うあたり、メシをごちそうされるのなんてヨユーというか当たり前というか。ま、日本人の男の子は確かにおごってくれないけどね(パッカーはしょうがないか?)。
で、わたしも調子にのって「いいですねえ。わたしもカッコいい外人の男子に出会いたいなー。でも貧乏旅行で身なりが汚いから…」と云ったところ、「そんなこと関係ないわよ。それよりあなた全然愛想がないものね」とぴっしゃり云われてしまったですよ…。そんな、ホンマのことをはっきり云わんでも…しかも”全然”って。全然ってことはないよ…あなたの10パーセントくらいはあるよ…(力なく笑)。しかしやはりホンマのことなので云い返す術はありませんでした。

そんなことで何もショックを受ける必要もないのですが、その後YHでメールをチェックしていると、とある友人からのメールが。
「社内の人と不倫しそう。○○さん(彼氏)への忠誠心は一体どこに行ってしまったのかしら」云々。。。はあ。何でわたしのまわりはこんなんばっかり?!さっきの女性と云い、何で君らはそんなにごろごろ恋愛の機会が転がっているのだあ!!!
…と、本人の苦悩を全く無視した感想を抱いてしまいました。とりあえず社内のトイレでペッティングはやめとけ。
昔から思うところは色々あったのですけど、わたしにはどうも恋愛能力とでも云うようなものが欠けているようでして、それは「愛想が無い」という一点に集約されているのですが、でもそれって、人生において多大な損をしているような気がしてならないのです。
例えばフラ君の一件にしたって、わたしだからこんなしょぼい思い出しか残せなかったけど、例えば前述の女性や某友人(はたまた別の何人かの友人)であればたった2日あれば楽勝でモノにしていたのでは…と思うと、わたしって人生の敗者?と、被害妄想がふつふつとわいてきます(笑)。

恋愛も金と一緒なんだよねえ。資本主義なんだよねきっと。集まるところに集まるんだよねえ。
ま、とりあえず愛想よくしろって?なかなかそれもしんどいんだけど…。
それより何でこんな話で締めくくっているんだ?(笑)。

(2002年7月29日 ローマ)

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