旅先風信26「モロッコ」


先風信 vol.26

 


 

**怒りのモロッコ・セクハラ編**

 

ティトワンでまんまとはめられたわたしは、その後も行く先々でロクでもない目に遭い続けることに。
ちなみにタイトルは『
ランボー・怒りのアフガン』のもじりってことで、ひとつよろしく。

モロッコのようなイスラムの国を女子1人で旅行しているというのがそもそもの間違いだ、と云われてしまえばそれまでなんですけど、まーとにかくうっとおしいほど声がかかります。
道を歩けば3分に1回は「ジャポーン」「コンニーチワ」「ナカータ(中田英寿)」と云われ、30分に1回は親切を装ったガイド風味の男が寄って来るというありさまで、気の休まるときがありません。何だかね、もう自分が動物園のパンダにでもなったような気持ちです。要するにさらし者ですね(苦笑)。
それでも、道に迷ってしまったり(メディナはまるで迷宮なのです)すると、そんな怪しい人にでも頼るしかないのですよ。奴らは英語を喋ってくれますからね。それも10歳くらいのガキですら、わたしより流暢に英語を操るので、いろんな意味で悔しくてなりません。
にしても、メディナで勝手にガイドをし出したガキにみやげ物屋に連れて行かれ、そこでみやげをしっかり買わされているわたしって一体…??我ながらほんといいカモですわ。

FES1.JPG - 58,911BYTES 『あいのり』にも出てきたモロッコのタンネリ(革製品を染める工場)。

しかし何がイヤって、好きでも好みのタイプでもない男につきまとわれるわ、ベタベタさわられるわ…これが一番最悪かも。
何をぜいたくな、触ってもらえるだけありがたく思えという貴重なご意見もあるでしょうが(ぺっ)、それにしたって、股間を触らされたときはマジで飛び上がりましたよ。
フェズのメディナをさまよっていたときのこと。若いモロッコ人が例の如く声をかけてきて、お決まりの文句「僕は親切な人間だ」(自分で云うな自分で)「君はとてもビューティフルだ」(見え透いたお世辞だな)「もしよかったら家に来ないか」(出たなコラ!)…などなどをものすごい早口の英語でまくしたてて来ました。すでに、日中の暑さとメディナでの「ジャポーン」「ナカータ」に参っていて、とにかくホテルに帰ることしか考えていなかったわたしは、また五月蝿い虫がまとわりついとるなーくらいの感覚でほとんど相手にしなかったのですが、根気強いと云うか何と云うか、わざわざバス代まで払ってホテルまで付いて来たのです。
さすがにここで別れてくれるだろうと思ったら、彼は「じゃ、何時に迎えに来たらいい?」…っておい。何を寝ぼけたことをヌカしとんじゃい!「は???わたしいつ起きるか分かりませんし」と丁重にお断りすると、さらに早口の英語でもはや何云ってんのか分からないけれどとにかく何やら必死で畳み掛けてきます。
わたしは途方に暮れ、その場にしゃがみこみ、泣きまねをしました。とは云え、本当に泣いても全然おかしくない精神状態でしたが。さすがに泣いている女に向かってはこれ以上何も云わないだろう……
なんて、甘かったな。こいつは泣いているわたしの手を勝手に取って慰めのつもりかしばらくさすったあと(それだけでもすでに嘔吐ものだが…)、何気にその手を自分の股間に持って行きやがったのです!!!

一瞬何が起こったのか分かりませんでした。しかし次の瞬間には完全にブチ切れていました。
わたしは急に立ち上がり、日本語で何すんねんゴルァ!!!と怒鳴り散らした後、我を忘れて猛然と、ホテルと反対の方向に歩き出しました。
ヤツはそれでもしつこくついて来ましたが、なじみの(?)インターネットカフェに入るとさすがにあきらめて、どこぞへ去って行きました。わたしの顔を覚えていたカフェの兄やんが「おお、よく来たな」と云って笑顔で迎えてくれたとき、“地獄で仏”という言葉をこれまでの人生で最も深く噛みしめましたよ…。その後、掲示板やメールに「股間触らされた。もうモロッコうんざりっす(涙)」と書き散らかして、何とか鬱憤を晴らさせていただきました。

FES6.JPG - 50,804BYTES フェズのメディナ。

その後フェズでは、前回家に来いと云っていたオッサンに再び捕まったり(しっかりわたしの名前も覚えていて驚いた)、みやげもの屋にひっぱり込まれたりしつつもまあ何事もなく、会う人会う人いい奴なのか悪い奴なのか判断に苦しみつつ過ごしていました。
いい加減モロッコにヘキエキしていたわたしは、このまま一気にマラケシュに行く予定が、バス会社のオッサンにそそのかされて、はるばるサハラ砂漠の入り口、メルズーガにやって来ることに。

このバス会社、モロッコを旅する人なら必ず一度はお世話になるCTMという国営のバスです。しかしここのオッサン、どうやらメルズーガのホテルと結託しているくさかった。。。国営のクセにいいのか?!だって、「メルズーガはいいぞぉ!」とやたら強力にプッシュするし、フェズからはメルズーガ手前のリッサニというオアシスの町までバスが走るんですが、わたしがチケットを買ったとたんどこぞに電話し始め、何故か誰かがわたしをリッサニのターミナルに迎えに来ることになりました。夜行で一緒だった欧米人たちとともに連れて行かれた先は、駱駝ツアーを催行しているホテル。そういう段取りかい!まあどうせ何らかのツアーに参加するつもりだったのでいいんだけどさ…。

駱駝ツアーはモロッコの平均物価からするとかなり高額でした。
長いのと短いのがあって、2日2晩でかなり奥地の方までいくツアーは1500DH。もちろん値切れば少し下がったとは思いますが、高すぎる。仕方ないので一番安いしょぼめのツアーにしました。それでも500DHと決して安くはありません。
同じツアーに参加したのは、モロッコ人男子とカナダ人女子のカップルだけで、他の泊り客はもう1ランク上のツアーに参加していました。
夕方の6時ごろホテルを出て、駱駝で1時間半〜2時間くらいかけて砂漠の中に入っていきます。駱駝って、長く乗っていると股ずれしそうになりますね。長いツアーだとかなり辛かったかも…。そしてその晩は、ベルベル人のテントで夕食をとってそのまま泊り、朝方ホテルに戻るという日程です。ちなみに夕食は肉じゃがみたいな煮込み料理でした。若干砂の味がしました…。

でも、サハラ砂漠、やっぱり素晴らしいです。ノンフィクション『サハラに死す』の主人公・上温湯隆をあれほどまでに魅了したサハラの魅力がうっすらとですが分かる気がしました。何もないんですよ、本当に。砂、石ころ、そしてこんな場所にもまばらに生える植物と、点在するベルベル人のテント。何というミニマルな世界でしょうか。『星の王子様』の有名な台詞、「砂漠が美しいのはどこかにオアシスを隠しているからなんだよ」という言葉を思い出し、静かな感動がこみ上げてきました。
このテント生活というのがまた驚きますね。よくこんな場所で食事とか作れるよなー。車もなさそうだし、一体どうやって材料調達しているのかしら。日々の生活ってどんな風に営んでいるのかしら。だってホントにやることなさそうなんだもん(笑)。ここまでアナログな生活を目の当たりにするのはかなり新鮮な体験でした。まるで『ウルルン滞在記』の世界だなこれは。

SAHARA25.JPG - 46,098BYTES サハラでマルペケ。

ツアーから帰ってきたら洗濯でもしてホテルでだらだら1日を過ごそうかと思っていたのですが、このHPでもやらないことには本当にやることがなく、しかし部屋に電気が通っていないので(さすがは砂漠)、ツアー終了直後あわただしくリッサニまで戻り、その日の夜行バスでマラケシュまで突っ走ることにしました。
で、マイクロバスのドライバーに「マラケシュ行のバスは5時30分だ。それまで家で休みなさい」と連れて行かれた場所はみやげもの屋…。はあ。もうみやげはいいっつーの。でものこのことついて行ったのは、欧米人のカップルも一緒だったからでした。欧米人もけっこう素直だね(笑)。
お前の持っている何かと交換しよう、と云うので、それならいいかと思って律儀にバックパックを引っ掻き回していろいろガラクタを出してやったのに、いざみやげを選んだ途端、「それ(ガラクタ)+リトルマネーだ」と云って700DHも要求しやがったのでキレそうになりました。700DHってどこがリトルマネーやねん!たかがブレスレッドひとつにそんなに出せるかい!

その後店の子供の案内で、「ロンプラ」にも載っているパノラマカフェに行ったのですが、ここのオッサンがまたきもかった。。。
普通にご飯を食べに来ているのに、何故か3階のホテルの個室に入れられ、「ここに食べ物を運んで来るから」と云うのです。あたしゃ病人ですか?ま、それはいいんですけど、オッサンはたびたび部屋に現れ、怪しげな声でやたらと
「ビッグウェルカム」を連発し、わたしの手を取ってキスしようとする。このキスの仕方が、何というかもうねっとりと粘っこい感じでして…ああ、思い出すだに気持ち悪い!(書いていて鳥肌が立ちましたわ)さらにオッサンは調子に乗って、頬にもキスしようとするので「日本にはそういう習慣はないのです」と云って逃げ回っていましたですよ。とほほ。。。「家に来い」というお決まりの文句も明らかに「セックスさせろや」と云っている感じだったのでぞっとしました。こんなこと云ってくるのは好きでもない男ばっかだな…憂鬱。

ようやく夕方5時半になり、マラケシュ行きのバスに乗り込む頃、何故か外はいきなりの砂嵐。これがちょっと異様な光景でした。
さっきまで青かった空がみるみる内に砂で曇り始め(砂でですよ!)、視界が閉ざされました。体中砂まみれになりながら、バスに乗ったはいいものの、このバスがもうサウナのように暑く、廃車なみにボロく、窓の隙間から砂がじゃんじゃん入ってくるという始末。さすがは民営バス…。ちなみにCTMはいいバスです。
しかしこのヒドいバスの中で、わたしはようやく”素敵な何か”にめぐり合うことになったのですが、その話はまた次回。

SAHARA29.JPG - 35,855BYTES にわかキャラバン。

(2002年7月6日 リッサニ)

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