再びスペインです。まずは、リスボンからバスで約6時間、アンダルシア地方の主要都市、セビーリャにやって来ました。

アンダルシアは闘牛、フラメンコ、白い家、ひまわり…などなど、スペインの典型的なイメージの発祥の地です。
かつてこの辺りを支配していたイスラムの文化が色濃く残った街並みには、独特の雰囲気があります。

セビーリャでは、バスの中で声をかけてきたメイという台湾人の女の子のおかげで楽しい時間を過ごしました。
最初は、このわたしに英語で話し掛けてくるなんて（笑）一体どういう魂胆？などと訝しんでおりましたが、いつの間にやら行動を共にし、宿も3泊もシェアすることに。
相変わらずひどい英語力のわたしですが、さすがに3日間英語で喋っていると何となく慣れてくるものです。
だって、親に留学してるって嘘ついて1年旅行するんだよ、ってなフクザツな事情についても何とか説明できたんですから。いやいや、勉強になった。

 サンタ・クルス街（元ユダヤ人街）。この看板のホテルに滞在(ラクガキがちょっといい感じ）。

メイは、外見がかの田嶋陽子女史のような、見るからに強そうな（笑）女の子で、実際の性格もなかなか男前でした。
宿のフロントにも云いたいことはガンガン英語で云うし（オッサンはまるっきし英語できなかったのだが）、明日はどこに行こうかと悶々と悩み続けるわたしに、終始ハッパをかけていました。
また、2日目からは同じ宿にいた日本人旅行者Kさん（男性）も加わってご飯を食べに行ったりしたのですが、メイはわれわれあまり英語のできない日本人相手にもかかわらず、よく喋っていましたっけ。
Kさんは中国から東南アジア、インド、エジプト、ヨーロッパ（及びモロッコ）というユーラシア横断の王道コースを旅してきて、現在で1年2ヶ月。このあとはポルトガルに行って飛行機でアメリカに渡るのだとか。
1年2ヶ月と聞いたときのメイの驚きようったらありませんでした（笑）。フランスのストラスブールに留学していて、ちょうど学校が終わった合間を利用して3週間の予定でスペインとポルトガルを旅しているメイにしてみれば、われわれのような長期旅行者はさぞかしナゾの存在だったことでしょう。

でも、それでも何となく波長が合うのは、同じアジア人、しかも同じような文化を享受している台湾人だからだと思いました。
同じ顔ってだけでも何だかほっとしますもんね（笑）。
ちなみに台湾って中国じゃないの？と思っている人、けっこういるかと思いますが（わたしも正確にどうなのかは知らなかった）、メイに云わせれば「全っ然違う国」なのだそうです。パスポートも違うんですって。
その違いをいろいろ説明するメイを、Kさんは「え、同じじゃん」とからかっていましたけど（笑）。

セビーリャ最後の晩は、3人で本場のフラメンコを観に行きました。
もともとそんなつもりはなかったわたしとメイですが。Kさんが過去にやはりセビーリャでフラメンコを観ていて「ベリーグッド」を連発するもので、それなら…とわれわれも急遽予定を変更してKさんにくっついて行くことに。
サングリア（スペイン名物・ワインのカクテル）を片手に約2時間のショー観賞。今まで全くフラメンコなど興味のなかったわたしですが、一瞬、帰国したら習おうかしらと思ってしまうほどカッコよかった。今でもあの激しい靴音が耳に焼き付いて離れません。
ショーの後は、劇場で一緒になった日本人の女性と4人でタパス（居酒屋）へ行って、ビールで乾杯しました。
みな次の日はそれぞれ目的地に向かうため早起きせねばならなかったのですが、何だか飲みたい雰囲気だったんですよねえ。これも何かの縁でしょ、みたいなノリで（笑）。一瞬で偶然の出会い、そしてもう明日の朝には散り散りになっているのか、と思うと何だかとても愛しい夜でした。

翌朝、わたしはグラナダへ向かうためにバスステーションへ、メイはバルセロナ行きの列車に乗るためにトレインステーションへ。
バス駅は右、列車駅は左です。わたしたちは握手を交わしてそれぞれの道に分かれて行きました。まだ朝早く、街は静かで、しかしさわやかに晴れていました。
全く予定外の出会いだったけど、それだけに楽しかった。思わぬ贈り物をもらったような、そんな気持ち。こういうのって一人旅ならではですよね。
またいつか、こういう素敵な出会いが訪れることを静かに期待しながら旅を続けたいなと思う今日この頃です。

 本場アンダルシアの情熱的なフラメンコ。ちなみにダンサーの兄ちゃんは超・男前でした。

（2002年6月29日　グラナダ）