旅先風信144「オマーン」


先風信 vol.144

 


 

**オマーン雑感**

 

UAEよりもはるかに知られざる国(笑)オマーンにやって来ました。
…と云った口の下から、もう明日には出国です。
だって、物価が高すぎるんですもの…。

UAEに続いて金持ち産油国のオマーンには、安宿というものが存在しません。
ドバイにはかろうじてあったユースホステル(高いんだけどさ)も、ここにはない!
で、最安の宿が2800円…って、全然安くねーし!
ドバイ以来、いや、ゴア以来2週間近く、宿代というものを払っていないため、ここの宿代を払ったときは、手が震えましたね…。
基本的には、ホテル住まいの方が気楽で好きなのですが、このときばかりは、「ああ、ホテル代なんて払いたくない…これからは、『けいの無銭旅行記』を見倣って、人んちに世話になり続けたい」と、一瞬本気で考えました。

50時間にも満たない滞在ですが、短ければ短いなりに知りうることもあります。
オマーンで気がついたことを、思いつくままに並べてみます。

@UAEよりもずっとアラブチック
ドバイから、オマーンの首都マスカットまでは、たった5時間のドライブです(道路、すこぶる快適。さすが産油国)。
マスカットは、わたしの事前予想では、「ドバイに毛が生えた、ならぬドバイから毛が抜けた都会」でした。つまり、まードバイと同じような雰囲気で、でもドバイより田舎なんだろーなー、と思っていたのです。
実際、ドバイからマスカットまでの道のりを見ていると、インフラはばっちりなんだけど、なーんかスカスカした風景…という印象でした。

ところが、いざ来てみれば、ドバイよりもずっと「アラブ!」な雰囲気を醸し出しているではありませんか、マスカットは。
まず、コスモポリタンな雰囲気のドバイとは違い、純血アラブ人たちが多い。というかほとんど。男性は白いアラブ服にムスリム帽、女性は黒装束というのも、実にアラブっぽい。

マスカットとニズワくらいしかまともに見ていないので、エラソーなことは云えないんですけども、オマーンの建物は、ドバイと比べると格段にアラブ色が強い気がします。建物自体は新しいにしろ、古い建築スタイルを踏襲しているので、景観にも統一感があって、美しい。 ま、よく出来過ぎていて、テーマパークの中の“アラブエリア”みたいな感じもしなくもないですけどね(笑)。

何となく絵葉書っぽい、マスカットの一風景。

わたしが泊まっていたマトラ地区も、風情ある港町でした。
夜になると、港沿いの道を街灯が飾り、漁船から洩れる明かりが湾内を彩り、男たちがベンチに座ってお喋りに興じています。彼らの白い服が、オレンジの灯りの中で実によく映え、幻想的な眺めですらあります。

Aアラブ純度高い衣装
男性は、ワンピース型のアラブ服。白が圧倒的に多いです。それは、UAEとかほかのアラブ諸国と同じなんですが、オマーン男性は、細かい刺繍の入った、スポンジケーキ型のムスリム帽子を被っています。この組み合わせが、妙に上品で、清潔感・金持ち感にあふれています。何つーか、エリートサラリーマンぽいのね(笑)。ちなみに、アラブ服着用率は95パーセント以上。誰を撮っても写真映えするので、嬉しいですね。
女性の全身黒装束はUAEと同じですが、時々、仮面舞踏会風のアイマスクをつけている女性も見かけます。たまたま振り返った女性がそれをつけていると、けっこう怖い…。幽霊みたいだったアフガンのブルカ女性を思い出します。

たたずむお兄さん。アラビアンナイトチック。

B「COFFEE SHOP」が多い
マリファナを吸うところではありません。ただのコーヒースタンドです。マトラ地区の沿岸路には、COFFEE SHOPの看板を掲げた小さなお店がいくつもあり、白いアラブ服の男性たちが、コーヒー片手にしばしくつろいでいます。
コーヒーは、あらかじめミルクと砂糖が入っています。さすがはアラブ(酒がないので、甘いものが娯楽なのさ)。1杯100パイサ(約40円)と、まあ高くはないので、よく飲んでいました。また、サンドイッチなどの軽食も売られていて、貧しいわたしの食事は、毎回ここでした。

C岩山が多い
岩山が多いんですよ。はい。以上。そのまんまですみません。
もっと砂の大地のイメージだったんですが、乾いた大きな岩山の連なる地形で、起伏に富んだダイナミックな景観です。岩山の上には、古いフォート(城砦)が残っていることもあります。これまた何だか、アラブっぽいなあと思います。

たまたま知り合ったオマーン人のおじさんに、車でマスカットを案内してもらったのですが、まー見事なほど岩そして砂の世界。色彩が、灰色とベージュしかねえ(笑)。しかし、そんな中で、突如として現れるエメラルド色のアラビア海の美しさ!白い紙に青いインクを落としたような、と云うと実に平凡な表現ですが、ちょうどそんな感じの鮮やかさなのです。

♪誰もいない海〜オマーンのアラビア海。ホントに誰もいません(笑)。でも実は、ダイビングの穴場らしいです。

D魅惑のお香・乳香が特産品
乳香というのは、樹脂のお香のことで、英語名はフランクインセンス。フランク=「真正の・自然の」インセンス=「お香」という意味です。
古代から薫香として使われ、シルクロードの重要な拠点としてオマーンが栄えた時期、乳香は、宝石と同等の高級品であり、主力取引商品でありました。
かつてほどの価値はないにしろ、スークには、乳香を売るお店がたくさんあります。乳香以外にも、サンダルウッドなどのいろいろなお香がありますが、やはりオマーンといえば乳香ってことで、少し買ってみることにしました。ちなみに、わたしが買ったのはマトラのスーク。ここは、異国情緒あふれ、とても雰囲気のある市場なのですが、あとで聞いた話、外国人観光客へのぼったくり方がハンパじゃないらしい…知らずに買い物してしまったわたしは、値切ったとは云え、相当損しているのやも知れません…くそー、貧乏なのに…。

乳香はどれも、1センチ四方前後の小さなカケラで、色は透明がかったグリーンとか黄色。フレッシュとドライの2種類があって、フレッシュの方が値段が高いですね。フレッシュ乳香は、粘々つやつやとしていて、飴のようでもあり、アンバーのようでもあって、“神秘的で高貴なお香”という雰囲気が、びしばし感じられます。
においは…今までに嗅いだことのないにおいですね。柑橘系の爽やかさでもないし、ムスクのむせかえるような感じとも違うし…でも何だか病みつきになりそうな、独特の甘いにおい…くんくん(犬かよ)。

このカケラに火を付けて、チャーコルに乗せて燻すと、香りが立ち上って来る…はずなんですが、これがけっこうむずかしくて、お店で教えてもらったときは「ふむふむ、カンタンじゃん」とテキトーに聞き流していたのに、ホテルでやってみると、全っ然うまくいきません…。正しいやり方をメールで教えて下さる方、募集中です。

さまざまなお香。しかし、買うときは気をつけましょう。。。めちゃくちゃボリます。

E通貨の桁が低すぎる
普通、ドルでもユーロでもバーツでもゴールドでも(最後のはドラクエ通貨)、“1ナントカ”というと、たいていは小銭じゃないですか。
ところが、オマーンの通貨・オマーンリアル(OR)のレートは、1リアル=3.8ドル。何と400円くらい!3リアルですでに10ドル超えるってわけです。

それは重々承知の上でも、1リアルが400円もするという感覚がどうしても身につきません。
リアルの下の単位で、パイサというのがあって、1000パイサ=1リアル。100パイサが40円ということで、こちらはまあ小銭なのですが、1という数字の呪縛に囚われてしまって、100パイサなど、小銭どころか紙切れくらいに思ってしまうから怖い。
通貨単位が低いと、金銭感覚が狂いますね。たとえば、日本円がもし「100円→1円」になったら、少なくともわたしは、浪費しまくるだろうね(笑)。だって、今まで1万円だったものが、100円って名前になったら、同じ価値だと頭では分かっていても、安く感じてしまいそうじゃないですか?

ともかく。オマーンリアルは、通貨単位の切り上げをした方がいいと思う…。100パイサを1リアルにして、ちょうどいいくらいじゃない?

さて、あれこれと書いてきましたが、ここまでは、実は余談なのでした。なげーよ!しかし、こっからが本題。
オマーンでの最大の発見、この国をもっとも印象づけたもの…それは、
「セクハラが多すぎる」
ということでした。

何しろ、この国に来てから、まだ30時間くらいしか経っていないというのに、計5回も現地の男に買われそうになったのです。
誤解のなきよう、先に書いておきますが、わたしが挑発的な行為をしたわけじゃないんですよ!欧米人女性や華僑・印僑の女性たちが、堂々と半袖・ノースカーフで練り歩いているのを尻目に、わたしはクソ暑いのに黒いパシュミナで身体を覆い、スカーフも着用しているのです。にもかかわらず、何故だ!?
また、さらに誤解なきように付け足しますと、これ、自慢でも何でもありませんから! 普段、モテないことを嘆いているとはいえ、このようなモテ方(っていうのかこれ?)は、嬉しくも何ともないんで。ちょっと可笑しくはありますけど。。。

主だったことは、ほとんど今日1日のうちに起きたことですので、今日の出来事を順を追ってお話いたしましょう。こっからがまた長いんで、そこんとこよろしく。

まずは、マスカットから2時間のところにある、ニズワという町に向かうべく、ルートタクシー(乗合ミニバス)に乗ったときのことです。
ニズワまでは、2回ほど乗り継ぎをせねばならず、最初はマトラからルートタクシーに乗り、ニズワ行きのシェアタクシーが溜まっている場所まで乗ることになります。
ところが、30分ほど走った後、いつの間にやら客はわたし1人になっていました。そして、バスはいきなり、高速道路の真ん中みたいなところで停まりました。
「お前しか客がいないから、もう走らない。ほかの車をつかまえな」と、ドライバー。
おい!ふざけんなよ!小学生みたいな屁理屈で、こんな、車がびゅんびゅん走ってるところで降ろされるわたしの立場は!?

若いドライバーは少し英語を理解できるようだったので、わたしは乗るときにあんたにちゃんと「○×へ行くか?」って聞いたよね?その分お金も払ってるよね?…と訴えました。しかし、ドライバーは走らないの一点張り。不毛な押し問答がしばらく続きました。
すると彼は急に、「分かった。いくらだ?」と云ってきました。
最初はもちろん、目的地まで走るのにいくら払うんだ?という意味かと思い、しかしそれだとチャーターってことになって、高くなるだろうな、困った……いや待て。よく考えたら、最初に云っておきながら、目的地まで行かないこいつの方が悪くねーか?そこで、いつものように「お金がないんだけど」と云いました。
ちなみに、わたしは各所でことあるごとに、お金がないと云っているように思われているかも知れませんが(苦笑。ま、事実ないんだけどさ)、お金がないというのは、正確には「それをするのに十分なお金がない」あるいは「要求されている額を払うことに納得できない」という意味であり、決して、むやみやたらに金がないことをアピールしているんじゃないのよ!
…ごほん。ともかくです。ドライバーにその旨訴えてみるのですが、どうも話が噛み合わない…英語が分からないのか?… と思っていたら、彼の口から「ファック、ファック」という言葉が飛び出しました。
まさか…と一瞬は思ったものの、
そのまさか、ビンゴでありました。

こいつは何と、わたしをいくらかで買おうとしているのでした。
金がない、分かった、じゃあ金はやるからやらせろ…って、そういうわけ?それって話が飛びすぎというか、おかしくねーか??ていうか、見ず知らずの男にそんなこと云われたの、初めてだよ!

もちろんそんな話は即座にお断りすると、ドライバーは氷の如き冷たさで、さっさと走り去ってしまいました。
くっそー・・・この時間も金もないときに、何だってこんな目に!
半泣きになりながらも、何とかシェアタクシーを乗り継ぎ、ほうほうのていでニズワに着いたわたしでしたが、受難の本番は、ここからだったのです…。

ニズワ最大(ていうか唯一?)の見どころ、ニズワフォートを見学したあと、スークでもぶらつくか…と思って、通りすがりの、杖をついた初老の男性に「スーク(市場)はどこですか?」と道を尋ねました。
おじさんは、親切にも「ワタシが連れて行ってやろう」と云って、自らスークへの道を案内してくれます。
わたしはおじさんに連れられスークへ行き着きましたが、あいにくシェスタ前(※UAE、オマーン、イエメンでは、昼間はクソ暑いので、お店・オフィスは長い昼休憩を取るのです)で、ほとんどの店が閉まりかけていたので、ものの5分でスーク観光は終わってしまいました。

とりあえず、何か食べに行こうかなと考えた矢先、おじさんが「昼食は食べたか?」と尋ねるので、ノーと答えると、レストランにも連れて行ってくれました。どうやらおごってもらえる様子。わーい、と単純に喜んで、 魚のビリヤニを注文し、おじさんとわたしは話しながら、料理が運ばれて来るのを待っていました。

…ところが、話しているうちに、話の雲行きが怪しくなってきました。
「食事が終わったら、レッツ テイク レストだ」
テイクレスト=休憩する、休むの意。しかし、わたしは本日の夜行バスでマスカットを出る身、休んでいるヒマなぞありません。
「いや、今疲れてないですから、ノーニード テイク レストです。ニズワで、フォート以外に見るべきところがあれば、教えて下さい」
「ニズワには、フォート以外には何もない」
…思わずずっこけそうになりましたが、それならそれで仕方ないので、町をぶらぶらしてみようと思い、そのように伝えました。しかし、おじさんはやたらと“休む”ことを勧めてきます。

「休むったって、どこで休むんです?」
「ちゃんと特別の場所があるのだ」
…って云われてもな。
「ワタシは、君と友達になりたいのだ」
「(力なく微笑みつつ)今だって、友達じゃないですか」
「いや、もっと仲良くなりたいのだよ」

……さすがのわたしも、それが性的な方向の話になっていることに気づきました。

当惑するわたしをよそに、おじさんはさらに衝撃のひと言をぶっ放しました。
「君はいくらほしいんだ?」
こらあオヤジ!!!わたしを買う気だったのかっ!?あんた、どー見てもウチのおとんくらいの歳やんか!!
わたしは、動揺を抑えつつ、簡潔に説明しました。
「アイム ノット プロスティテュート(売春婦)。アイム ジャスト ツーリスト」
おお、何という分かりやすく、かつ韻を踏んだせつめい。とにかくわたしはおじさんと寝るつもりはない、ていうか元々からそんなつもりはない…ということを噛んで含めるようにお伝えし、無事お引取りいただいたのでした…とほほほ。しかし、タダ飯は最後まできっちり食べさせていただきました。ごちそーさま。

ニズワ唯一の見どころ・ニズワフォート外観。

この後、少々脱力しながらも、町をぶらぶら歩いていたところ、小学校帰りの少年たちとすれ違いました。
真っ白なガラベイヤ(アラブ服)に、刺繍のイスラム帽をかぶり、ノートを抱えて歩く姿が何だか麗しく見え、「アッサラーム、アレイコム」と、あくまでにこやかにあいさつしてみました。
すると、あいさつが返ってくるでもなく、「何じゃこいつ?」てな目でじろっと見られ、そのまま無視されてしまいました。
くっ、生意気なやつらめ…と軽くムカつきましたが、まあ、向こうからしてみれば、わたしなんて、ヘンな外人女、あるいは宇宙人にしか見えないのだろう…子供だし、仕方あるまい、と自分をなだめ、そのまま歩き続けました。

ところがその後。
背後から、「ファックユー!」という声が飛んでくるではありませんか。
電光石火の速さで振り返ると、先ほどの少年たちでした。
「今、何て云ったワケ!?」
わたしは、般若のよーな形相で、つかつかと彼らに歩み寄りました。
少年たちは、もちろん逃げました。文句があるなら、堂々と、目の前で云えよな!ほんっと、しょーもないガキ…と思いつつ、しかし許せないので(わたしもガキなのである)、わたしはやつらの後を追いました。
少年たちはまたしても、ぴゅーっと走り出し(嘲笑を浮かべながら)、わたしから10メートルは離れたでしょうか。
わたしとの距離が開いたのを見計らったかのように、最初の100倍くらいの音量で、「ファーーーーッツク ユーーーーーーー!」という絶叫が飛んで来ました。それも、何度も何度も。
…ただでさえ気の短いわたしが、これでブチ切れないはずがありませんでした。

わたしが再び、追いかける姿勢に入ると、そいつらはまたも、脱兎のごとき速さでぴゅーんと逃げ出しました。ところが、この中に1人、別方向に逃げてしまったバカな少年がいたので、わたしはそいつを追撃しました。
坊やは逃げ回ったあげく、いきなりその辺の民家に逃げ込みました。どうやら自分の家らしい。わたしはもちろん、少年を引きずり出すつもりで、家のドアを叩きました。
応対に出たのは、じいさんとばあさんでした。
当然ながら、英語はまったく通じませんが、わたしは、ありったけのジェスチャーを駆使して、ガキがわたしに失礼を働いたことを力説しました。

すると、ばあさんが、何を思ったのか、1リアルを差し出してくるではありませんか。
「???」わたしは一瞬何のことか分からず、そのお金とばあさんの顔を見比べていましたが、どうやらこの金は、賠償金(んな大げさな)らしい…って、ちょ、ちょっと待ってよ。何、それ?そういう問題?金で解決なの?

いつだって、金は喉から手が出るほど欲しい。でも、この金は受け取りたくない。それは、人として何だか間違っている気がする。
わたしは、珍しく殊勝な気持ちになって、きっぱりと、何度も断りました(ホントです)。どうせ通じない英語で、「お金をいただくようなことじゃないんです」と訴えながら…。しかし、ばあさんもしぶといもので、しまいにはその表情に懇願の色さえ浮かんできました。“頼むから、もらってくれ。そうしないと解決しないのだ”…誤解ではなく、ばあさんはそう云っているようでした。押し問答のような応酬がしばらく続き、ここはもはや、受け取らなければ事態は終了しない…そう判断を下したわたしは、結局、ちゃっかりもらってしまいました。すみません。でも、気分はすこぶるよろしくなかったです。乞食がいたら、即刻寄付しよう…とも思ったのですが、インドと違って、ここにはそんなものは全然いないのでした。。。

問題のクソガキ…ではなく、ニズワフォートに遠足に来ていた子供たち。この子たちはよい子ちゃんたちでした。

この忌々しい事件によって、わたしは、この町から一刻も早く立ち去るのがベストだと結論を下し、マスカット行き乗合タクシーを探しました。
ところが、シェスタがまだ続いており、タクシーはなかなか見つかりません。クソ暑い中、汗だくで歩き回っていると、1台のタクシーがわたしの横で止まりました。
「どこ行くんだ?」「マスカット。いくら?」「10リアル」
…おいこら、ふざけんなよ。こっちはマスカットから1.5リアルで来てんだよ!!!
「そんなお金ないよ。さよなら」
と立ち去ろうとすると、ちょっと待て、いくらだ?と追ってくる。
「いや、もういいです。お金ないんで」
すると、運転手および助手席にいた男は、好色そうな笑いを浮かべながら、「ハウ マッチ ワン ファック?」と尋ねてきたのです。

…またか。またかよ。またファックかよっ!
もはや、英語で怒る余裕もなく、「いーーーかげんにしろーーーーー!誰がお前なんかに買われるかボケーーー!!!」
と、日本語で怒鳴ってやりましたが、完全にナメられているらしく、へらへら笑いながら車をのろのろと動かして追ってきます…って、もうやめてくれよーーー!!!あたしは売春婦じゃねえんだよーーー!!!

この国で、「お金がない」という台詞は危険だ…ということを、わたしはようやく悟りました。
イスラム世界では、 女性1人旅というのは、非常に奇異な行為ではあるでしょう。それでも、これまでイスラムの国を10カ国近く旅してきて、金で買われそうになったのは初めてです。ここでは、女性1人、外国人ということは、即、そういう種類の女だ見なされるのでしょうか?でも、華僑とか印僑とか、フツーにいるじゃん?ああ、そうか。外人で金がない女となると、売春婦なのか。彼らの知識の中では。確かにそういう傾向は全世界にあるけれども、ちょっと暴論じゃないのかい?

こんなこともありました。
夕食を食べた食堂で、手を洗って、側に置いてあったタオルで手を拭こうとすると、従業員がさっとタオルを差し出し、頼んでもいないのに、わたしの手を拭いてくれようとします。
反射的に手を引っ込めて立ち去ろうとすると、何とこの男は、いきなりわたしの顔を手で包み、キスしようとしてくるではありませんか!
背筋に寒気が走りましたね。マジで。ああっ、これ書きながらでも寒気がするっつの!

こんなにセクハラに遭いまくっているのはわたしだけか?わたしに隙があるのか?と悩んでいたのですが、後にオマーンに行った日本人の女性旅行者も、「ルートタクシーのおっさんに買われそうになりました」…って、何考えてんだ、オマーン男っ!!!
ムスリムの国で、性的に抑圧されているのかも知れんが、ちょっとたまり過ぎじゃないのかーーー!?オマーンの女性のみなさん、何とかしてやって下さい(苦笑)。

そんなこんなで、奇妙な印象ばかりが残ったオマーンとも早くもお別れです。明日はいよいよ、憧れのイエメンだあ♪

夕方のマトラスーク(出入口)。

(2004年12月8日 マスカット)

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