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**愛と哀しみのニューヨーク滞在日記続き** | |||
ニューヨーク滞在後半戦です。 3月23日(火)晴 ハーレムと云えば、マンハッタンで最も治安の悪い場所、というイメージがある。最近の事情はともかく、ちょっと前までは実際にそうだったんだと思う。昼間でも、あまり人気がなく、バックパックを担いで歩いている身としては、かなり怖かった。友人には「ビビりすぎ」と云われたが…。 荷物を置いて一段落したのち、自然史博物館に行く。あんまり自然に興味のないわたしだが、友人はかなり楽しみにしている様子。わたしは、ここの目玉のひとつである、世界一大きなサファイア”スター・オブ・インディア”を見られればそれでOKである。石のコーナーはかなり面白い。メキシコで石マニアたちに会って以来、一般の人よりは詳しくなったのだ。友人はわたし以上に石好きなので、食い入るように展示物を見ていた。 その後、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが住んでいたダゴタ・アパートを見に行く。ここは、入居に際してかなり厳しい審査があるそうだ。何せ、マンションのくせに門番が立っているようなところである。さらに、その近くにある、ストロベリー・フィールズの記念碑を見る。真ん中に“IMAGINE”と銘打たれた円形の記念碑のまわりには、いくらかの花が備えられている。その側で、若いストリートミュージシャンが、ビートルズの弾き語りをしていた。 その後…その後は…BOOK-OFFに行きました。すみません。 これがスター・オブ・インディアです。誰かわたしに買って下さいませんか…。 3月24日(水)晴 少しHくんのことを書いておくと、彼はもともとコロンビアを旅行していて、まだしばらくいるつもりだったのだが、そこで会った、NY在住の日本人女子と恋におち、勢いでニューヨークまで来てしまった、アツい男である。ところが、NYに来て1週間も経たないうちに、ナゼかふられてしまったという、可哀想な男でもある。 仕事の方は、先日めでたく決まったようである。何の仕事かというと、日本人相手のキャバクラのボーイ(笑)。NYまで来て水商売とは、なかなか不思議な展開であるが、Hくんはノリもいいし、けっこう向いているんじゃないかと思う。 その後、チャイナタウンでご飯を食べ、ソーホーとかノリータの辺りを当てもなくぶらぶらする。いったんHくんと別れて、わたしと友人が行った先は…またしてもBOOK-OFFであった。わはは。友人は、村上春樹と村上龍の文庫本が1ドルコーナーに移動する日を待っているのである。ここのBOOK-OFFはわりと回転が速いので、毎日通っていれば、掘り出し物もけっこう見つかるのだ。しかし今日は、友人の求める本はなかった。閉店ギリギリまで立ち読みして帰る。 メトロ(地下鉄)構内でのストリート・パフォーマンス。黒人に混じって、日本人らしき女の子の姿が。 3月25日(木)晴 午後から五番街へ行く。「紀伊国屋」と「ティファニー」。友人は、豆形のシルバーのネックレスを、妹のプレゼントに買っていた。 「トイザラス」のディスプレー。
3月26日(金)晴 MOMAのコレクションには、ピカソの「アヴィニヨンの娘たち」、マティスの「ダンス」、シャガールの「私と村」などなど、よだれものの傑作が揃っているのだが、MOMAQにはいずれの絵もなかった。キュレーターに尋ねると、「今その辺の絵は、ドイツと日本に行ってるんだ」とのこと。ドイツは仕方ないとして、何ゆえ己の国へーーー!?ヤラレタ…。結局見たのは、ゴッホが1枚(郵便配達のオッサンの肖像画)、セザンヌが1枚、ロートレックが1枚、ルソーの「眠れるジプシー」、ピカソ、マティス、キリコ、マグリット各1枚、あとはウォーホルとかリキテンシュタインとかがちょろっとあるだけだった。これで通常料金の8.5ドル(学割)は高すぎる。1ドルだからまあいいかと思えるけど。 グッゲンハイム美術館。MOMAのリニューアルにともなってか、ニューヨークの現代美術館と云えば専らこちらになりつつあるようで、かなり楽しみにしていた。が、この日の特別展が、ミニマリスム展だか何だかで、白いカベに蛍光灯が貼り付けてあるだけとか、地面に鉄板が置いてあるだけとかの作品ばっかりで、あまり見ごたえがなかった。通常展示は、ピカソの絵が多かった。これはなかなか。でも、全体的にはちょっと期待外れだなあ…。 帰りはワインセラーで10ドルのワインを買って帰る。夕食は、ハーレムの中華のテイクアウト。しかし、部屋に帰ってご飯を食べると、2人ともぐったりしてしまい、ワインは空けないまま、朝まで眠りこけてしまった。 好きなアーティストの1人、キリコの作品。ちょっと『キン肉マン』のペンタゴン(超人)っぽい。 3月27日(土)晴 その後、ニカラグアで会った同い年のニューヨーカー、R嬢の家を1人で訪問することにする。彼女はブルックリン在住なので、そのまま足を延ばす。 倉庫を改造した、ブルックリンの古着屋(われわれが服を買ったところとは別)。 3月28日(日)晴 ゴスペルの続きで、ハーレムを散策。われわれの住処もハーレム内なのだが、中心地に行くのは初めてである。メインストリートは、「H&M」や「OLD NAVY」といったユニクロ系大量生産の洋服屋、バーガーキング、マクドナルドなどのファーストフード飲食店など、あたりさわりのない店ばかりが並んでいる。ヨーロッパ以来「H&M」ファンであるわたしは、何処にでもあると分かっていながら、「H&M」の店舗を見つけるとつい入ってしまう。ここハーレムの「H&M」では、下着のセットを買った。その辺の中途半端なお店で買うよりもずっと、可愛くて安いのだ。 昨日、R嬢宅に向かう途中、ソーホーの端あたりを通ったのだが、けっこういいお店が並んでいたので、午後からは、その辺を潰そうということになった。しかし、相変わらずモノが高く、手に入れたのはフライヤーのみ。。。虚しい。 夜は、H君と誘い合わせて、3人でジャズバーに行く。「歩き方」に載っている20軒近くの中からH君が「ここいいんじゃない?」と選んだ、「Arthur's Tavern」は、古きよきジャズバーという感じで、演奏しているジャズもスタンダードなものだった。ビールを飲みながらジャズの音に身をゆだねていると、難しいことなどどーでもよくって、ただほんわりと幸せだなあ、と思う。 それにしても、今日は音楽尽くしだったなあ。
「Arthur's Tavern」
3月29日(月)晴 夕焼けと夜景はやはり、人気の時間帯なのだろう。最上階の展望台とみやげもの屋は、歩くのも困難なほど混雑している。びゅうびゅうと風が吹きさらす中、歯を食いしばって寒さを我慢し、辺りが夕暮れていくのをひたすら待つ。 わたしは人の手で作られた風景が好きだ。自然の造形にはもちろん感動するが、ちっぽけな存在である人間が必死こいて作り上げたものには、刹那的な美を感じるのだ。 エンパイア・ステート・ビルからの夜景。 3月30日(火)晴 その後、チャイナタウンへ。海外在住の友人は、日本食をおみやげに買い込んでいた。わたしも、中国製の「出前一丁」と「スッパイマン」を買っていく(…って、どういう取り合わせだよ?)。 イーストビレッジで、Hくんと待ち合わせ。先日発見した、寿司食べ放題のお店に行くのである。 夕方、ホイットニー美術館に行く。展示を見に行ったわけではなく、前に来たとき目をつけていた画集を買いに来たのである。ところが、運悪く今日は休館日。とは云え、スペシャルイベントが開催されるので、それなら本屋くらい入れてくれても…と思って頼んだのだが、まったく相手にされなかった。クソっ。もう少し融通ってものをきかせてくれたっていいのにさ。 友人は、ニューアーク空港へ。わたしは、JFK空港へ。 友人と別れて1人、JFK空港に向かう。郊外へ行くにつれ、景色が寂しくなっていく。東京や大阪の郊外の風景に、とてもよく似ていると思った。友人と別れた寂しさと相まって、しばし感傷的な気分に襲われた。 …そんな感傷に浸りながら、人っ子1人居ないホームで、JFK行きのシャトルをぼんやり待っていたのだった。 久しぶりの生ガキ!あっと云う間に食べてしまいました。これで○十ドル…夢マボロシのようだ…。 …てな感じで、2週間のニューヨーク旅行は終わりました。 でも、主だった美術館、観光スポットはひととおり押さえられたので、8割方満足はしています。ま、初めてのニューヨークはこんなもんでしょう。 で、ニューヨークで一番多く行った場所というのが、日記を読んでいただければ分かるように、「BOOK-OFF」…かなり情けないというか、死んでしまえおマエは!というか…(苦笑)。“長旅ゆえのビョーキ”ということで、ご容赦下さい…。 そうそう、来る前までは、“NYは世界一おもしろい街”という思い込みがあったんですが、実際に来てみたら、「東京の方がおもしろくない?」という印象でした。一番顕著なのはショッピングに関して。5番街あたりの高級ブティック街はともかくとしても、東京の方が絶対、お店の数もバリエーションも多いと思うんですよ…って、わたしは東京在住じゃないから、そんなに詳しいわけではないけれども。少なくとも、「うーん、さすがはNY、東京はまだまだ遅れてるわ」と思うような、超イケてるお店とかはなかった気がします。 そういうわけで、ニューヨークは、期待していた以上の街では(でも期待値は満たしてくれましたよ)なかったのですが、離れてみて思い出すニューヨークというのは、何だかこう、ある種の切なさを伴う街、だったりします。 最後に、アメリカ旅行の総評(なのか?)を。 アメリカには歴史も文化もない(或いは浅い)、とはよく云われることだけれども、戦後日本はアメリカの影響を相当受けているワケで、わたしも、アメリカに来て、自分の中にあるアメリカ文化の影響というものを、改めて痛感したのでした。 …んー、何だかとりとめがなくなってきましたが、云いたかったのは、アメリカという成り上がり国にも文化ってものはあって、それは色んなところに影響を与えているんだなあ、ってことです。 アメリカ政府、そしてアメリカという国が持つ傲慢さには鼻持ちならないものがあるけれども(例:アメリカ人は他の先進国に比べて海外旅行をする割合が低い。自分の国が一番だと思っているので、格下である他の国々には興味がないというわけ)、多くのパッカーが云うように「行かなくてもいい国」「何も学ぶべきところのない国」だとは、少なくともわたしは思いませんでした。何かしら得るものはあると思います。メトロポリタン美術館の膨大かつ優れたコレクションが、金にあかせた結果だとは云ったって、すごい美術館であることには変わりないんだし。 まただらだらとくだらないタワゴトを繰り広げてしまいました(せっかく日記形式にしたのに…)。キリがなくなりそうなので、この辺で終わっておきます。 (2004年3月) |
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