旅先風信11「イギリス」


先風信 vol.11

 


 

**にわか留学日記C**

 

三連休のバンクホリデー(祝日)が過ぎ、いよいよ今週で学校は終了です。来週は予定通りロンドンに行きますが、その後は…。
イギリスにはもう未練なし、のはずだったのが、急にひとつ行きたかったところを思い出して、そこに行こうかどうか思案中です。と云うのも、これがまた、ルーさまの墓(※最初の日記を参照して下さい)並み、いやそれ以上にマニアックなところでして、『ロンリープラネット』にすら載っていないのです…困ったな。
それがどこなのかは、無事に行くことが出来たあかつきにご報告します(もったいぶってすみませんね)。

引っ越して行ったMさんは、休日は新しいホストファミリーに、近所に住んでいるクラスメイトの韓国人の女の子とともに近くのビーチに連れて行ってもらったそうで、なかなかよいスタートを切っている様子。いいホストファミリーに当たったねえ、とみんな口をそろえて云っています。

わたしの休日はどうだったかと云うと、珍しく2日間遠出していました。
と云っても日帰りできるところなので、そんなに遠出でもないのですが。

まずは隣街、ブリストルへ行って来ました。
家から徒歩30秒くらいのところにあるバス停からローカルバスに乗って40分くらい。バースから行ける最も近い観光都市です。
しかし今回は、ブリストル大聖堂や産業博物館、動物園などといった観光スポットはすっ飛ばして、とある現代アートの展覧会に行って来ました。

前々から京都や大阪の現代美術系ギャラリーをめぐるのが半ば趣味のようになっていたのですが、やはりわたしは現代アートが好きなんだわ、ということを改めて実感しました(ファンというほどではないけど)。
ゴッホやらモネやらレンブラントやらの名画ももちろん素晴らしいのですけど、名画ってどうしてもただただ見てありがたい、って感じになってしまって。純粋に作品を味わっているというよりは、しばしばその希少性に目がくらんでいるような気がするのです(完全に庶民の視点)。

SPIKE2.JPG - 43,281BYTES 「掃除機」という名の作品。本当に掃除しています(笑)。

でも現代アート、しかもまだまだ無名に近いアーティストの作品って、「え、このガラクタが作品なの?」みたいなデタラメさとか、形式のバラエティの豊富さとか、それこそ便器にラクガキしただけのものが一流のアートになるというような(デュシャンですね)無秩序さが何とも可笑しく、少なくともわたしは見ていて純粋に楽しめるのです。

この展覧会は、「スパイクアイランド」という、国立の芸術家村みたいなところが主催していたもので、作家さんのスタジオなんかも開放していてなかなか興味深かったです。
わたしは作品そのものよりも、しばしば、絵の具で汚れたシンクとか、ガラクタが積み上げられた棚とか、ペイントされた冷蔵庫とか、そんなもんばっかりに見入ってしまいました。何かもう、それだけでひとつの完成された世界という感じがするんですよ。芸大なんかはこんな感じなのでしょうか?わたしも生まれ変わったら芸大生になりたいなあ、なんてどーでもいいことを思ってしまいました。

SPIKE2.JPG - 43,281BYTES 例えばこういう光景ね。

で、今日はウェールズの首都、カーディフに行ってきたのですが…これはちょっと失敗だったかも。
リトアニアのサダおじさんに云われた「目的のないバックパッカーは駄目だよ」という言葉をひしと実感した1日でした(ま、そんなこと云ったら、もともとこの旅に確固たる目的なんかないんですけど…)。
何となく”ウェールズ”という響きに引かれたのと、バースから電車で1時間という距離の近さでカーディフを選んだという、たったそれだけではあまりにも動機が弱すぎたかも知れません。

カーディフにはこれと云って見るところはないです。郊外の方はともかく、シティセンターなんてまあどこも同じですしね。「Boots」があって、「MARKS AND SPENCER」があって…っていうね。
一応最大の目玉と思われるカーディフ城は見に行きました。ガイドの英語が結構聞きやすくて、勉強になった以外は…うーん、別に。いや、悪くはないんですけど、どうも今日は、感動する心が鈍っていたようで…。天気が悪かったせいもあるかな。

CARDIFFJOU.JPG - 24,858BYTES カーディフ城。ウェールズの国旗がはためく。

さらに悪いことに、この日は大きなフットボールの試合が行われていた模様で、フーリガンもどきのサッカーファンが騒ぎまくっていたため、旅心を削がれまくりでした。
みんなヘンな帽子かぶって旗持って、ラッパ吹きながら歩いてんの。このラッパがとにかく耳障りでねえ…暴走族のパラパラパラ〜ってやつを思い出してもらえればいいです。街のあっちこっちでサイレンみたいな音が鳴り響くのでそりゃもう騒がしいわけですよ。
こんなこと云ったら世界中のサッカーファンから袋叩きに合いそうだけど…サッカーファンってアホそうに見えるわ〜…。

ウェールズは田舎を回った方が、本当の良さが分かるような気がします。
郊外の方やウェールズ民俗博物館に行けば少しはそういうものを味わえたのかも知れないけれど、今日は動きも鈍く、そこまで足を伸ばす気になれませんでした。

しかし、そんな中にもひとつだけ収穫が。
ウェールズの有名なおみやげにその名も「ラブスプーン」なるものがありまして、これがねえ、もうとっても可愛くって、しばらくみやげ物屋から出られなくなってしまいました。
ウェールズでは、男性が愛する女性のために、結婚指輪ならぬラブスプーンを贈るというのが伝統的な習慣なのだそうです。この木彫りのスプーンには、ハート、鍵(鍵穴)、錨、ベル、ウェールズの象徴であるドラゴン…などなど、さまざまなモチーフが彫り込まれていて、そのひとつひとつに意味があるのです。例えばハートひとつなら「わたしの心はあなたのもの」、ハートふたつなら「お互いに同じ気持ちで相手のことを思っています」、ベルは「結婚」といった具合。

LOVESPOON.JPG - 47,192BYTES 壁一面に飾られたラブスプーン。

ひとつひとつ手作りなので、値段は、たかがスプーンなのに結構お高いです。
高いものだと30ポンド(約6000円)くらいします。普通のものでも10ポンド(2000円)前後。まあ指輪買うよりは全然安いですけどね。30ポンドもするものはさすがに装飾が凝っていて、
さわると絹みたいにつるつるしていてすごく気持ちがいいです。
さすがにスプーンに1000円以上は出せないのと、本来は恋人に買ってもらうべきものを自分で買うのが空しいのとで、一番安い5ポンドのものをひとつ購入しました。
鍵穴付きのダブルハート。安いだけあってあんましつやはありませんが、うーん、でも可愛いな(笑)。

どんなに憂鬱なときでも、可愛いものに出会うと、何にせよとりあえず生きててよかったかも、と思ったりします。

(2002年5月5日 バース)

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