中米の花園、中米のスイス、動物の楽園、最後の秘境…etc。
“何も見どころがない”と悪評高い中米エリアの中で、やたら人気の高いのが、コスタリカという国です。
コスタリカは、決して大きな国ではありません。 日本との比較で云うと、九州と四国を合わせたくらいの面積。 しかし、この小さな国土に比して、国立公園の数がむちゃくちゃ多いのです。試しに、ガイドブックをぱっと開いただけでも、マヌエル・アントニオ国立公園、コルコバード国立公園、モンテベルデ自然保護区、アレナル火山国立公園、カーニョ・ネグロ国立公園、トゥルトゥゲーロ国立…って、覚えきれねーっつの!
それぞれの特徴を把握するだけでもひと苦労です。例えば、マヌエル・アントニオは「森林浴と海水浴が同時に楽しめる人気の国立公園」、コルコバードは「手つかずの熱帯雨林が広がる最後の秘境」、モンテベルデは「幻の鳥ケツァールに会える森」といった具合。 ま、バラエティに富んでいるのはよいのですが、各国立公園の入場料がけっこうバカにならないお値段なので、ある程度絞って行かないと、とんでもない出費を強いられてしまいます。
さて、そんなコスタリカへの道は、これまでに何度もあったように、またもイバラの道となってしまいました。
前にも書いた通り、中米というところは、出入国時に、ナゾの税金を請求されることがよくあります。これが、本当にそういう制度なのか、役人個人のワイロなのかが、今イチ正確に判断できません。 できないなら、大人しく払うのが普通の人間ですが、わたしは金の亡者なので、例えそれでものごとが穏便に進むとしても、払わなくていい(かも知れない)金を払うことには、激しい拒否反応を起こしてしまうのです。
それで現に、先だってのニカラグア入国時も、ほとんど気違いじみたバトルの末に、結局金を払うという意味のない徒労をしたのは、記憶に新しいところです…。
事件は、そんなニカラグアからの出国時に起こりました。 入国時に9ドルも払わされているからには、出国税なんかあるわきゃないと思うじゃないですか。ところが、今度は2ドルだとよ!ナメてんのかてめーは! これは…絶対ワイロだ。ワイロに違えねえ。 ホンジュラスでの教訓(?)を生かし、オフィスの中に「2ドル」という張り紙がないかも一応確認…ないな。ワイロ決定。いつでもかかって来いや!(戦闘する気マンマン) 「払え」「いや払わん」「じゃあ通さん」「通せ」と押し問答を10分近くやったあと、ついにイミグレ官はわたしのパスポートにスタンプを押印しました。けっ、やっぱワイロじゃねーかバーロー。
この戦いで激しく消耗しつつも、勝ち誇ってコスタリカ国境まで、フラフラになりながら歩いていると、ガードマンのような男に呼び止められ、パスポートの提示を求められました。 「キミキミ、これじゃ国境は通せないよ」 「はあぁ?何だお前っ?!」 と、即座にキレそうになりつつも、彼が指差すパスポートのページを見てみると…。 何とっ、押されたハズの出国スタンプの上に、デカデカとボールペンでバッテンがつけられているではないか!
うおらああああっ、これはどういうことなんやっ!?!
おのれニカラグア、一度ならず二度までも…。 わたしは半泣き状態で(いや、泣いてた)、クソ重い荷物とともに再びニカ国境に戻らねばなりませんでした。 毎度毎度、何故国境でこのような憂き目を見なければならないのでしょう?…って、自分が悪いんだけどさ…。 少ない体力を振り絞って、先ほどのイミグレ官に、猛り狂ったライオンのように食ってかかりましたが、ここのイミグレ官も、入国時同様にかなり手強かった…。泣き脅しもブチ切れも、何の効果も発揮しません。大体イミグレ官というのは、必要以上に横柄な輩が多いのですが、戻って来ざるをえなかった時点で、この勝負はわたしに分がないことが明らかなので、このイミグレ官も完全に上から見下ろして、超エラそう。
結局は払わされることになり、様子を見ていた周りの皆さんが、気の毒がってジュースの差し入れまでして下さいました…。ありがとうございます(涙)。
それにしても…入国時にキャンセル印を押され、出国時にもバツされているわたしは、ニカラグアのブラックリストにしっかり載っているかも知れません。きゃははっ(ヤケクソ)。
コスタリカのイミグレは、意味不明にも長蛇の列でした。 先ほどのバトルで消耗しつくしたわたしは、もはや立っているだけでフラフラでしたが、無事入国。入国税なんてもんはなく、何のトラブルもないスムースな入国の流れは、さすが中米のスイスと云うべきでしょうか。
地図を見ると、首都サンホセに行く前に、アレナル火山国立公園に先に寄れそうだったので、サンホセ行きバスを途中下車する心積もりでした。んが、バスに乗って、やっと人心地がついたせいか安心して爆睡してしまい、気がついたときにはとっくに乗り換え地点を過ぎ、バスはそのまま首都サンホセまで行ってしまいました。。。
サンホセに着いたのはその日の夕方。 高い危険値を誇る中米の各首都の中では比較的マシとは云え、サンホセも決して安全とは云い切れません。特に、バスターミナルのあるコカコーラ地区(すごい名前)は、あまりよろしくない場所だそうで、旅人としては、頼むからそんなところにバスターミナルを作らないで下さいと切に思うばかりですが、今回は何ごともなく目的の安宿にたどり着きました。 宿は、まったく窓の無い、まさに独房のような部屋でシングル4ドル(バストイレ共同)。壁のマジックのラクガキが、また独房っぽい(涙)。電源もないので、ドラクエで気を紛らわすことも出来ません。しかし、他に安宿がないのか、パッカーの利用率はけっこう高いようです。
他の中米諸国に比べたらちょっとは安全だろう、ということで、夜(っても7時過ぎだけど)セントロの方に向かって散歩することにしました。 マナグアに比べたら、サンホセはずっと都会然とした街です。さすがは中米のスイスだね(笑)。中心部は歩いている人も多く、ちょっとお洒落っぽい店もあったりして、活気があります。
サンホセでは、観光地に関してはどうしても見たいというのはありませんでしたが、わたしにとって、ここだけは行っておかねばならないという場所がありました。 それは、教会でも博物館でも海山川でもなくて、「ZODIAC」という名の、アクセサリーパーツ屋。マニアックですまん。
サンクリで会った師匠Mさんやグラナダのアルテサノたちが御用達にしているお店ということで、人生で初めて身も心も手作ラーになっているわたしには、這ってでも訪れるべき聖地(?)なのです。
午前中というのに、お店は結構な人の入りです。コスタリカには手作ラーが多いのでしょうか?
さすがに皆が云うだけあって、商品のラインナップは文句のつけようがありません。とにかく種類が豊富!イロセラードの色数と云い、ビーズのテクスチャーの多彩さと云い…やばすぎる。物色していたら、平気で1時間くらい経ってしまいます。ま、値段はニカラグア物価からすると、少々お高く感じるけれども、日本で買ったらいくらすんの?!な値段だもんね。 この後も、ちょこちょこサンホセに戻ってくるたびに、欠かさず行きました。
手作ラー必見の名店「ZODIAC」。
あと、そこから歩いて行ける距離に、現代美術館があったので行ってみましたら、これがまたクリーンヒット。 レオンにて中米アートに開眼したわたしには、コスタリカの国のレベルなら、アートもイケてるのではないだろうかという期待があったのですが、その読みは間違っていませんでした。
コスタリカならではのものは特にないけれど、コンテンポラリーアートとしてのおもしろさは充分です。
毛が釘で出来ているブラシやガラスの破片が埋め込まれたヘチマタワシ(笑)など、使ったら血みどろになるバスグッズを、デパートのショーウィンドウ風に飾ってある作品がありまして、これが一番ツボに入りました。美へのアンチテーゼって感じが痛快で。
展示作品のひとつ。下においてあるのは、アルミの器にプディングを流し込み、その表面に写真プリントを施したもの。
さて、そのようなゆるいサンホセ観光(なのか?)はさておいて、いよいよコスタリカのメインイベント、国立公園めぐり、またの名を”なんちゃってエコツアー”です。
普段、見るからに不健康そうな面構えのわたしも、この国で観光するとなったら、さわやかなエコ乙女になるしかない。というわけで、選びに選んで、というか財布と相談して、3つの国立公園に行ってきました。
●アレナル火山国立公園●
ケツァールが見られる(かも知れない)モンテベルデ自然保護区と、どちらにしようかさんざん悩んだあげく、火山+温泉という黄金の(?)組み合わせに惹かれてこちらを選択しました。ガイドブックには、「マグマ流れる夜の火山を見ながら温泉でゆったり…」なんて書いてあります。マグマなんて、この旅で見たことないし、これはソソる〜! ということで、「あいのり」でダイスケとなっちゃんを結びつけたことで有名なケツァールを捨て、温泉の快楽に身をゆだねることに決定しました。
ちなみにケツァール、とある旅行者情報で、サンホセにあるシモン・ボリバール動物園で見られると聞いたので、それもあってモンテベルデを捨てたんですよね。で、ガラにもなく動物園に足を運んだのですが…
。 「ケツァール?いないよ」 「え?」 「あれはモンテベルデにしかいないんだよ」
って、やっぱしそうなのかよーーー!!!くっそー…。
サンホセから、アレナル火山のふもとの町フォルトゥーナ(ドラクエに出て来そうな名前ですね)までは、バスで4時間。 夕方くらいから出発する、トレッキング+温泉のミニコースが約30ドル。高えよ!さすがは自然で売っている国です。しかし、自力で行くのも大変そうなので大人しく申し込みました。 ツアー参加者に、やけにアメリカ、カナダ人が多いのは、われわれ日本人が、近場の中国とかタイとかに行くような感覚なのかしら。カナダ人はともかく、アメリカ人のパッカーって、国土と人口のわりにあまり見かけなかったけれど、中米に来てからは、ちょこちょこといて、何だか珍しいものを見るような気持ちになります(笑)。
しかし、毎度ながらジャングルトレックなんてものは、けっこうどこも一緒というか、あのアマゾンですら日本の自然公園と何が違うの?てなもので、そんな、あっと驚くようなスゴイものがゴロゴロ見られるわけではないんですねー。 むしろ、このツアーに参加していた日本人女子大生2人組の方が、スパイダーモンキーよりも興味深かった…。 何がってあんた、コスタリカのジャングルで、バッチリフルメイク!まつげがクリンクリンにカールされてる!
こ、これが一般の日本人女子…と、自分が日本人であることを忘れてちらちら観察してしまいました。いつでもどこでも美を追求する、それが日本人女子…だとしたら、わたしは何者っ!?
しかも道中でいきなり『ちびまる子ちゃん』の話題になり、「踊るポンポコリン」を合唱する様子に、さらに軽くのけぞりました。おいおい、一応ここはコスタリカっていう遠い異国なんだからさ、日本の遠足みたいな雰囲気を作られると何か萎えるよ〜。
で、肝心の火山なんですが…全然噴火してねーじゃねーか!(怒)
…いや、煙は出ているから噴火はしているのか。むしろ、煙をえんえんと吐き続けているせいで、山自体も見えなくなったりして。オレンジの溶岩流なんて、1滴も見えないっす。そりゃ、写真に載っているようなすごい噴火は期待していなかったけれど(それはそれで危なそうだし)、まるっきり沈黙を守らなくてもいいのにさ。これだったらすでにニカラグアで見たのと大して変わらないよ〜。 温泉は気持ちよかったです。これが大したことなかったら、ホンマにどういうことやねん!という話ですが…。10種類くらいの風呂があって、しかも泳げるくらい広くて、夜の闇の中で、外灯に照らされつつ湯につかって身体を伸ばしていると、何とも云えぬ開放感に満たされました。
アレナル火山。山頂にかかる白いものは、雲か煙か…。
温泉、というか温水プール。でも気持ちいい!
●マヌエル・アントニオ国立公園● あまたの国立公園の中でも、一番人気を争うのがここです。 ニカラグアでお世話になったJICA隊員N子さんも、「オススメよ〜」と例ののんびりした口調で推薦していました。
マヌエル・アントニオ観光の拠点は、ケポスという小さな町です。サンホセからはバスで3時間。
ここの宿は、これまでで最低クラスのさびれた木賃宿でした。ボロボロなのに、何故か廊下などがピンク色でペイントされていて、余計にボロさが引き立っていました。ま、味があるとも云えなくもないですが。それでも、電源と扇風機(カバーなし…怖え)があったのは救いでした。
電源があって他に娯楽がない…となると、もうドラクエしかないっしょ(笑)。ニカラグアでの悲惨なリセット事件により、もはや「5」はやる気がしないので、「6」に手を出して、またも目を血走らせてしまいました。でも、こういうギリギリのシチュエーションでやると燃えるんですよね〜…って何だか危ない発言だな…。
おっと、国立公園の話ですね。
マヌエル・アントニオは、ひとことで云うと“よく出来た国立公園”。つまり、山があって海があって動物がいて、ジャングルとビーチ両方が楽しめるのが魅力です。意外と少ないシチュエーションですよね、これって。ビーチにはイグアナがいたり、ジャングルにはカニがいたりする異種混合(でもない?)ぶりも楽しい。
ビーチは、さすがに金払って入るだけあって美しいです。いわゆるビーチらしいビーチ。国立公園のすぐ側にもビーチがあるんだけど、有料と無料の差が歴然(苦笑)。
♪誰もいない海〜(※閉園前なので)
その辺にフツーに歩いているイグアナくん。
●ポアス火山国立公園● ここは、まったくのノーマークだったのですが、ロンプラの写真でここの火山湖を見て「こ、これはありえねー!」と衝撃を受け、急遽訪問することに決定。 サンホセからバスで2時間という手ごろな距離も、躊躇させない要因でした。
ロンプラの写真はすごいけれど、これはきっとプロが撮ってさらにフォトショップで加工しているからだ…とわたしは勝手に思っていました。 ところが、いざ火山湖が目の前に現れると、うわああああああ…何だこれ?! 写真そのまんま、いやそれ以上じゃないか! プラスチックのように、あるいはゼリーのようにつるりとした水面。風でさざなみが立たなければ、あれが本当に水であるとはとても信じられません。 しかも!色が、色がありえなすぎる。青ともグリーンとも云えない、鮮やかすぎる寒色…そうだ。これは「メリット」(※シャンプー)の色じゃないか!何でこんな大自然の中にメリットが流し込まれているんだ??? 無機質なモノトーンの風景に、メリット色だけが、ありえないほど際立って、はっきり云って、異様とすら思えるくらい。自然ってやつは、何て光景を作り出してしまうんだ…。 入場パンフに「世界の宝石」なんて書いてあって、大げさやのーと鼻で笑っていたわたしを許して。すみません。これはマジ宝石っす。 わたしは、何かに取りつかれたように、何枚も何枚も同じ写真を撮りました。何枚撮っても、このすごさを収めきれない、そんな気がして。
コスタリカには、ポアスの他、イラス、バルバという2つの火山があり、それぞれ火山湖を持っています。絵葉書を見る限りでは、他の2つもかなり素敵な感じ。イラスはくっきりした黄緑色で、バルバは深く澄んだ群青色をしています。
…とここまで、かなりテンション高く書き綴ったのですが、後でショッキングな事実が判明。 こういう火山湖って、日本にあるんだってね!!!それも、もっとレベル高いやつが!!!よく考えたら、日本もコスタリカ以上に火山の国だから!!!ごめん、自分の国のこと、全然知らなかった…。 わたしが、その後会った旅行者に「ポアス火山湖がすごくてさー!」と興奮気味に語ると、「あれだったら、秋田県に五色湖っていう、さらに色とりどりなやつがあるよ♪」と返されたのです。あまりのショックで脳震盪をおこしそうになったわ…。 何しろこちとら、マチュピチュなみに興奮しまくっていたのですからね!旅人としてのオノレの偏差値低さに、愕然としてしまいました。
でも、感動はホンモノだもん(涙)。
ありえないコントラスト!どう見てもメリットの色だ(笑)。
抱きしめたくなるほど可愛いリスくん。だが、ものすごくすばしこい。
そんな感じで、自然大満喫(笑)な1週間でしたが、何度も云うように、わたしって別に、エコ好きでもアウトドア人間でも何でもないのよね〜。むしろどっちかって云うとおたくなのに、何でこんな頑張って自然公園を駆け巡っているんだか、自分で自分が不思議ちゃん。
そもそもわたしは、自然賛美とかエコロジーってものを、何となく気恥ずかしく思っちゃうヒネクレ者でして、何かこうやってエコツアーなんかに参加している自分自身が、どっか胡散臭く思えてしまうのですよ。 それと同じく、ボランティアを手放しで賛美するのも、ちょっと気が引けます。エコロジーもボランティアも、行為そのものとしては正しいし、いいコトだってのはよく分かるのですが、その正しさを自信満々に主張されると、逃げたくなるというか、黙ってやって下さいとか思っちゃう。ごめんね、イヤな人間で…。 エコエコ云う人に限って、都市生活者だったりするでしょ。そうは云ってもパソコンとエアコンの必要な人ばっかりでしょ(笑)。田舎の人は、誰もそんなこと声高に主張してないって。多分。 あと、エコとかボランティア関連商品って、妙に値段が高いじゃないですか。そこんとこに、また胡散臭さを感じたりもするのですよね。そりゃ、物理的な理由―リサイクルに金がかかるとか―は、あるんでしょうけど。
そんなわけで、例えばコスタリカでゴマンとあるエコツアーに参加して、やたらにビューティフォー!を連発して、頭からどっぷり自然を満喫している金持ちそうな欧米人などを見ると、何となくシラけた気分になったりしてねえ(笑)。
自然を楽しむというよりも、“自然というアトラクション”を楽しんでいると思えばまだしもしっくり来ます。だから、コスタリカも“自然テーマパークの国”って印象が強かったりして。だって、全部お金払ってるし、全てがお膳立てされているしね。決してお膳立てが悪いと云いたいワケではなくて、ただ何となく、そこに乗っかっている自分が単純に自然賛美なんて出来ないなあとか、ヘリクツじみたことを思ってしまうのです…って、何のこっちゃら。
明日はいよいよ中米最後の国、パナマです。
”何もない中米”のハズなのに、何だかんだでけっこう時間かかってるなあ…。
(2004年2月26日 サンホセ)
|