旅先風信10「イギリス」


先風信 vol.10

 


 

**にわか留学日記B**

 

この殴り書きのようなページも何とか10回目を迎えることになりました。
てことで、今回もイギリスからです。

ホームステイも3週目の週末を迎えました。来週にはまた宿無しの放浪者に逆戻りです。
今週から人の薦めもあって、上級のクラスに移りました。
せっかく前のクラスにもなじんできたところだったんですけどね。ま、わたしは時間もないので、人間関係より勉強優先、個人の欲望優先です。
相変わらず今のクラスでも中国人が幅をきかせまくりですが、もうあきらめました(笑)。どうせもう飛躍的な英語力の向上は望めない。

それ以外は特に変化もなく、穏やかと云うよりやや退屈な日々です。
街をうろつくのにもいいかげん飽きたはずなのですが、何となく、何かを求めてふらふらさまようわたし…。そんなに刺激が欲しいのか?
もう行くところなんて、大体決まっているのです。「bloomsbery」という素敵な雑貨屋さんと、
「WATERSTONES」という街で一番大きな本屋さんとその隣にあるカード屋さん「Mayther」、あとは大通りの洋服屋(「GAP」など)をひやかして、最後は図書館かスーパーへ(ちなみにスーパーの2階が図書館)。

BATHBOOK.JPG - 32,551BYTES ちょっとアカデミックな香りのする本屋「WATERSTONES」。多分、イギリス全土にあると思うけど…。

しかしそんな生活の中にも小さな変化は刻々と起こり、やがては終わっていくわけで。

明日は、2週間同じ屋根の下で同じ釜の飯を食ったホストメイトのMさんが、別のお家に引越します。
まあわたしも来週にはいなくなるし、学校でどうせ会えるのですけど、何となく寂しいもんです。
だって、わたしがまともに仲良くなったのって、今んとこ彼女だけだし…。
他の人とは英語でしかも薄い会話しかしたことないから、正直そこまで愛着もわかなくて(みんないい人だということはよく分かるのですが)。
今日も一緒にランチを食べていた日本人の女の子が最終日だったのだけど、みんなが住所を交換し合い、別れを惜しんでいる中、わたしときたら、感傷的な気分にもなれずただぼんやりつっ立っていました。
とか書くと失礼かも知れないけど、向こうも同じように思っていたはずなの。お互いの距離関係ってのはある程度分かるものです。それにわたしは博愛主義者ではない(平和主義者ではありますが)。

でもMさんとお別れするのは寂しい。たった2週間とは云え、もっとも長く時間を共有した人だから。
1日おきくらいにMさんの部屋でコーヒーをちびちび飲みながら何故かやたらと戦争論を語り合い、休日には一緒に「サリー・ラーン」に行き、もう1人のホストメイト、ラトヴィアから来たヴィクトルおじさんと3人でイギリス人の悪口を云い合い、ローカルのパブに飲みに行き、
『イギリス人はおかしい』というとても面白い本を教えてくれ、毎日サンドイッチを作って分けてくれ(理由は後述)、そして、とにかく色んなことを話しました。
言葉なんてなくても通じ合える、のかも知れないけれど、わたしには無理です。少なくともわたしは、本当に人と仲良くなるには多くの時間と多くの言葉が必要なんです。

BATHPUB.JPG - 41,698BYTES 家の近所のパブ。ヴィクトルの仲間(おじさん)たちとMさんとわたし(右端)。目光ってます;

何故Mさんが引越すのかと云うと、うちのホストマザーが、Mさんにけっこう理不尽なこと云ってたんですよね。
今まであんまりホスト先のことを書かなかったので、今回は祝Mさん引越し記念ということで(?)、いろいろ書いてみようと思います。

イギリスでのホームステイというのはわりとドライなものです、という話は以前に少し書きました。
本当に、カギをぽーんと渡されて、いつ出かけようがいちいち断わる必要もなく、プライベートはきっちり確保されます。その代わりアットホームさはなかなか望めません。

現在のステイ先には、60歳前後(多分)の夫婦が住んでいて、どうやら話を聞いた感じでは再婚のようです。それぞれ3人ずつ子供がいて、週末は代わる代わる遊びに来ている模様。
家の間取りは、半地下部分にキッチンと裏庭とベッドルームがあって、1階に玄関、リビング、客間、バスルーム、2階に夫婦の寝室、書斎、ベッドルームが1つ、最上階にもう1つベッドルームがあります。トイレは各階に付いています。
わたしの部屋は半地下のベッドルームです。けっこう広々としていて、テレビもあるし、それなりに快適ではあります。
ただ、これはどこの家庭もそうらしいですが、部屋が寒いのがちょっと難。セントラルヒーティングは11時ごろには切れるので、その後はみな服を着込んで寝ているとか。

で、Mさんが何を云われていたかというと、Mさんの部屋というのが最上階の一室で、真下が夫婦の寝室なのですが、夜中にトイレなどで部屋を歩くと、決まって次の日「You made noise last night!very noisy!(あんた昨日の晩めっちゃうるさかったわよ!)」とか云われていたんですよ。どんなに静かに歩いてもダメで、あげくの果ては、タンスを開ける音がうるさいとか、「椅子をギコギコやってるんじゃないの?」とか云われてましたっけ。普通、夜中に椅子をギコギコやる人間はあまりいないと思われるのですが。
どちらにしても、家が古いし(100年物)床が薄いんだからミシミシ音がするのは仕方ないですよね。逆にMさんの方はおっちゃんのイビキが聞こえてきたとか(笑)。それくらいは最初から分かっている筈なんですけどねえ。
他にも、洗濯物を出すと「何でこんなにいっぱいあるの?どうしても今日中にって云うんなら、近くにコインランドリーがあるわよ」みたいなことを云われていて(ちなみにわたしは元々手持ちの服が少ないので洗濯物も常に少なかった)、そりゃないだろーと思ったものです。

わたしの部屋は一番下なのでそんなにとやかくはないのですが、バスルームのことは注意されましたね。
わたしも礼儀知らずではないので、バスを使ったあとは髪の毛も流すし、間違っても床を水浸しにしたりはしないのですが、それでも、使った後は軽くでいいから掃除してだの、今日は床が濡れてたから気をつけてだの云われて、最初のときは本当にブルーになったわ。何だかわたしが汚い人みたいではないですか(苦笑)。
ヴィクトルも今日注意されたらしく、「わたしなんか3回くらい云われたよ」と云うと、「彼女は僕らからお金をもらってるんだからその金で床を防水にすればいいんだよ」なんて云っていましたが(笑)。

BATHROOM.JPG - 62,912BYTES 家のサンルーム。でもわれわれは入ったことない(これはこっそり進入&撮影)。

あとはねえ、ランチがかなり少ないの(涙)。
多分一緒にランチをしているみんなの中で、わたしとMさんのがthe smallestなの。
初日に教室でランチを食べていたとき、中国人の男の子に「ランチってそれだけなの?それはbad hostfamilyだよ。いくら払ってるの」なんて云われて、かなりブルーになった記憶がありますが、その後も相変わらず小さなサンドイッチ1つと小さなリンゴ1つしか与えられず(動物?)今に至っております。
こんなんじゃ足りないからもっと増やしてくれ、とは云えそうで云えないんですよね。この辺が典型的な日本人の悪いとこなんでしょうけど…でも、何となく云いにくい相手っていませんか?他の女の子たちにも「You can ask.」なんて云われたけれど、実際はそんな簡単なもんでもなくってねえ。
だって、Mさんが最初にうちに移ってきた日、「コーヒーをいただけませんか」と云ったら「ここはホテルじゃないのよ。そんなにお金ももらってないんだから」とか云われたらしいですから。どうもケチっぽい。
だからMさんは自分でパンとジャムを買って別にサンドイッチを作ってました。わたしはそのおすそ分けに毎日預かっていたので、そういう意味でもMさんと別れるのは悲しい…いや、これは冗談ですが。

ほかにも、部屋での飲み食いは一切禁止だの、洗面所にはトイレのティッシュ以外は置くなだの、いろいろ決まりがあるんですよ(この2つはわたしは守ってない。でも今んとこ何も云われてないけど)。バスも午前中しか使っちゃいけないのよ。午前中は学校だっつーの!だから毎日あわただしく朝風呂を浴びているのさ。
40歳のヴィクトルが「僕らは囚人じゃない」とか云うくらいだから、やっぱりちょっと過剰な気もするのですよね。
最初はMさんに「(またステイ先を替えたいだなんて)絶対ダメだ」と云っていたうちの学校も、問題を書類にして提出したらあっさりOKになった、という事実からも、何もわれわれがワガママなわけではないということは分かっていただけるのではないでしょうか。

とは云え、わたし自身はそれほど理不尽な目には遭わされてもおらず、それなりにフレンドリーに接してくれているので、あんまり悪口ばっかりも書けないんですけどね。
本心からフレンドリーなのかしら?ってちょっと疑いたくなるときもあったりはしますが(笑)。

結局、他人と住むのは難しいということなのでしょうか。
ただ、われわれはお金をきっちり払っているのだから、何もこっちが萎縮せねばならないことはないはずなんですよね。
ま、Mさんの次のホスト先はとてもいい人のようなので、一件落着ってとこですか。3度目の正直。

BATHGEININ.JPG - 47,266BYTES 休日になるといつもやっている大道芸人。やや下品(笑)。

今日はホストマザーが出かけていたので、夕食の後、キッチンでまただらだらと話し込みました。
最後の最後になって、彼女が結婚していたということを知って、かなり驚きました(あれ、知らなかったっけ?と逆に驚かれてしまった)。
わたしよりひと回り年上なので、結婚していてもおかしくはないのだけれど、けっこう長期で海外に出てきているからてっきり独身なのかと思っていたのです。
年齢とか結婚とかの柵を飛び越えてはるばるイギリスまでやって来る人もいるのですね。"子供"という制約がないとは云え、わたしのこんな放浪なんかよりずっと勇気のいることだと思いました。そして、海外に出てくる人は、内容や目的は違っても、本当にさまざまな事情や思いを抱いて来ているのだなーと、今更ながらしみじみ思い知らされました。

ともあれ、来週はヴィクトルもいなくなりますし、週末にはわたしも出て行きます。
すべての出会いが特別なわけではないけど、仲良くなった人との別れはやはり寂しいものです。
ふと、Kさんのところを出た日のことを思い出してしまいました。あのときは、彼女がうどんを作ってくれたんですよね…。あれはおふくろの味でした。胸にしみました。
これからもこういった別れはいくつもいくつもあることでしょう。でもそれが旅、そして人生なのさ。きっと。

(2002年5月3日 バース)

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