旅先風信えくすとら「オーストラリア」


先風信えくすとらvol.21

 


 

**ケアンズさわやか観光**


早朝の到着ロビーは、レモンスカッシュのようにさわやかな太陽光に満ちていました。
建物の中にいても伝わってくる夏の色。外に出れば、天気がよすぎて目が潰れそうになるまぶしさ。ここまでのことはなかったことに…なるはずないけれど、すべてをチャラにしてくれるくらい、能天気な南国の陽気。

巡回バスに乗って、まずは今日の宿「ガールズホステル」へ。
もう予約はコリゴリ…と痛感したものの、日食バブルを警戒して最初だけ予約したのです。案の定、予約サイトを見る限りはどこも満室で、街の中心部で空いていたのはここだけでした。
チェックインの時間には早すぎ、宿に荷物だけ置かせてもらってとりあえず外に出ました。ケアンズ中心部は緑がもりもりと生い茂っており、建物群のテーマパークっぽい小奇麗さも相まって、生活の臭いがしない“バカンスの街”といった印象です。
喉が恐ろしく渇いており、「Night Owl」というコンビニらしき店に入って飲み物を物色……って、けっこう高くないかあ?!
普通の炭酸飲料が4.15オーストラリアドル=約365円(1ドル=88円で計算)もするじゃないですか…。。オーストラリアの物価を、何となく日本よりうっすら安い感覚でイメージしていましたが、ざっと商品棚を見た感じ、概ね日本より高いような…?!

朝7時半。早すぎて店もほとんど空いていない今、いちばん効率のよさそうなプランは、始発のシーニック・レールウェイ(キュランダ観光鉄道)に乗ってキュランダに行くことでしょうか。
スカイレールという長距離ロープウェーに乗れればそれでOKなのですが、結局は帰りの足代やら何やら含めて104ドルもかかりました。うっわ、短期旅行だしカード払いできるからいいようなものの、いきなりの大量出血!
列車は指定席のため、日本人の社員旅行だかサークル旅行だかのグループに囲まれることになりました。
大勢vs1人(って、別に対決じゃないんだけど)だとどうしても落ち着かない気持ちになるのですが、1分ごとくらいに記念写真を撮る彼らにとって、明らかに、窓際にいるわたしは邪魔そうであり、微妙に見切れた感じでわたしが写っていて後からあーあとか思うんじゃなかろうか、といった被害妄想がムクムクと湧いて来て勝手にいたたまれなくなり、車内がガラガラなのを見越して「よかったらどうぞ」と窓際を譲って別の席に移動したのはいいけれど、次の駅で大量のオージーが乗ってきて、結局すごすごと元の席に戻るハメになるというカッコ悪さ! はあ、もう帰りたい…(苦笑)。こういうとき、フレンドリーな気持ちになって自らそのグループに飛び込み同化するくらいの気概がある人間だったら!と切に思う…。
結局、彼らのおしゃべりをBGMに、「わたしは空気、わたしは置物…」と言い聞かせながらの1時間半の列車旅となりました。まあそれはいいんですけど、
「ワイルドだぜえ」だの「○○かーらーのー」だの会話に多用される既製ギャグや、「わー『世界の車窓から』みたい〜!」などと100人中85人くらいが云いそうな感想を聞いていると、なんかモヤモヤしてくるわたしは心が狭いですか(苦笑)。

 このカーヴィーなラインがハイライトのひとつ。わざわざこの写真を撮るために停止してくれる親切さ(笑)。

 最大の見どころ・バロンの滝。ここは途中下車して記念撮影タイムが設けられています。

 終点キュランダ駅は、ボタニカルなデコレーションがとてつもなくいい感じの駅舎。

キュランダの町は、ケアンズ以上にバカンス色というかリゾート色の強い雰囲気で、メインストリートはほぼ土産屋とレストランで埋め尽くされています。
レストランのメニューを見ると、いずれも10ドルを下るものはありません。原宿でランチするのとほぼ変わらない、いや、むしろ飲み物なんかつけた日にゃ、それより高い! ってことは世界平均で見ても結構お高いってことになりますわよね…。で、とりあえず食べられそうなのは……
アイスクリーム??(4ドル弱)
大怪我(苦笑)を負ってきたばかりの身には、いちいちこたえる物価設定です。
スカイレール出発までは、まだ3時間近く余裕があります。とりあえず、お金がない旅における心のオアシス・スーパーマーケットに入ってみますが、そんなに長時間は居座れません。
パンフレット片手にうろうろしていると、「コアラガーデンズ」という看板が目に入りました。お、ここでコアラが見られるってこと?
何せ、初日はシドニーをぶらぶらしているつもりだったので、シドニー情報は手に余るほどあれど、ケアンズ観光についてはほとんど予習をしていませんでした。

入場料14ドルにまたも怯むことになりましたが、ここは旅人として、昼食を抜いてでもコアラを優先させるべきでしょう…。ある意味ストイックとも云える姿勢。誰か褒めて(泣)。
動物園というには小規模な敷地ですが、コアラ、カンガルー、ワラビー、ウォンバットとひと通りのスターは揃っています。しかし、コアラの扱いは別格。何しろ“コアラと一緒に記念撮影”はプラス16ドルかかるのです。
「“コアラとわたし”の写真はもう二度と撮れないかもしれない」
「万一、5年後くらいにそのチャンスがあったとしても、その頃わたしは○歳…確実に老けた写真になる」
…などと、真っ当なようなくだらないようなことで悩んだ挙句、日本円にして1,500円弱をケチりました。
おそらく、出発時の事件がなければ、1,500円なぞMILKじゃ小物も買えないような金額くらい、出してもよかったんだ! フィンランドでも“サンタクロースと一緒に記念撮影”=25ユーロを支払っているんだから! でも、今は極端に視野が狭くなっており、小銭の流出が精神の安定を揺るがします。西村賢太じゃないけど、「小銭を数える」ですよ。。。

 コアラの記念撮影をする人を撮影(涙)。金をもらって、次々と不特定多数に抱かれるコアラ…高級娼婦みたいに思えてくるぞ。

クールなのか、怠け者なのか分からない風貌。コアラ単体なら無料です♪

しかし、コアラは本当に動かないな(苦笑)。世界でいちばん睡眠時間の長い動物(1日22時間)だそうなのでしょうがないか…。ちなみに、2位はナマケモノで20時間。ナマケモノより怠け者なコアラたん! こんなに動かなくてもアイドルになれるって、すごい才能ですよね?
一方、オーストラリア・アイドル二大巨頭の一翼、カンガルーの鑑賞&撮影は無料です。
で、カンガルーたちも、コアラに負けず劣らず動かないのですが(みんなあ、元気??)、ここはぜひとも1枚、カンガルーとの記念写真を撮りたい…。
焼け付くような日差しの下、根気よくカンガルーを出待ちすること15分余り…やっとのことで、1匹の子どもカンガルーが柵から出てきました。すかさず近くにいた観光客に声をかけて写真をお願いし、とりあえず義務は果たしたぞ!ぜえぜえ…。

子どもカンガルーは、柵の外に出たままウロウロしていたので、一緒に遊んでもらうことにしました。
時折立ち止まっては、一心不乱に短い草を葉でちぎって食べるさまが、かわいいというか若干不気味というか…。
備え付けのエサはもう飽き飽きしているのか、ほとんど食べてくれないのですが、試しに草を食べやすいようにむしって手のひらに載せて差し出すと、た、食べてくれてるう!
うっ、やっぱかわいい…むちゃくちゃかわいい…。いやもう、コアラとかカンガルーとかさ、メディアでさんざん露出してるし、って思っていたけれど、実物、しかも至近距離で見るかわいさは、まさに百聞は一見に如かず! これがアイドルの底力なんですね…きょ、今日からあなたのファンになっていいですか?
余談ですが、カンガルーという名前、アボリジニ語で「わからない」って意味だそうです。どんなネーミングですか(苦笑)。

 はむはむはむはむ

 短い手がなんともマヌケでかわいらしいお。。。

スカイレールは、自然大国オーストラリアらしさ満点! もりもり茂った熱帯雨森の真上を滑っていくロープウェーは、絶妙にスリリングで、パノラミックな眺望は最高に開放的。なんかもう、健全そのものの観光って感じだわ。いちいち写真ポイントで降ろしてくれるし、降車時には、“勝手に記念写真”のサービスもばっちり付いてるよ(笑)。ほとんどテーマパークのアトラクション状態です。…あ、なんか皮肉っぽいですが、スカイレールは絶景を楽しめますのでぜひ乗りましょう。
途中まで、アメリカ人の年配女性(一人旅)と一緒の車両だったのですが、最初わたしはただ風貌だけでオーストラリアの人かと思ってそう云ったら、「ええっ?そういうふうに聞こえる?」と驚かれてしまった…。
わたしは英語を聞き取るのに必死なので、そこの違いにまで神経が届かないのです。よく日本人の旅人同士でも、「イギリス英語とアメリカ英語の違い」なんかが話題になるのですが、わたしはその差異を明確に言語化できなくてよくお茶を濁しております(苦笑)。分かるのはせいぜい、「ネイティブ/非ネイティブ/インド英語」くらいか…。

しかし、たった半日ですでに、けっこうな金を吐き出したような気がするなあ…。
出発までにあれほど、川の流れのように出て行ったのに、先進国オーストラリアの物価は予想以上に容赦ない。
順当に来ていればそんなに気になる物価でもなかったのかもしれないけれど、今のわたしにはすべてが重荷に感じられるんです(涙)。
というわけで、宿に戻って荷を解き、真っ先に向かったのはやっぱりスーパーマーケット、「woolworth」さ。あれ、woolworthってイギリスにあったよね? あの何でも屋みたいなチェーン店…と思ったら、2008年に経営破綻したらしいですね。ケンブリッジのシティセンターにあって、よく待ち合わせ場所にしていた懐かしのランドマークだったんですが…。こっちのwoolworthはオーストラリア全土にある大手スーパーチェーンで、全く別物のようです。
量り売りのりんごとカップスープを買って、宿のキッチンで食べていると、激しくデジャヴが…(涙)。りんごって、貧乏な旅人によく似合いますよね。栄養あるしね。

ベッドで荷物を整理していると、同室のファンキーな雰囲気(って何だい)の女の子が話しかけてきました。
ここに泊まっている女の子たちは、ほとんどが長期滞在、それもバックパッカーではなくてワーホリの人たちで、彼女もその一人。宿の名前「ガールズホステル」のとおり“男子禁制”、宿泊費も他に比べれば少し安いとあってか、昔からワーホリ女子たちの定番宿になっているらしいです。
やはり、こういう物価の高い国には、単にだらだら沈没する人はいないんですね(笑)。昔泊まったロンドンの安宿でも、働いたり学校に行ったりしている人が少なからずいたような。
確かに、そう云われてみると、ドミの部屋は全体的に生活臭さがあるもんなあ。隣ベッドの台湾人の女の子は、夕方からずっとパソコンでDVD観てるし…。

「色んな国を旅してるんですか?」 というよくある質問を受け、以前は長期でバックパッカーをしてまして、と話すと、「興味津々です!! わたしもワーホリが終わったら、南米とインドに行きたくて!」と、テンション高く身を乗り出してきました。そして、「いろいろ聞きたいんで、一緒に行く予定の友達(この宿で知り合ったらしい。長期滞在者同士ってそういう絆、深まるよね)も呼んで来ます!」と、日本人の女の子を部屋に連れて来ました。
あ、あの、別に旅のプロとかじゃないんですよわたし(汗)。ちょっとなんか、すごいハードル上げられているような危機感!
こういうときってだいたい、何かしら“すごい”話を求められているような気がして焦るんですよ。絶対にすべらない話があるものという前提が暗黙のうちに作られていて、期待感あふれるキラキラした目でこっちを見るんだもの…。や、自意識過剰って云われたらそれまでなんですがね。
「世界一周旅行」という体験からは常に、明らかに素晴らしい答えか、特殊な武勇伝を求められているように思えるのですが、だいたいわたしはがっかりされるパターンが多くて…。すみません、旅先で悟りも開かなかったし、友達100人できたわけでもないし、エベレストにも登頂してないし、辺境の村でレアな儀式に参加したこともないのよ!
毎日毎日、歩いて、観光して、移動して、時々人と話す、その繰り返し。わたしに語り得ることはそういうことしかない。あとはせいぜい、強盗だの病気だのの話くらいで、大して盛り上がるような話もないけれど、それでも旅してよかったし、あれはわたしなりに冒険だったし…ってな漠然とした感想しか云えないのさ。ただ、何だかんだで旅は極めて個人的な体験でありつつ、その個人的な部分が普遍的でもある気がしていて、だからこんなしょうもない旅行記を細々と続けているんだけど…。
もう、いちばんよかった国は?と訊かれて「イエメン」と答えるのにも飽きた(笑)。完全に定型文化していて、我ながら気恥ずかしいのです。街が砂糖菓子みたいで〜とか、中東の人は親切で〜とかさ、もうええわ!と、心の中のツッコミ担当がハリセン持って吠えてますよ…。まあそれを「チベット」や「ブラジル」に変えたところで、大した話はできないだろうなあ。
ここに来るまでのアホすぎる経緯を思うと、とても旅のことを語れる身分ではないうえに、どうも同室の彼女の方がよほど波乱に満ちた生涯を送っているようだったから、ぬるい旅の話なんか聞いてもしょうがなくね?と、卑屈は雪だるま式に増殖し、ついにいたたまれなくなって、
「それより、ケアンズのおすすめとか教えてくださいよ」と、さりげなく話題を変えるのでした…。

初日はあまりにも教科書通りの観光に励んでしまったので、2日目はケアンズ市内を徒歩でぶらぶらすることにしました。
まずは、駅前の巨大ショッピングセンター詣で。え、金がないのに何しに行くのかって? それとこれとは別の話! あくまでも、観光の一環として、或いは、オーストラリアの平均的な生活を学ぶ社会科見学としての行き先ですよ。決して万引きしに行くんじゃないんだから!
と云いつつ、目的のうちにちゃんとショッピングも入っております。どうしても行きたいお店があるのです。


 来ちゃった♪

その名は「Peter Alexsander」。パジャマとナイティのオーストラリアブランドで、わたしが旅前に調べられた範囲では、オーストラリアで最もかわいいお店のひとつ(と、勝手に判断)。
くまとか、フランスパンとか、アイスクリーム、ユニコーン、リボン、花柄、マトリョーシカ……などなど、乙女の好きなモチーフを惜しみなく投入した柄物のパジャマは、個人的には、「ジェラートピケ」よりもトキメキ度が高い! 色もことごとくパステル&ドリーミーで、いい夢が見られそう☆
本来なら、初日のシドニーで行くはずだった…けど、幸いにもケアンズ支店がありましてね。もともと、ここでパジャマやTシャツを買うつもりで、けっこう服を減らして来ていたのですよ。だから、い、1枚くらい買ってもいいよね?

商品だけでなく、店内も、店員さんもかわいいし、用もないのにまた空気だけ吸いに来てしまいそう…(苦笑)。

 短パン買ったら、何故かくまが付いて来た(笑)。

最初に歩いたときと同様、徒歩で回れる範囲のケアンズは、いかにもバカンスのための街といった印象です。開放的でおおらか。でも、ちょっと垢抜けない感じもあって、そこがまた気楽でいいのかもしれません。中心部は、旅行会社とおみやげ屋の嵐だし(笑)。あと、アイスクリーム屋も多いです。
CIty Placeという広場を中心に、碁盤の目状にストリートが伸びており、海までも歩いて5分少々。海岸沿いのメインストリート、エスプラネード沿いはこれまたツーリスト向けのレストランがずらりと軒を並べています。ああ、オープンテラスで海の幸、気持ちよさそう。
しかし、何だかんだで、無料wi-fiのつながる「オーキッド・プラザ」に何度も足を運ぶハメになっております。何故かって、ほら、宿のキャンセルやらフライトの変更やらで、ネットをチェックしなきゃいけないからね!
エアーズロックのYHAは、結局、全額の徴収。いったい、被害総額いくらになってるんだろ…。カンタスの航空券も宙に浮いたままだし、せっかくの旅先、しかもこんな夏休みのような空気の中にいるってのに、いちいち胸が痛いわ(苦笑)。来月、いちおうボーナスが出ることだけがせめてもの救いです…。

 街なかの教会。特に観光と関係のない、こういう教会にやって来ると何となくホッとします。

(2012年11月12日、ケアンズ)
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