旅先風信えくすとら「ロシア」


先風信えくすとらvol.10

 


 

**モスクワ彷徨**


朝も早よから……それこそ7時台はまだ空も暗く、ドミの誰も起きていない。
そんな暗闇の中、YHの無料インターネットに齧りつく日本人女。
それはわたくしです(涙)。
暗証番号の手続き、いちばん安い国際電話のかけ方、サンクトへの夜行列車とYHはカードが使えるのか、サンクトまではバスが安いのか…などせかせかと調べまくっていると、何しにロシアくんだりまで来たんだオマエはという気持ちでいっぱいになります…。

…夕飯も食べてないんだった。
もちろん、ケチったのです。1食くらい抜いても平気な体ではありますが、気分的な空腹はいかんともしがたい…。
アルバート通りに確か、VISAカードのシールが表に貼られたカフェがあったよな〜と思い出し、行ってみることにしました。
「KOFE XAYS」は国内チェーン店ぽい風情の、日本のドトールにレストラン要素を足したようなカフェです。
店に入る前に、VISAシールはしっかり確認したものの、万が一のことも考えて、現金で払っても傷の浅い値段(99ルーブル)のコーヒー&クレープセットを注文。薄いクレープではさすがに物足りないけれど、しょうがない…うう。
そして、いざ支払いの際、カードを恐る恐る提示しましたら……またしてもPINコードの壁が!!
PINコードを押す機械をニコニコと差し出されたのです。まさかここで、この機械が出てくるとはな…。どこまでもわたしに付きまとうPINコード問題!!
当然エラーが出るので押し直しますが、何回やってもエラーになるに決まってますがな。
冷や汗をかきながらその動作を繰り返していると、様子を見かねたのか、そのままサインでカードを切っていただけました(でも何で?)。

とこのようにしょうもないことで朝から心臓をすり減らしつつ、改めてモスクワ観光をスタート。
まずは、明日が定休日なので本日中に見逃すわけにはいかないレーニン廟から。うわっ、思いのほか長蛇の列……行列のできるお墓ですか。
さすがに国の英雄の墓ともなれば写真撮影禁止、手荷物持ち込み禁止と厳重管理下に置かれています。冷凍保存されたレーニンの遺体に対面できるのも、あんだけ並んでたったの10秒! てな感じです。止まって見ることすら許されません。
思ったより小さいんだなーというのが、レーニンを見た感想です。とてもきれいに保存されてはいますが、何となく現実感のない印象を残すのは、生きているように見えてもやはり遺体だからでしょうか。

お次は、昨夜赤の広場で見たときから惚れ込んでしまった、玉ねぎ屋根のワシリー大聖堂です。
あまりにも素敵なので、ちと高えなーと思いながらも入場料を払って中に入りましたが、正直、外観の美しさからするとやや拍子抜けの感が…。まあ、工事中というせいもあるかもしれません。
だって、外観があまりにも、どこから見ても美形、いや美景すぎるんですよ! この完璧な外観に匹敵するほど素晴らしい中身まで期待するのは、酷というものですよね。外も中も完璧な美人なんて、そうそういやしませんよね。
…えっ、いるんですか?じゃあいったい、わたしのような外も中も残念な人はいったい何なの?美しいものの鑑賞者とか引き立て役という存在意義もあるんでしょうか?

レーニン廟。

どメルヘンな外観のワシリー大聖堂。一歩間違えたら安いテーマパークになりそうですが…。

その後は、クレムリンに足を運ぶのが適切な観光ルートなのですが、これもまた、曜日の関係でクレムリンは明日へ後回し。
代わりにどこへ行くかというと、ヴェルニサージュです。
ここは、赤の広場と並んで、モスクワでぜひとも行っておかねばならない場所なのです。あ、個人的にね。
ひと言で説明すると“巨大みやげ市場”。そう、おみやげ(ガラクタともいう)が大好物のわたしが、ここを外すわけにはいきません。そして、市場がにぎわうのはやはり週末。アンティークマーケットも開かれる日曜日、つまり本日こそ行っておかねばならないのです。
最寄駅のパルチザーンスカヤ駅周辺は、なんというか共産主義的グレーの空気に満ち満ちておりますが、ヴェルニサージュは入り口からしていったいどこのおとぎの国ですかといった外観。これがまた、鉛色の空との不思議な一体感を醸し出していて、一種独特な光景です。

マーケット内は広大で、マトリョーシカを始めとするロシアの民芸品屋台がこれでもかと、延々と、無数に並べられています。
これが普通の財政状態であれば、狂喜乱舞してあれやこれや物色に物色を重ねるところですが……うん、そうね。
お金がないのよね今は(涙)。
まだ2日目だし、今日は下見ってことで…と慰めてみるものの、寂しいフトコロと豊富なグッズのギャップが苦しすぎて、便秘時のような苦々しい顔つきにならざるをえません(普段はあまり便秘にはなりませんが)。
おみやげは、ざっくり分類するとだいたいこんな内訳です。

●メーテルみたいなふわふわ毛皮帽子(ロシア帽)
●大小マトリョーシカ
●マトリョーシカ関連グッズ(マグネット、ピアス、エプロンなど)
●プラトーク(ロシアの大判スカーフ)
●旧ソ連グッズ(バッジなど)。
●絵画
●じゅうたん
●アンティーク
●各種マグネット

ううう、マトリョーシカじたいはどっちでもいいけど、マトリョモチーフはやっぱかわいいな…。何なんだこの、極彩色なくせに素朴なかわいさは!
しかし今日は、財政事情も鑑みて本命のプラトークのみを買って帰ることにしました。これを買うことを想定して、あえて日本からマフラーを持参しなかったため、さ、寒いのです…。
ここで、ロシアで初めての値段交渉を行うことになるのですが、あまりにも厚いロシア語の壁に阻まれ、適切な値段で買えたのかどうかよく分かりません。それでも、言葉が不自由でも値切りに入るところが、セコさ全開で笑えるというか、幼稚園児のくせに金の話をするいやなガキみたいというか…。
ああ、それにしてもなあ、これがスペイン語だったら、もうちょっとマシな会話もできただろうになあ。いちおう習いに行っていますし、以前の旅行で使っていたという素地もありますし、少なくともロシア語よりはぜんぜんまともに使えたはず…。
というかですね、スペイン語を習っているのに何故スペイン語圏の旅行にしなかったのか、という話ですよ。ロシア語とわたしの係わりなぞ、せいぜいNHK語学講座(テレビ)をBGM代わりに流していたくらいの薄いものでしかないのに、スペイン語圏なら実地訓練も兼ねられたのに…。

マトリョの嵐。

それにしてもどでかい敷地、仰々しい建物です。
まあ、これまでの印象、モスクワの建物はどれも仰々しいわけなんですけどね。高層ビルなんてものはほとんど無いのに、どこもかしこも威容を誇る壮大な建物ばかり。
そんなわけで、ヴェルニサージュも無駄なほど壮麗なのですが、端の方に行くと半ば廃墟と化していました。よくわからない、でかい民俗人形が草むらの上にぽつねんと佇んていたりして…。
なんか、建物が微妙にテーマパークっぽいと思ったら、ほんとに元テーマパークだったのかも? 遊園地系廃墟へのマニアックな憧れが、思わぬ異国の地で満たされた気分です。

右側のラブホっぽい城はいったい…?

寒くなって来たので、持参したリス耳付き帽子(MILKのもの)をかぶって歩いていると、ヒマそうにしている帽子屋軍団に声をかけられました。
「何だ、その面白い帽子は?」
そう云ってわたしのリス帽を取り上げたかと思うと、みんなで回しかぶりし始めました。
さすがに土産物屋は片言の英語を話すので、ようやくわたしにもロシア人とのふれあいタイム(爆)がやって来たかとほっこりした気持ちに…なったのはほんの一瞬でした。
「その帽子、オレにくれよ。代わりにこれ買え」とモコモコロシア帽を無理やりかぶせてきたり、わたしのデジカメでやたら写真を撮ったり、どうもただ弄られている、つーか嗤われているだけみたい…。
それでも、「これがコミュニケーションといふものだ」とエヘラエヘラ笑っていたのですが、いつの間にかセクハラモード突入してんじゃねーかよ! やたら顔をくっつけようとして来るわ、触ろうとしてくるわ…うおおやめろーーーーー!!!
…と、嫌がれば嫌がるほどエスカレートしていくのは、おっさんも小学生の男子も同じのようです。
なんか最後らへん、セッ●スて言葉が聞こえてきたのは、決して空耳ではないよな!? 異常にわたしにくっついて、携帯で写真を撮ってたけど、
イポーニヤの淫売バカ女とか題名つけてヘンなサイトに流さないだろーな!?
そういや昨夜も、この帽子をかぶって赤の広場を歩いていたら、若い兄ちゃんに声をかけられたのはいいけれど、大した会話もしないうちに手にキスしようとしてきてビックリしたっけ! なんだ、まさかこの国ではリス=女性器のシンボルなのか?!

悪ふざけが過ぎる帽子屋たち。真ん中の人はかわいそうな異邦人。

帽子屋にいじめられたおかげで疲労メーターが一気に振り切り、どうせ金もないのでヴェルニサージュを逃げるように退去しました。
本当ならカフェに入って温かいコーヒーでも飲みたいところですが、残念なフトコロ具合のためメトロ内のベンチでしばし休息を取りつつ、重い腰を上げてレニングラード駅へ向かいました。サンクトペテルブルグ行き列車のチケットを調べるためです。ああせわしない…。
カッサ(支払い窓口)に
「VISA」のマークが燦然と輝いているのを見た瞬間、疲れも吹っ飛んで、わたしの脳内には勝利の鐘が響き渡りました。VISAっつうか、VIVA! この移動をカードで乗り切れたら、金銭的にかなり助かる!ええい、もう今チケット買ったる!
意気揚々とカッサに乗り込みましたが、あまりにひどい己のロシア語によって早くも暗礁に乗り上げます。カッサの若いねえちゃんの呆れきった顔を前に、アーウーアーとオランウータンのように唸るばかり…。くそー言葉が不自由すぎる!!! こんな最低限のトラベル会話も出来ないなんて、よくロシアまで来たなお前はっ。
それでも、後ろに並んでいた親切なロシア人カップルが助け舟を出してくれて、いよいよカードを切るところまで漕ぎ着けました。
「はい、じゃあPINコードをどうぞ」
それだけは、PINコードだけはいかんよおねいさんてば!!!
せっかく助けてくれたカップルの手前、ダメ元で押してみますがあっさりとエラー表示。カップルのお兄さんも、ほら、PINコードを押すだけだよとやさしく微笑んでくれるのですが、すみません、PINコードだけは押したくても押せないの!
何だか申しわけなくなってきて、お兄さんに英語でことの次第を説明しましたら、「ロシア人もよく番号を忘れるんだよ」と慰めていただきました…。しかし微妙にそういうことではなかったりする(苦笑)。
後ろもつかえているので、わたしは諦めていったんその場を離れました。
(終わったな……)
わたしはうなだれ切って、行くあてもないのでとりあえず宿に戻ることにしました。ていうか、トイレに行くのをずっと我慢していたのさ…。寝床があるうちは、休もうぜ。

宿に戻ってしばらくベッドで休息を取り、改めて、冷静に現実を見ることにしました。
今後、確実にかかるお金を計算したら、何とかサンクトまではギリギリ行けそうではあります。まあ、一切ムダ使いをしないという前提ですが…。
バスで移動するのはどうだろう? 基本、列車よりバスが安いというセオリーは、だいたい万国共通だったではないか。
またしても宿のネットに張りついてバス会社のHPを調べてみますと…『歩き方』に載っているバス会社が2つとも、ロシア語しか対応してましぇん!(急におぼっちゃまくん)
ただ、国際バスならユーロラインがかなり安くは知っていることがわかり、わらをもすがる思いで、モスクワで今んとこいちばん英語の通じる宿のフロントの兄さんに、バスのことを聞いてみました。
「うーん…バスはやめた方がいいよ。大変だよ。列車にしとき」
「でも、バスの方が圧倒的に安いと思うんですよ」
「列車もそんなに高くないよ。サンクトまでなら800ルーブルくらいじゃないかな」
「ウソ!? 800ですって!? 3000ルーブルじゃなく!?」
そう問いましたら、兄さんはんなアホなというような表情で、列車にもいろんな種類と席があり、ラグジュアリーな寝台ならともかくそんな値段にはならないよ、と説明してくれました。

マジですか??? 800だったらアナタ、予算の4分の1じゃないですか。
『歩き方』には、1等寝台と2等寝台の案内しか載っていなかったので、てっきりそれっきゃないと思うじゃないですか。
しかしどうやら、その下の3等席=開放寝台、ロシア語で「プラッツカールトヌィ」(発音しづれえ!)というものが存在しており、ロシアの庶民たちはそれに乗っているようです。
何、それってまたビザと同様、外国人は個人旅行できないだの、高いホテルと交通手段しか取れないだのといった流れの一環ですかね?
安い切符をこの手に入れるまでは安心できませんが、この情報によってわたしの心はいくぶん軽くなり、アルバート通りを散歩したい気分になりました。
夜のアルバート通りには人があふれていて、ミュージシャンや似顔絵描きがいて、カフェは満員で(特にマクドナルドの盛況ぶりがすごい)、何だかようやく、旅を楽しむ余裕のようなものが湧いてきました。
長いアルバート通りの終点には大きなスーパーがあり、なあんだスーパーもちゃんとあるんじゃないの、宿にはキッチンもあるし当面はスーパーで糊口を凌げばいいじゃないの、と安心材料を増やして帰ることができました。ま、そのわりに、ヨーグルトひとつ買うのに15分くらい悩んだけどね…。

夜のアルバート通り(しかし、この写真だと人があふれているようには見えないな。。。)

翌朝イチでやったこと。それはもちろん、今度こそサンクト行きの列車チケットを手に入れることです。
日本では考えられないほどきっちり早起きして、銀行が開くまでの間は、パヴァルスカヤ通り、ボリシャヤ・ニキーツカ通りなど未知の道(駄洒落)を散策する余裕っぷり。会社員生活でもぜひ取り入れたい習慣です(絶対ムリだけど)。
10時のオープンと同時に銀行に入って、手持ちの現金をすべてルーブルに換えました。もう、ちんまり日本円を残しておくような余裕はありません。
その足で脇目もふらずレニングラード駅へ向かい、昨日のねえちゃんとは違う、ド迫力顔の美女にイライラされながらも、何とか切符を購入することができました。
いちおう必要単語だけは暗記してきたつもりでしたが、そんな付け焼刃ではどうにもならず、ってか何よりも基本的に発音が難しすぎるんだよ! だいたいさ、「今日」というわりと使用頻度の高い単語が「シヴォードゥニャ」ってどういうこと!? ま、最終的には筆談で何とかなりましたが…って、ここは中国かっ。
3等寝台のチケットは、1150ルーブル。800ではなかったけれど、それでも予定の1/3の金額です。ということは、単純に考えて1往復しかできなかったところが、3往復もできるわけです。目の前の暗雲が、さーっと開けたのは云うまでもありません。旅の命拾いとはこのことです。

すっかり安心したその足で、意気揚々とクレムリンへ出かけました。
クレムリンとは城塞の意ですが、ひと言で云うと、ここにロシアの政治と文化と宗教がごっそりひとつにまとまっている場所ってとこでしょうか。大統領府がここに置かれていることもあってか、クレムリンという響きにはなにか、圧倒されるものを感じます。、
でも、観光のメインは教会めぐりと、なかなか地味です。大統領官邸ツアーなどはないようです。
ロシア正教会群の玉ねぎドームの外観は、ワシリー聖堂のそれに比べると物足りなく見えるけれど、内部のイコノスタシス(イコンを配した衝立)の素晴らしさは圧巻。イコノスタシスを見ていると、イコンが内包する深い歴史に呑み込まれて、雑念が遠くなっていきます。
イコンに描かれる世界は色濃く中世的で、わたしはその世界観に、不思議なノスタルジーを覚えるのです。おそらくその理由は、ドラクエの影響というとても卑近なものなのですが、このイコンの中の世界に入ってみたい、トリップしてみたいという欲望が静かにこみ上げてくるのです。石と丘と森でできた中世ヨーロッパの風景は、遠い憧れの原風景なのでしょうか。

武道館どころではない大きな金の玉ねぎ。

半ば義務でもあったクレムリン観光を終えたあとは、金のかかる観光を意識的に避けて、あてもなく歩き周ります。
ただ、適当な町歩きをするにはデカすぎるんだよねモスクワ…。東京23区を徒歩で観光するようなもんでしょ。それに結局、気軽に入れる場所って商業施設しかないしね。金がねえっつの!
それでも、ロシアファッションなどを学び取ろうという名目で(?)ウインドウショッピングに励むわけですが、ぶっちゃけ、モスクワのファッションは5年は遅れているのではないかという印象です。
若者向けショッピングセンター「アホートヌイ・リャト」や超高級百貨店「ツム」にも行ってみましたが、そんなに面白くて斬新なものは置いていません。マトリョエプロンの方がよっぽど斬新なかわいさ(笑)。
探せばきっと、若いデザイナーがひっそりやっているお店なんかもあるのだろうけどね…。モスクワ3日目でロシア語レベルがマイナス100くらいのわたしの能力では見つけられるはずもなく(苦笑)。
んんー、でもモスクワが遅れているのではなくて、日本のファッションがマニアックすぎるだけなのかも。あれはもはや、変態の領域なのではないだろうか…。
モスクワも含め、欧米はやっぱり素材で勝負するのが王道って感じだもんなぁ。服はあくまでも脇役で。日本人は服の方が主役になりがちな気がします。コスプレなんてまさにその極端な表れではないでしょうか。

ツム百貨店。無料のトイレがあって感涙…。

何かとあちこち歩き回ってはいますが、列車の出発まではまだかなり間があります。
ああ、宿無しの日はキツイなあ! 荷物は宿に預かってもらってはいるものの、基本的に休める場所がないわけだからね。
足がもう痛すぎんねん! 寒さ対策で分厚いアンゴラ山羊の靴下なんか履いているもんだから、それでヒールのブーツだから、足のむくみが半端ないっての!
疲れ果てたので、アルバート通りの「MyMy」(ムームーと読みます)というセルフ食堂で夕食を取りつつ、出発ギリギリの時間まで長居することに決めました。
ロシアに来て、初めてのまともな、フルの食事! 飲み物も付けちゃうよ! ってなわけで一食832円もしましたが(って、驚くような金額かよ)、まあいいや。
うわっボルシチ美味しい。ビーツのほろ甘さと濃厚なクリームの相性がたまりませんね。ビーツのサラダ、チキンのチーズ焼きもなかなか。でもクランベリージュースはなんだか、ジュースというよりゼリーだなこりゃ。ドロドロで喉の渇きがまったく癒えない…。

束の間の安住の場所で、書き物をしながらぼんやりとこの3日のことを振り返ります。
今のところ、お金も言葉も、ギリギリのところで何とか旅している感じだな…。
お金がないのもミジメですけど、言葉ができないこともその次くらいにミジメだわ。普通はどちらかが、旅を支えてくれるものなんですけどねえ。どっちもないとなると、いつにも増して足取りがおぼつかない。
にしても、言葉のハードルの高さは予想以上で、苦痛すら覚えるレベルです(苦笑)。初めてアルゼンチンのブエノスアイレスに降り立ったときも、宿屋のねえさんがひとつも英語を解さないことに慄いたものでしたが、ロシアもなかなか…まあ、南米よりはちょっと、ほんの1cmくらいは通じる? という体感です。
でも、スペイン語よりも発音が難しい上、キリル文字が読みこなせない! 基本はアルファベット、多少の変形(オリジナル)が加わっているだけと甘く見ていましたが…そんなもんじゃなかったね。例えば「И」が「I」、「Д」が「D」といった独特のキリル文字もつらいのですけど(Дなんて、自動的に
(*´Д`)の一部かと思ってしまうわ)、もっと困るのは「H」が「N」、「P」が「R」など、どっちやねん!? な文字。これがさらなる混乱を招くのです。
ただ、なんとかスキイとかスカヤとかって語尾には、奇妙な懐かしさを覚えます。革命詩人のマヤコフスキイという名前が特に好き。過去に、ロシア文学に傾倒した記憶もないのに不思議です。

(2010年11月15日 モスクワ) 
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